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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第082話 極振りヒーラー、三層直行ルート

ギルドホーム――翌日。


「今日は一気に第三階層まで行こう」


転移門の前で、ヒマワリがいつもの調子でそう言った。


「二人とも、覚悟はいい?」


からかうような笑みを向けられ、ルナは背筋を伸ばす。


「は、はい! 頑張ります!」

「俺も、足は引っ張りません!」


ソルも拳を握り、気合十分といった様子だった。


「大丈夫だよ」


ステラが微笑みながら言う。


「焦らなくていいし、ちゃんと私たちがフォローするから」


「ありがとうございます……!」


ルナとソルは、揃って転移門へ足を踏み出した。

淡い光が広がり、視界が白に染まっていく。

次の瞬間、四人の姿はギルドホームから消えていた。



第一階層、ボス部屋。


そこへ至るまでの道中、ヒマワリは一度も足を止めなかった。

現れたスライムもゴブリンも、二刀の閃きが走るたびに光となって消えていく。


「は、速……」

「もう終わってる……」


ルナとソルが呆然としている間に、四人は迷うことなく最深部へ辿り着いていた。


巨大な扉の前に、四人が立つ。


ヒマワリが扉を押し開けると、広間の中央に巨大な鎧を纏った巨人が座っていた。


《ガルドラ》


「で、でかい……」

ルナが思わず呟く。


「大丈夫、すぐ終わるよ」

ステラが穏やかに微笑む。


ヒマワリが一歩前に出た。


「私一人で倒すから、見てて」


「え、一人で!?」

ルナとソルが目を丸くする。


ステラが静かに頷く。

ヒマワリは両手に剣を抜いた。


右手に《雷鳴の剣》、左手に迅雷の《迅雷のショートソード》――二刀流の構えだ。


ガルドラがゆっくりと立ち上がる。

右手には巨大な戦斧、左手には分厚い盾。全身から放たれる圧迫感に、空気が重くなる。


「《加速》!」


ヒマワリが駆け出した。

一瞬で距離を詰め、ガルドラの懐――脚元へと滑り込む。


「《スラッシュ》!」


右手の剣が鋭く振り抜かれる。

直後、左手の剣がまったく同じ軌道をなぞった。

二本の刃が同時に閃き、ガルドラの脚を深く切り裂く。


「すごい……同時攻撃……!」


ルナが思わず声を漏らす。


怒りに咆哮し、ガルドラが巨大な戦斧を振り下ろす。


「《跳躍》!」


ヒマワリは地面を蹴り、上空へ。

戦斧が地面を砕く衝撃を背後に、軽やかに着地する。


足が床に触れた、その瞬間――すでに剣は動いていた。


「《ソニック・ブレイク》!」


右手の剣が二連撃を放つ。

一拍も置かず、左手の剣が同じだけの斬撃を重ねる。

合計四発の高速斬撃が、ガルドラの腹部を叩き裂いた。


「連撃が……倍になってる……!」


ソルが目を見開く。


ガルドラは盾を構え、巨体を前に押し出すように突進する。

ヒマワリは横へと跳び、衝撃をかわすと、間髪入れずに踏み込んだ。


「《サンダーラッシュ》!」


右手の剣が雷を纏い、三度閃く。

間髪入れず、左手の剣が同じ回数だけ空間を切り裂いた。


六つの斬撃が一息に叩き込まれ、雷光がガルドラの巨体を走る。

HPバーが、目に見えて削れていった。


「ヒマワリちゃん……すごく上手になったね……」


ステラが、感心したように小さく呟いた。


ガルドラのHPが五割を切った。

その瞬間、巨体が淡く光り出し、半透明の膜が全身を覆う。


ヒマワリの斬撃が弾かれ、火花が散った。


「バリアか……」


ヒマワリは即座に攻撃を止め、周囲を見渡す。

広間の四隅――石柱から伸びる光が、ガルドラへと収束していた。


