第081話 極振りヒーラー、双子の加入
第一階層、喫茶店。
四人が店内に足を踏み入れると、落ち着いた雰囲気が迎えてくれた。
木製のテーブルと椅子が整然と並び、他のプレイヤーが静かに休憩している。
窓から差し込む光が、穏やかで心地よい空間を作り出していた。
窓際の席に座る。
ステラとヒマワリは隣同士に並び、向かい側にルナとソルが座った。
NPCのウェイトレスが注文を取りに来る。
ステラは紅茶、ヒマワリはコーヒー、ルナは紅茶、ソルはオレンジジュースを注文すると、ウェイトレスは軽くお辞儀をして去っていった。
「ちょっと聞いてもいい? なんで極振りにしたの?」
ヒマワリが興味深そうに尋ねる。
「大魔法で敵を一掃するの、楽しそうだったんです!」
ルナが目を輝かせ、嬉しそうに答える。
「派手な魔法を連発して、一瞬で戦闘を終わらせるのに憧れてて。実際にやってみたら予想以上に楽しくて、そのままINTに全部振っちゃいました!」
「分かる気がする」
ヒマワリがにっこり笑う。
「俺は……ちょっと恥ずかしいんですけど」
ソルが頭をかきながら話し始める。
「リアルで死ぬほど運が悪くて。財布は忘れるし、傘を持たない日に限って雨が降るし、くじ引きは必ず外れるし」
「それは……大変だね」
ステラが苦笑する。
「だから、ゲームの中だけでも運を上げたいと思って。LUKを極振りにしたら、クリティカルが連発して楽しくなっちゃって」
「よっしゃ、クリティカル!って感じで?」
ヒマワリが笑いながら言う。
「まさにそれです!」
ソルが満面の笑みで頷いた。
「ステラさんはなんでWIS極振りにしたんですか?」
ルナが好奇心いっぱいの目で尋ねる。
「私は……」
ステラが少し考えてから口を開く。
「死ぬのが怖かったから、かな」
「死ぬのが…ですか?」
ルナが首をかしげる。
「うん。ゲームでも死ぬのは嫌で、絶対に倒れたくなかったの。
WISを上げれば回復量が増えるし、死ななければすぐに態勢を立て直せる。それで守れると思って、全部WISに振ったの」
ルナとソルは納得した表情で頷いた。
「それぞれ、ちゃんと理由があるんですね」
ソルが感心したように言う。
その時、注文していた飲み物が運ばれてきた。
「ステラさんって、ギルドに所属してるんですよね?」
ルナが紅茶を一口飲みながら、好奇心いっぱいの目で尋ねる。
「うん。実は私たちのギルドなんだけど」
ステラがにこやかに答えた。
「え、本当に? どんなギルドですか?」
ソルも興味津々で質問する。
「まだ小さいんだけど、仲間は個性的で面白いよ」
ヒマワリが微笑む。
「ルナとソルはギルドに入ってるの?」
ステラが紅茶を口に運びつつ、静かに尋ねた。
ルナとソルは顔を見合わせる。
「……二人ともソロです」
ルナが少し寂しそうに答えた。
「ずっとソロで活動してます」
「なんで? 実力あるのに」
ヒマワリが首をかしげる。
「極振りって……歓迎されないことが多くて」
ルナが続けた。
「バランスが悪い、使いにくいって言われて、ギルドに断られたことが何度かあって。だから、二人だけで頑張ってました」
「分かる気がする」
ステラが優しく頷く。
「私も最初は理解されなかったよ。ヒーラーなのにAGIゼロで、全然動けなかったもん」
「でも、ステラさんは第一回イベントで三位になったじゃないですか!」
ルナの目が輝き、羨望の色を帯びる。
「私もいつかそうなりたい……」
「なれるよ、絶対に」
ステラが微笑む。
ヒマワリがステラを見る。ステラが小さく頷く。
二人の間で、暗黙の了解が自然に成立した。
「ちょっと聞いてもいい?」
ヒマワリが真剣な表情でルナとソルを見つめる。
「私たちのギルドに入らない?」
ルナとソルは、驚きで固まった。
「え……」
「本当に?」
二人は言葉を失い、お互いの顔を見つめ合う。
「仲間を探してたんだ。二人なら、素敵な仲間になってくれると思って」
ステラが柔らかく微笑む。
「で、でも……私たち、極振りですよ?」
