表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/109

第084話 極振りヒーラー、奇跡の一撃

ステラとルナが二重魔法を習得していたその頃。


第三階層――風の空中庭園、その外縁に近いエリア。

宙に浮かぶ回廊を、ヒマワリとソルが並んで歩いていた。


「LUK極振りだとさ、装備でどのくらいステータス補えてる?」


何気ない調子で、ヒマワリが尋ねる。


「VITは、ほぼゼロですね。AGIも……装備で少し上がってる程度です」

「なるほど。じゃあ、直撃したら一撃で終わる可能性もあるね」


ヒマワリは前を向いたまま、淡々と言った。


「今日は“当たらない”ことを最優先にしよ。攻撃より、生き残る動き」

「回避、ですか……。俺、足遅いんですよね」


少し気後れした声で、ソルが答える。


「AGIが低くても関係ないよ」


ヒマワリは振り返り、軽く笑った。


「大事なのは速さじゃなくて、動く“タイミング”。敵の動きを読んで、先に動く。それだけで、体感は全然変わる」


そう言いながら、ヒマワリは前方に現れた《ウィンドホーク》の群れへと歩み出た。


「見てて」


次の瞬間、鷹が甲高い鳴き声を上げ、急降下してくる。

だがヒマワリは、走ることも構えることもせず、歩調を変えない。


攻撃が届く直前――

ほんの半歩、横にずれた。


鋭い爪が、空を切る。


「来る直前に動く。大きく避けなくていい。最小限で十分」


何事もなかったかのように、ヒマワリは続けた。


「……やってみます」


ソルが短剣を構え、別の鷹へと向き直る。


甲高い鳴き声とともに、鷹が急降下してきた。

ソルは反射的に、大きく横へ跳ぶ。


「もう少し小さく動いてみよっか。大きく避けると、次の動きが遅れちゃう」


「だって……怖くて」


「最初はみんなそうだよ。慣れれば自然にできる。もう一回」


次の鷹が迫る。

今度は、ソルが小さく前へ踏み込んだ。


鋭い爪が肩を掠めるが、致命傷にはならない。


「惜しい! でも、さっきよりずっといい」


「ちょっとだけ掠りましたけど……!」


「それで十分。じゃ、今度は攻撃も混ぜてみよう」


ソルが短剣を振るう。


「《ラッキーストライク》!」


光を帯びた刃が鷹を貫く。


【クリティカル!】


鷹は抵抗する間もなく、光の粒となって消えた。


「よっしゃ、またクリティカル!」


「LUK極振り……クリ率えぐいね」


ヒマワリは思わず苦笑する。


「これが俺の武器です!」


以降は連携も安定していった。

ヒマワリが前に出て敵を引きつけ、ソルが安全圏から一撃を叩き込む。


「《ラッキーセブン》!」


七連の斬撃。そのうち三つがクリティカルとなり、モンスターは霧散した。


「三回クリティカル出た!」


「運の乱数が、全部味方してる感じだね」


「俺の運を信じろ、です!」


「……まあ、強いから文句はないか」


経験値が積み重なり、二人はさらに庭園の奥へと進んでいった。


その時だった。

草むらの影から、きらりと金色の光がこぼれた。


「あれ……?」


ヒマワリが足を止める。


次の瞬間、草むらから転がるように現れたのは――

全身が黄金色に輝く、小さなスライムだった。


《ゴールデンスライム》


「あ、レアだ。倒したい」


即座にヒマワリが前に出る。


「え、なにあれ!?」

「めったに出ないやつ。倒せたら、かなり美味しいよ」


その声を聞いた瞬間、ゴールデンスライムがぴょんっと跳ねた。


そして――逃げた。


「ちょ、待って!」


二人が追いかける。

弾むような動きで、ゴールデンスライムはすり抜けていく。


「速い! スライムなのに!」

「逃げ足だけは一流なんだよ。諦めないで!」


庭園の整った道を外れ、細い獣道へ。

木々の間を抜けた先で、突然視界が開けた。


「……あれ?」


二人は同時に足を止める。


そこにあったのは、苔に覆われた古い神殿。

石造りの壁には古代文字が刻まれ、地図には表示されていない。


未踏破エリア――。


ゴールデンスライムは迷うことなく、神殿の中へと飛び込んでいった。


「逃げ込んだね……」

「追います?」


ソルが短く尋ねる。


ヒマワリは一瞬だけ考え、笑う。


「せっかくだし。こういうの、嫌いじゃないでしょ?」


二人は顔を見合わせ、神殿の中へと足を踏み入れた。




神殿の内部は薄暗かった。

松明の代わりに、壁に埋め込まれた宝石が淡く光を放っている。床に刻まれた古代紋様が、足音を静かに反響させた。


ゴールデンスライムの痕跡を追い、奥へ進む。

やがて二人は、中央の祭壇へと辿り着いた。


祭壇の上に置かれていたのは――金色のコインが一枚。

見慣れない紋様が刻まれ、不思議な輝きを放っている。


そのすぐそばで、ゴールデンスライムがぴょんぴょんと跳ねていた。


「……これ、何だろ」


ソルが興味を隠せず、一歩近づく。


「ソル、待って――」


ヒマワリが制止するより早く、ソルの指がコインに触れた。


瞬間――

眩い光が弾け、神殿全体が低く唸るように震えた。壁の紋様が一斉に輝き出す。


「なっ……!?」


光が収束し、祭壇の前に影が立ち上がる。


金色の鎧を纏った騎士。