「……あれだね」


「《ウィンドスラッシュ》!」


風を纏った斬撃が飛ぶ。

右手の剣から放たれた一撃が一本目の石柱を砕き、

間を置かず、左手の剣が二本目を切り裂く。


ヒマワリは止まらない。

間合いを変え、角度を変え、タイミングをずらしながら――

残る二本の石柱も、次々と破壊していった。


光が断ち切られ、広間を満たしていた輝きが消える。


ガルドラの無敵状態が解除された。


「《ストームスタンス》!」


ヒマワリの全身を、風と雷が包み込む。

剣先から迸るエフェクトが、空気を震わせた。


「一気に行くよ!」


両手の剣を交差させ、ヒマワリが突進する。


「《疾風連斬》!」


右手の剣が、風を裂いて五度閃く。

その軌道を追うように、左手の剣が同じだけの斬撃を重ねた。


合計十の連撃が、ほとんど同時に叩き込まれる。

雷と風が交錯し、ガルドラの巨体を切り刻んだ。


HPバーが、一気に削り取られる。


「《スラッシュ》!」


ヒマワリは両手の剣を高く掲げ、

次の瞬間、同時に振り下ろした。


二本の刃が交差し、ガルドラの頭部を深く貫く。


巨人はそのまま崩れ落ち、光の粒となって消え去った。


「つ、強すぎる……」


ルナが、呆然とした声で呟く。


「あんなの……ソロで倒せるんだ……」


ソルも、信じられないという表情で立ち尽くしていた。


「二刀流、便利だよ」


ヒマワリは剣を鞘に納め、さらりと言う。




第二階層、ボス部屋。


道中に現れるモンスターは、ヒマワリの剣が振るわれるたびに霧散していった。足を止める間もなく、四人は一直線に進み、ほどなくして巨大な扉の前に辿り着く。


「……すごい。第二階層、空気からもう違う……」


ルナは息を呑み、目の前の扉を見上げた。重厚な扉を押し開いた瞬間、視界が一気に開ける。


広がっていたのは、果ての見えない空中エリアだった。大小さまざまな岩が宙に浮かび、足場として点在している。その中央、巨大な巣から――


鋭い風切り音とともに、一体の影が飛び立った。


《天空の覇者ストームイーグル》


翼を大きく広げたその姿は、全長十五メートルはあろうか。羽ばたくたびに強烈な突風が生まれ、空間そのものを支配しているかのようだった。


「……で、でかすぎる……!」


思わずソルが声を上げる。


その様子を一瞥し、ステラが静かに一歩前へ出た。


「今度は、私が一人でやってみるね」

「え、ステラさんが!?」


ルナが思わず声を上げ、ステラを振り向く。表情には不安がはっきりと浮かんでいた。


「大丈夫。まあ、見てて」


ステラはそう言って、安心させるように小さく微笑む。


「新しいスキルも、ちょうど試したかったところだし」


その視線は、すでに空を舞うストームイーグルを真っ直ぐに捉えていた。


ステラは自分に次々とバフを重ねがけする。

「《ヒール》! 《リジェネ》! 《再生の祝炎》!」

回復魔法を連打すると、《リストア・ヴェール》が厚く展開され、淡い水色のバリアが全身を包み込んだ。

「《プロテス》! 《剛力》! 《迅速》! 《魔力増幅》! 《星の巡り》!」

全てのバフが揃い、ステラの身体が眩い光に包まれる。


「《挑発》!」


ストームイーグルの視線が一斉にステラへ向いた。

「キィィィィ!」

甲高い鳴き声とともに急降下し、鋭い爪がバリアへ叩きつけられる。

《リフレクト・ヴェール》が反射ダメージを与え、ステラは即座に《ヒール》を発動してバリアを再展開した。


「《フェニックス・フレア》!」


不死鳥の炎が空へ舞い上がり、ストームイーグルを包み込む。大きくHPが削られた。

ストームイーグルは《スカイハンター》を六体召喚し、小型の鳥たちが次々と急降下する。