ルナが少し目を潤ませながら確認する。
「INT極振りとLUK極振りで、問題ないですか?」
ソルも不安そうに尋ねた。
「むしろ極振りだから歓迎したいんだよ!」
ヒマワリが力強く言う。
「うちのギルド、変わった人ばっかりだから。極振りが珍しくもないし」
「どんなメンバーなんですか?」
ソルが興味津々で聞く。
「えっと、まず私がWIS極振りのヒーラーで――」
「タンクやったり、魔法ぶっ放して森を焼いたり、やってることはヒーラーじゃないんだけどね」
ヒマワリが笑いながら補足する。
「ヒ、ヒマワリ……!」
ステラが顔を赤くする。
「えっ、森を焼いたんですか!?」
ルナの目が大きく輝く。
「WIS極振りのヒーラーが!?」
ソルも驚きの表情で身を乗り出す。
「い、いや、あれはその……仕方がなくて……」
ステラがどもりながら弁解する。
「バリアを張ってモンスターを引きつけ、ためたダメージを一気に解放するのが得意技なんだよね」
ヒマワリがさらに暴露する。
「ヒーラーがタンク兼アタッカー……」
ルナがぽかんと口を開ける。
「それ、普通じゃないですよね?」
ソルが恐る恐る確認する。
「普通じゃないね」
ヒマワリがきっぱり言った。
「もう、ヒマワリ! 言い方があるでしょ!」
ステラが頬を膨らませる。
ルナとソルは顔を見合わせ、思わず吹き出した。
「えへへ、なんか……すごく面白そうなギルドですね」
ルナが笑顔で言った。目がキラキラと輝いている。
「ステラさん、思ってたよりずっとアクティブなんですね」
ソルもにこやかに頷きながら言う。
「ノエルさんは生産職なんだけど、大剣を背負って戦うんだよ」
ヒマワリが楽しそうに続ける。
「生産職が大剣?」
ルナが目を丸くする。
「ティアちゃんは弓の達人。寡黙だけど腕は確か。
バルトさんは大盾を持つタンクで、防御力がとんでもなく高い。
リリアさんは聖属性特化の魔法使いで、攻撃も回復も得意なの」
「全員、個性的すぎませんか?」
ソルが苦笑しながら言う。
「でも……なんか、楽しそう」
ルナが目を潤ませ、にっこり笑う。
「本当に私たちでよかったら……入りたいです」
「俺も! よろしくお願いします!」
ソルが深く頭を下げる。
「よかった! こちらこそよろしくね!」
ステラが嬉しそうに微笑む。
「歓迎するよ!」
ヒマワリも笑顔で応えた。
四人はそれぞれカップを掲げ、軽く合わせる。
小さな乾杯の音とともに、初めてのギルド仲間としての絆が確かに芽生えた瞬間だった。
ステラとヒマワリは、ルナとソルを連れてギルドホームに帰還した。
「おかえり!……あれ、誰か連れてきたの?」
ノエルが目を丸くして驚く。
ルナとソルは少し緊張しながら、深く頭を下げる。
「は、はじめまして! ルナです!」
「ソルです。よろしくお願いします!」
「おう、歓迎するぞ」
バルトが気さくに声をかける。
「よろしくね!」
リリアも笑顔で迎えた。
「……よろしくお願いします」
ティアは静かに頭を下げる。
「紹介するね。ルナはINT極振りの魔法使い、ソルはLUK極振りの剣士だよ」
ステラが二人を丁寧に紹介する。
「極振り!」
ノエルが驚きの声をあげる。
「INT極振り……火力要員として優秀ですね」
ティアが冷静に分析する。
「LUK極振りはクリティカル率が高い。瞬間火力に期待できる」
バルトも頷く。
「ギルド対抗戦、これで戦力が上がったな」
「絶対役に立ちます!」
ルナが元気よく胸を張る。
「俺の運、信じてください!」
ソルも拳を握り、力強く宣言した。
「これで八人ね!」
リリアが指を折り数える。
「ギルド対抗戦、楽しみになってきたな!」
ノエルの目が輝く。
「これからよろしくね、みんな!」
ステラが全員を見渡し、微笑んだ。
「「「よろしく!」」」
八人の声が重なり、ギルドホームに元気よく響いた。
こうして――
ギルド《星天の翼》に、新たな二人の仲間が加わった。
次は3/29 21時投稿予定
お楽しみに!