両手に二本の剣を携え、その存在だけで空気が張り詰めた。


《幸運の守護者フォーチュンナイト》


「幸運のコインを手にする資格を――示せ」


重く、静かな声が神殿に響く。


「……また守護者系か」


ヒマワリが剣を抜く。


「で、でも……俺、LUK極振りですよ?幸運のコインなら、相性良さそうじゃないですか?」

「たぶん、そういう話じゃないと思うけどね」


ヒマワリは苦笑しつつ、構えを取る。


「……行きます!」


ソルも短剣を構え、前に出た。


フォーチュンナイトは静かに剣を構える。

 二本の剣が交差し、金色の光を纏う。その動きに一切の無駄はない。

長年、戦い続けてきた者だけが持つ洗練された構えだった。


先手を取ったのはフォーチュンナイト。


二振りの剣が同時に振るわれ、ソルへと迫る。


「うわっ!」


ソルは反射的に大きく跳んだ。


「小さく動いて! さっき練習したでしょ!」

「分かってますけど、体が勝手に!」


跳躍のおかげで直撃は免れたものの、着地は不安定だ。


「――《ラッキーストライク》!」


着地と同時に反撃。短剣が光を纏い、フォーチュンナイトの鎧を叩いた。

金属が弾け、フォーチュンナイトが一歩後退する。


「効いてる!」

「下がってて。私が引きつけるね!」


ヒマワリが前に出る。


「《蜃気楼》! 《陽炎》!」


三体の虚像が展開され、視界が揺らぐ。フォーチュンナイトの視線が定まらない。


「今だよ、ソル!」


「《ダブルアタック》!」


ソルの短剣が二度、立て続けに脇腹を捉えた。一撃目はクリティカル。二撃目も確実にダメージを与える。


だが、フォーチュンナイトは怯まない。


左の剣が一閃。三体の虚像が同時に掻き消される。

続けて右の剣を構え、ヒマワリへと突進してきた。


「《跳躍》!」


ヒマワリは上空へ飛び、剣撃を躱す。


「《疾風連斬》!」


空中からの五連撃。フォーチュンナイトのHPバーが目に見えて削れた。


しかし、フォーチュンナイトは両剣を交差させ、金色の衝撃波を放つ。扇状に広がる攻撃が二人を同時に襲った。


「散れ!」


二人は左右に跳び、間一髪で回避する。


「俺に任せてください! 《フォーチュンブレイド》!」


ソルの短剣がLUKの力を纏い、黄金色に輝く。踏み込みと同時に、高火力の一撃を叩き込んだ。

フォーチュンナイトが大きく後退する。


「いいね、その調子!」

「まだ行きます!」


フォーチュンナイトは体勢を立て直し、二本の剣を高速で振るいながら突進してくる。

剣の軌跡が光の残像となり、まるで光の嵐だ。


「《疾風連斬》! 《ウィンドスラッシュ》!」


ヒマワリが五連撃を放ち、さらに風の刃で迎撃する。激突の瞬間、火花が散った。


「今だよ、ソル! 背後から!」

「《ラッキーセブン》!」


背後に回り込んだソルが七連撃を叩き込む。


一撃目、クリティカル。

二撃目、三撃目は通常ダメージ。

四撃目、再びクリティカル。


そして――五撃目、その瞬間、短剣の手応えが変わった。。


「《奇跡》……!?」


突如、短剣が眩い黄金色に輝いた。

第五撃がフォーチュンナイトの胸部へ吸い込まれる。


次の瞬間、爆発的な光が炸裂した。


フォーチュンナイトは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。HPバーが一気に半分以上削れた。


「な……今のは!?」


ヒマワリが目を見開く。

「俺も何が起きたか分かんないです!」

「分かんないんだ!?」


六撃目、七撃目が続き、HPは残り僅か。


よろめきながら、フォーチュンナイトは最後の力を振り絞り、二本の剣を天に掲げた。

金色のオーラが膨れ上がる。


「させない! 《ダブルアタック》! 《ラッキーストライク》!」


ソルが跳び込む。

二連撃――両方ともクリティカル。


フォーチュンナイトの動きが止まり、剣が力なく地に落ちた。


「……汝の幸運、真のものと認めよう」


その言葉を残し、フォーチュンナイトは光の粒となって消えた。

神殿内に静寂が戻る。


「……勝った」


ソルは呆然と立ち尽くした。


「さっきの光、何だったの?」


ヒマワリの問いに、システムウィンドウが答える。


【スキル習得:奇跡の一撃】

効果:低確率で超高火力の一撃が発動するパッシブスキル


「スキル、習得した……!」

「あの爆発みたいなのが?」

「これ……強くないですか?」

「LUK極振りだから、発動率も高そうだよね」

「俺の運を信じろ、ってやつです!」


ソルは拳を握る。

祭壇のコインが静かに輝き、彼の手元に収まった。


神殿を出ると、木漏れ日が二人を迎える。


「回避、少しだけ上手くなったよ」


ヒマワリが笑う。


「まだまだですけど……続けます」


ソルは真剣な表情で頷いた。


「うん。イベントまでに、もっと磨いていこう」


二人は並んで歩き出す。

ソルはコインを空に投げ、受け取った。


表だった。


「やっぱり俺、運いいかも」

「ゲームの中だけね」

「そこ言います!?」


ヒマワリが笑い、ソルも笑った。


次は4/1 21時投稿予定

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