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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第078話 極振りヒーラー、ヒマワリの試練1

ヒマワリは一人、レベリングを続けていた。


《蜃気楼》と《陽炎》を交互に展開し、視界を揺らしながら戦場を支配する。

虚像が敵の注意を引き、その隙を縫うように、本体のヒマワリが駆け抜けた。


空気を切り裂く音と共に、空から《ウィンドホーク》が四体、急降下してくる。


「――来たね」


瞬間、彼女は踏み込んだ。


「《加速》!」


身体が軽くなり、視界が一段引き延ばされる。

鋭い鉤爪がすぐ脇を掠めるが、ヒマワリは軌道を読んで半歩ずれる。


「《跳躍》!」


地を蹴り、空中へ。

すれ違うように鷹の突進をやり過ごし、着地と同時に刀を振るう。


「《サンダーラッシュ》!」


雷を纏った三連撃が、正確に急所を貫いた。

一体、二体と墜ち、最後の一羽が逃げようとした瞬間――


踏み込み、斬撃。

空は静けさを取り戻した。


次に姿を現したのは、《ストームゴーレム》二体。

巨大な拳が唸りを上げて振り下ろされる。


(重い……当たったら終わりだね)


ヒマワリは表情を崩さず、最小限の動きでかわし続ける。

足元の砕けた地面、風圧、視界の揺れ――すべてを計算に入れて。


隙が生まれた瞬間。


「《サンダーラッシュ》!」


雷光が走り、関節部を砕く。

片方が崩れ、残る一体も体勢を立て直す前に沈んだ。


そして――

空気が変わる。


小型飛竜スカイドレイクが、翼を広げて降り立った。


ブレスの兆候を察知し、ヒマワリは即座にスキルを切り替える。


《陽炎》が視界を歪ませ、狙いが散る。

続けて《蜃気楼》。虚像にブレスが集中し、本体はその外側へ滑り出た。


「《疾風連斬》!」


五連撃が飛竜を切り裂き、撃破した。


【レベルアップ!Lv35】


ヒマワリが息を整える。ステータス画面を確認すると、レベル35に到達していた。


「よし、レベル上がった」


満足そうに頷く。


その時――

突然、システムウィンドウが出現した。


【特殊クエスト発生:剣聖の試練】

【条件達成:Lv35到達まで無被弾戦闘記録達成】


「え?」

ヒマワリが驚いた表情で画面を見る。


無被弾戦闘記録――レベル35まで、一度も攻撃を受けていないという記録。

自分でも意識していなかった達成条件だ。


「無被弾……そういえば、ずっと避けてばっかりだったな」


クエストの詳細を確認する。


目的地:第三階層最奥部《剣聖の祠》


クエスト内容:剣聖の試練に挑む

ヒマワリが地図を開き、目的地を確認する。

風の空中庭園の最も奥、誰も訪れたことのない場所。


「行ってみるか」





風の空中庭園、その最奥へ続く細道。

ヒマワリは通常ルートを外れ、人気のない空中回廊を進んでいた。


上空から、三体の《エリートハーピー》が急降下する。


「《跳躍》!」


風を蹴って宙へ躍り、爪を紙一重でかわす。

空中で身体を捻り、着地と同時に斬撃を放った。


「《ウィンドスラッシュ》!」


風の刃が羽を裂き、戦いは短時間で終わる。


続いて現れたのは、《ウィンドエレメンタル》五体。

竜巻が同時に放たれ、視界が揺らぐ。


(正面はまずい)


《蜃気楼》と《陽炎》。

虚像が散り、攻撃がそちらへ集中する隙に、本体は位置を変える。


「《ストームスタンス》!」


風雷を纏った連撃で、一気に殲滅した。


細い空中の橋を渡る。

強風に煽られるが、ヒマワリは歩調を乱さない。


重心を低く、視線は前。

危なげなく渡り切り、最奥への道へと踏み出した。



ヒマワリが進むにつれ、風の流れが徐々に穏やかになっていく。


やがて、前方の空に小さな浮島が見えてきた。

他の浮島よりも低く、静かに、まるで風に取り残されたかのように漂っている。


島の中央には――

古びた石造りの祠が建っていた。


苔むした石壁は長い年月を感じさせ、周囲にはモンスターの姿もない。

張り詰めた静寂が、ここが特別な場所であることを告げていた。


祠の前に近づくと、一基の石碑が視界に入る。


『剣の道を極めし者よ。

 汝の技を証明せよ。

 無傷にて試練を乗り越えし時、真の力を授けん』


「……試練、か」


ヒマワリは石碑を見上げ、祠の扉へと視線を移す。

そして一歩、足を踏み出した。


重い石扉が、低い音を立ててゆっくりと開いていく。




祠の中は、意外にも広い空間だった。

中央には、人型の剣士像が立っている。


――《剣聖の幻影》

名前が浮かび上がった瞬間、像が微かに光を帯び、動き出す。

剣を構えた幻影に、ヒマワリも片手剣を抜き構えた。


「来るな……!」


戦闘開始の合図とともに、幻影が超高速で突進してくる。


「《加速》!」


ヒマワリは横に跳び、ぎりぎりで回避。空を切る剣先が背後をかすめる。


反撃しようと剣を振るうが、幻影は既に次の攻撃を放っている。連続攻撃が容赦なく襲いかかる。


「《蜃気楼》!」


ヒマワリの体から虚像が三体展開される。幻影は虚像を斬るも、本体は別の角度から反撃してきた。


「《サンダーラッシュ》!」


雷の三連撃が幻影に直撃する。だが、ダメージを受けても幻影は動きを止めない。むしろ速度を上げ、ヒマワリに迫ってくる。


「《陽炎》!」


視界が歪み、幻影の攻撃がふわりと外れ始める。その隙に、ヒマワリは素早く距離を取った。


幻影が最後の一撃を放つ。剣は眩い光を纏い、一直線に突き刺さる。

ヒマワリは紙一重で回避し、側面から反撃を叩き込む。


「《疾風連斬》!」


五連撃が閃光を放ち、幻影を切り裂く。光となって消えゆく幻影。




次の間に足を踏み入れると、そこには五体の剣士像――《剣聖の幻影・複》が立っていた。

それぞれがヒマワリを狙い、同時に剣を構える。空気が張りつめ、息を呑む間もなく、五方向から一斉に襲いかかってきた。


「くっ……来る!《加速》!」


ヒマワリは瞬時に体を前方に滑らせ、五本の剣の間をすり抜ける。空いた隙間に――


「《蜃気楼》!」


虚像が四体現れ、視界が揺らぐ。幻影たちは混乱し、虚像を斬りかかる。

ヒマワリはその間隙を縫うように、剣を振るった。


「《ソニック・ブレイク》!」


素早い二連撃が一体の幻影を打ち据える。だが、次の瞬間には別の幻影が迫る。


「《陽炎》!」


視界が波打ち、幻影の攻撃がかすかにずれる。

その隙を逃さず、ヒマワリは跳躍で天井近くまで跳び上がり、上からの斬撃を叩き込む。


「《サンダーラッシュ》!」


雷の速度を纏った三連撃が、一体ずつ確実に幻影を削っていく。

さらに追撃。

「《ウィンドスラッシュ》!」


風を纏った剣が、距離を保ちながら次の幻影を切り裂く。


幻影の数が減らない――五体すべてを相手にするには、隙はほとんどない。

そこでヒマワリは構えを低くし、集中力を高める。


「《ストームスタンス》!」


体に風と雷の力が纏い、移動速度も上昇。攻撃がより速く、鋭くなる。


「《スラッシュ》!」


単体への大ダメージを確実に叩き込み、一体また一体と倒していく。


最後の一体――ヒマワリは息を整え、目を見開く。

「《疾風連斬》!」

五連撃が閃光となり、剣士像の最後の幻影を打ち砕いた。


祠に、重く深い静寂が戻る。

ヒマワリは膝に手をつき、ゆっくりと息を吐いた。全身の力が抜けていく。

だが――その目には、まだ戦いの緊張が残っていた。


次は3/26 21時投稿予定

お楽しみに!

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