だがステラは全てをバリアで受け止め、《リフレクト・ヴェール》の反射で雑魚が次々と消えていった。


「攻撃してないのに、敵が倒れてる……!」

ルナが思わず息を呑む。


ストームイーグルは高度を上げ、地上から届かない位置へ逃げようとする。

「逃がさない。《フェニックス・フレア》!」

炎が空を追い、ストームイーグルを撃ち抜く。HPは五割を切った。


「キィィィィィ!」

激昂したストームイーグルが超高速で急降下する。《天空の一撃》が直撃し、バリアが大きく削られた。


「……よし、使ってみよう」


ステラの表情が引き締まる。

「《魔源共鳴》!」


瞬間、ステラの身体が黒い光に包まれた。魔族の力が溢れ出し、WISの数値がINTへと転換される。魔法攻撃力が跳ね上がった。


「《魔砲》!」


杖の先から、極太の魔力砲が放たれる。

紫黒の光線がストームイーグルを直撃し、巨体が大きく揺らいだ。


「す、すごい……あれが魔法……!?」

ルナが目を輝かせる。

「魔法使いより、火力ありますよ……」

ソルは呆然と呟いた。


怒り狂ったストームイーグルが、再び急降下してくる。


「《魔弾雨》!」


ステラが杖を掲げると、前方の超広範囲に無数の魔力弾が降り注ぐ。

弾丸は次々と命中し、ストームイーグルの翼を傷つけた。


「《嵐の翼》!」


激しい羽ばたきとともに竜巻が発生する。


「《魔結界》!」


ステラを中心に黒い結界が展開され、竜巻は完全に阻まれた。ステラは無傷だ。


「《呪縛》!」


黒い波動が広がり、ストームイーグルを包み込む。

【回復不可】の状態異常が表示された。


「最後だよ。《魔砲》!」


再び、極太の魔力砲が撃ち出される。

「《魔弾雨》!」

無数の魔力弾が追撃し、

「《フェニックス・フレア》!」

不死鳥の炎が重なる。


「キィィ……」


ストームイーグルは翼を広げたまま、ゆっくりと崩れ落ち、光の粒となって消えた。


《魔源共鳴》が解除される。

ステラの身体から黒い光が消え、元の姿へと戻った。


「ふぅ……強かった……」


少し疲れた様子で、ステラが息を吐く。


「すごかったよ、ステラ!」


ヒマワリが駆け寄り、目を輝かせる。


「あ、あれが……WIS極振りの力……」


ルナは呆然と立ち尽くしたまま、現実を受け止めきれずにいた。


「魔法使いより火力あるって……どういうことですか……」


ソルは頭を抱え、価値観の崩壊を全身で味わっている。


「えへへ……」


ステラは少し照れくさそうに、頬を掻きながら笑った。





第三階層――風の空中庭園。


転移門を抜けた瞬間、視界が一気に開けた。

白い石造りの建物が円環状に並び、その中心では巨大な風車が静かに回っている。

柔らかな風が頬を撫で、空中に差し込む光がきらきらと反射していた。


「すごい……空に浮いてる……!」


ルナが目を輝かせ、思わず周囲を見回す。


「風が気持ちいい……!」


ソルも風に吹かれながら、素直な笑顔を浮かべた。


「ようこそ、第三階層へ」


ステラが微笑む。


「これで、みんな同じ階層で活動できるね」


ヒマワリも嬉しそうに頷いた。


「本当に、ありがとうございます……!」


ルナとソルは揃って深く頭を下げる。


「これから、一緒に頑張ろうね」


ステラがそう言って、二人に手を差し伸べた。

ルナは迷わず、その手を両手で握る。


「絶対、力になります!」

「俺の運、みんなのために使いますよ!」


ソルが拳を握り、力強く宣言した。


四人は並んで、風の空中庭園を歩き出す。

新しい仲間と共に――

新しい冒険が、ここから始まった。


次は3/30 21時投稿予定

お楽しみに!

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