第080話 極振りヒーラー、異端は異端を呼ぶ
ギルドホーム、談話室。
ステラ、ヒマワリ、ノエル、リリア、ティア、バルト――六人が揃っていた。
その時――システムアナウンスが流れた。
【重要なお知らせ】
【第4回イベント開催決定!】
【イベント名:ギルド対抗戦】
【詳細は後日発表】
【各ギルドはメンバー補充など、準備を整えておくこと】
「ギルド対抗戦……!」
ステラとリリアが目を輝かせて顔を見合わせる。
「来た!絶対出る!」
ヒマワリも期待に満ちた笑みを浮かべた。
「楽しみだな」
ノエルも嬉しそうに頷く。
だが――バルトが眉をひそめ、腕を組んだ。
「……一つ、問題がある」
全員がバルトを見つめる。
「ギルド対抗戦は大規模戦闘になる。他ギルドは最低でも十人以上のメンバーを抱えているはずだ。
俺たち六人じゃ、数で押されたら個人の実力じゃ補いきれない」
「……確かに」
ティアが静かに同意する。
ノエルは不安そうに唇を噛んだ。
「最低でもあと二、三人は欲しいな」
「そうだね……仲間を増やすことを考えないと」
ステラが真剣な表情で頷く。
「掲示板に募集を出すのが一番早いんじゃないかな?」
リリアが提案する。
「効率的ではあるけど……見ず知らずの相手を信用できるかどうか、それが問題です」
ティアが静かに指摘する。
「俺は実際に会って、信頼できる相手を選びたい。掲示板は最後の手段にしたい」
バルトも力強く言った。
「じゃあ、実際に探しに行こうか」
ステラが立ち上がる。
「私も行く!」
ヒマワリが笑顔で続く。
「二人で行ってきてくれるか? 俺たちはここで待ってる」
ノエルが手を差し伸べる。
「うん。任せて!」
ステラとヒマワリは、出発の準備を始めた。
第三階層、風の空中庭園。
ステラとヒマワリが軽やかに庭園の通路を歩く。
周囲には多数のプレイヤーが行き交っているが、ほとんどは既にパーティーやギルドに所属している様子だった。
二人は何人かのソロプレイヤーに声をかけてみるが、返ってくる答えは決まっている。
「ごめん、もうギルドに入ってるんだよね」
「ありがとう、でも今のギルドが気に入ってて」
「……なかなかいないね」
ヒマワリがため息混じりに周囲を見回し、困った表情を浮かべる。
「高レベルのエリアだと、みんなどこかのギルドに所属してるよね……」
ステラも視線を巡らせ、同じく悩む。
「ちょっと考えがあるんだけど……第一階層に行ってみない?」
ステラが提案する。
「第一階層? 初心者エリアじゃないの?」
ヒマワリが首を傾げる。
「うん。でも、ソロで活動してる未所属プレイヤーがいる可能性が高いと思うの。
レベルが低くても、一緒に成長していけばいいし」
「……確かに!それいいかも」
ヒマワリの顔に笑顔が戻る。希望の光が差したようだ。
「じゃあ、転移門に行こう」
二人は並んで庭園の転移門へと歩みを進めた。
第一階層、草原エリア。
久しぶりに足を踏み入れた第一階層は、どこか懐かしい空気に包まれていた。
レベル一桁のプレイヤーたちが、スライムやゴブリンを相手に基本操作を学びながら、のんびりと戦っている。
「懐かしいね……」
ステラが目を細め、周囲を見渡す。
「私たちも最初はこんな感じだったね」
ヒマワリが微笑みながら、草原を歩く。
二人は初心者プレイヤーの戦闘を観察しつつ、適切な仲間になりそうな人材を探して進んでいた。
その時――遠くで、派手な魔法の閃光が弾けた。
ドカンッ!
爆発音が響き、複数のモンスターが一瞬で吹き飛ばされる。
「え?」
「何あれ……!」
ステラとヒマワリは目を見開き、光の方向を凝視した。
第一階層で、この火力は明らかに異常だ。
二人は無言で顔を見合わせ、瞬時に理解した。
「光の発生源……あそこに行こう」
そして、二人は草原を駆け抜け、光の中心へと向かって走り出した。
草原エリアの開けた場所。
そこには、二人の少年少女が戦闘中だった。
一人は小柄な少女。長い銀髪をツインテールにまとめ、青いローブと魔法使いの帽子を身に着けている。
もう一人は少年。短い銀髪で、少女とよく似た顔立ちをしていた。軽装の革鎧に二本の短剣を装備している。
「やっちゃうよー!《ファイアボルト》!」
少女――ルナが杖を構え、炎魔法を詠唱する。
巨大な炎の球が飛び出し、《ゴブリンキング》三体を一瞬で焼き尽くした。
「な……!」
ステラの瞳が見開かれる。第一階層でこの威力は異常すぎる。
残ったゴブリンに、少年――ソルが短剣で突進する。
「《ラッキーストライク》!」
一撃でクリティカルが発生し、ゴブリンは光の粒となって消えた。
「よっしゃ、クリティカル!」
ソルが拳を握る。
戦闘終了。二人は笑顔でハイタッチを交わし、互いの活躍を喜んでいた。
「ルナ、今のナイスだったよ!」
「えへへ、私の魔法すごいでしょ!」
ルナは得意げに笑い、周囲の草原に小さな光が揺れるようだった。
ステラとヒマワリが二人に近づく。
「あの、すごい戦闘でしたね! 第一階層であの火力は……」
ステラが緊張しながらも声をかける。
二人が振り向いた。
ルナがステラをじっと見つめ、目を見開く。
「え……え!? もしかして……ステラさん!?」
「は、はい……」
「第一回イベント三位の! 私、ファンです!」
ルナが興奮した様子で一気に距離を縮める。
「え、私にファンが……!?」
ステラは面食らい、思わず後退する。
「ずっと憧れてたんです! WIS極振りのヒーラーが、あんなに活躍するなんて!」
「あ、ありがとうございます……?」
ステラはどう反応すればいいのか分からず、苦笑した。
「俺たちも極振りなんですよ」
少年――ソルが笑顔で話しかける。
「極振り? どのステータスに?」
ヒマワリが興味深そうに尋ねた。
「姉貴がINT極振り、俺がLUK極振りです」
「LUK極振り!?」
ステラは思わず声を上げた。
「俺の運を信じろ!ってやつです」
ソルがにやりと笑う。
「自己紹介しますね。私はルナ。魔法使いで、INT極振りです。よろしくお願いします!」
「僕はソル。ルナの双子の弟で、LUK極振りです。よろしく!」
「私はステラ。ヒーラーで、WIS極振りです」
「ヒマワリ! 剣士だよ、よろしく!」
四人が自己紹介を済ませた。
「ねえ、よかったらちょっと話せますか? 実はお二人に聞きたいことがあって」
ステラが少し真剣な表情で言う。
「もちろんです! どこかで話しましょう」
ルナが元気よく答えた。
「一層に喫茶店があったよね。そこに行こう」
ヒマワリが提案する。
「喫茶店! いいですね。行きましょう!」
四人は第一階層の喫茶店へ向かって歩き出す。
ステラとヒマワリは少し後ろを歩きながら、小声で話した。
「どう思う?」
ヒマワリが耳打ちする。
「……すごくいい感じがする」
ステラが笑顔で答えた。
次は3/28 21時投稿予定
お楽しみに!




