第095話 極振りヒーラー、ライバルギルド
ヒマワリ、ティア、バルトの三名が再び拠点を出発する。
次の標的は、まだ偵察できていないエリアの小規模ギルドだ。
ティアのマップを確認しながら、森の奥へ向かっていく。
「次は東の小規模ギルドを狙います。距離は約三キロメートルです」
「了解。今度も遠距離から狙撃できるといいね」
ヒマワリが《加速》を発動し、先行する。三人は静かに森の中を進んでいった。
ティアのマップと索敵を頼りに、まだ偵察の入っていないエリアを優先的に潰していく。
小規模ギルドの拠点を見つける。
洞窟型、廃屋型、簡易柵型――構造を一目で確認。
「狙撃、通ります」
その一言で十分だった。
ティアの矢が放たれ、奥に置かれたクリスタルを射抜く。
三人は足を止めない。
次の拠点へ。
また一つ。
さらに一つ。
発見すれば破壊。
接敵は避け、戦闘は最小限。
確実に、静かに、ポイントだけを奪っていく。
「順調だね」
ヒマワリが小さく笑う。
その頃、【エレメント】の拠点では防衛チームが警戒を続けていた。
拠点は、開けた平地に築かれた石造りの砦。
四方が開いているぶん奇襲を受けやすいが、大規模ギルドである【エレメント】にとっては、人数で補える設計でもある。
砦の中央。
淡く光るクリスタルを背に、幹部であるアクアとアウスが並び立っていた。
アクアは水属性魔法の使い手で、防衛向きのスキルを多数保有している。
アウスは土属性魔法の使い手で、同じく防衛に特化したスキル構成だ。
「――敵襲です!」
見張りの声が、砦に響き渡った。
別の大規模ギルドの部隊が、一直線に迫ってくる。
前衛十名、後衛の魔法使い十名。正面からの力押しだ。
「来ましたね。アウスさん、準備はいいですか?」
「はい。ここは私に任せてください」
アウスが両手を地面にかざす。
「《タイダルウェーブ》」
巨大な津波が発生し、前方広範囲を襲う。
水の壁が敵の前衛を飲み込み、大ダメージを与えた。
「うわっ――!」
半数以上がHPを大きく削られ、体勢を崩して後退する。
間髪入れず、アウスが魔法を重ねた。
「《アースウォール》」
土の壁が拠点の前方に生成され、敵の進路を妨害する。
壁は高さ五メートル、幅二十メートルの巨大なもので、簡単には突破できない。
「壁を壊せ!」
敵のリーダーが叫ぶ。
魔法使いたちが一斉に攻撃魔法を放つ。
炎と雷の魔法が土の壁に着弾するが、アウスの魔法で生成された壁は頑丈で、簡単には崩れない。
「動きを止めます。《アクアリング》」
範囲内の敵を水の渦で拘束する。
敵の前衛五名が足元から水の渦に巻き込まれ、動けなくなった。
「くっ……動けない!」
アウスの魔法が発動する。
「《アースクエイク》」
地震が発生し、広範囲にダメージと転倒効果を与える。
地面が激しく揺れ、拘束されていた敵が次々と倒れていく。
アクアが《ウォーターヴェール》を発動する。
水の膜を張り、味方を守る。
敵の魔法使いが反撃を試みるが、水の膜が魔法攻撃を減衰させる。
アウスが冷静に告げる。
「《アースバインド》」
対象の足元を土で固め、移動不可にする。
敵の前衛三名が完全に動けなくなった。
「――終わらせましょう」
アクアの掌から、超高圧の水流が放たれた。
「《ハイドロカノン》」
超高圧水流が動けない敵を貫き、大ダメージを与える。
次々と敵のHPがゼロになり、光の粒子となって消えていく。
追撃のように、アウスが空へ腕を振り上げる。
「《アースレイン》」
岩石の雨が降り注ぎ、残った敵をまとめて叩き潰した。
残った敵も、アクアとアウスの連携攻撃によって次々と撃破されていく。
最後の一人が光の粒子となって消えた瞬間、戦闘が終了した。
「……防御は維持しましょう」
アクアが周囲を見渡し、静かに言う。
「次が来ても、同じように迎え撃てばいい」
アウスは短く頷いた。
堅牢な砦と、完璧な連携。
【エレメント】の防衛線は、揺らぐ気配すら見せていなかった。
一方、【流星の覇者】の拠点では、アルベルトとフェリシアの二名が防衛を担当していた。
拠点は見晴らしのいい丘の上。
遮るもののない視界は、敵の接近を早期に捉えるのに最適だ。
「敵が来ます。二つのギルドです」
見張りの報告を聞き、フェリシアが遠くを見渡す。
合計三十名。数だけを見れば、二人で受け止めるには過剰とも言える戦力だった。
「問題ない。前は俺が引き受ける」
アルベルトが大剣を構え、地面を踏みしめる。
STR極振りの巨漢。その背中には、揺るぎない自信があった。
「大丈夫、支援は私に任せて」
フェリシアがアルベルトに《剛力》《迅速》《魔力増幅》を付与する。
アルベルトのステータスが大幅に上昇した。
敵の前衛が一斉に突撃してくる。
「来い」
アルベルトが《グランドスラッシュ》を放つ。
大剣を横薙ぎに振り抜くと、衝撃波が前方を薙ぎ払った。
五名の前衛が同時に吹き飛び、地面を転がる。
「何だこの火力!?」
敵が動揺する間も与えない。
「《ライトニングチェイン》」
フェリシアの雷が走る。
一人に落ちた稲妻が、次々と跳ね渡り、後衛の魔法使いたちを貫いた。
反撃として、炎と氷の魔法が飛来する。
「防ぎます」
フェリシアが《リフレクトシールド》を展開し、前方に防御バリアを張る。
光の障壁に触れた魔法は、そのまま跳ね返り――敵陣で炸裂した。
「反射だと!?」
混乱が広がる中、アルベルトが踏み込む。
「《アースブレイク》」
地面を大剣で叩きつけ、周囲の敵に範囲ダメージとスタン効果を与える。
衝撃波が広がり、敵の前衛がスタン状態になった。
そこへ、フェリシアが《フロストバースト》を発動する。
水と氷の混合範囲攻撃が敵を襲い、凍結効果を付与する。
敵の前衛三名が氷に包まれ、動けなくなった。
「止めだ!」
アルベルトが跳ぶ。
「《メテオスラッシュ》!」
落下と同時に衝撃が叩き込まれ、凍結した敵ごと地面が砕け散った。
敵の数が減っていく。
フェリシアが《トルネードランス》で後衛を吹き飛ばし、
アルベルトが《ヘヴィスマッシュ》で前衛を叩き潰す。
さらに《フレア》が炸裂し、小さな爆炎が戦場を覆った。
「こいつら、化け物か!?」
敵のリーダーが叫ぶが、すでに退路は断たれていた。
再び放たれた《グランドスラッシュ》が前衛を一掃し、《ライトニングチェイン》が後衛を撃ち抜く。
最後の一人が光の粒子となって消えた。三十名全員をたった二人で全滅させたのだ。
「……回復を入れますね。」
フェリシアが冷静に言う。
「仲間を守る。それが俺の役目だ」
アルベルトは大剣を肩に担ぎ、視線を遠くへ向けた。
「レヴィンたちが戻るまで、この拠点は落とさせない」
二人は再び、静かな警戒態勢へと戻っていった。
次は4/12 21時投稿予定
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