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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第077話 極振りヒーラー、新たな盾と共に

ギルドホーム、談話室。


ステラとヒマワリがくつろいでいた。

リリアは別のクエストへ出かけ、ティアはソロで探索中。

ノエルは工房にこもって作業をしている。


「最近、平和だね」


ヒマワリが剣を磨きながら言う。


「うん。でも、次のボス討伐の準備もしないと」


ステラは掲示板に貼られたクエスト一覧を眺めた。


その時――

コンコン、と扉を叩く音が響く。


「失礼しまーす」


男性の声に、ステラが立ち上がってドアを開ける。

そこには、大盾を背負った大柄なプレイヤーが立っていた。

茶髪の青年で、重厚な鎧がいかにも防御役らしい。


「あれ? ノエルいないの?」

「えっと……ノエルさんの知り合いですか?」


ステラが少し戸惑いながら尋ねる。


「ああ、フレンドでね。装備のメンテを頼もうと思ってさ」


その声に反応して、工房の奥から顔を出す人物がいた。


「バルト!」

「よう、ノエル。悪いけど装備、見てくれるか?」

「いいよ! 入って入って!」



バルトはギルドホームに入り、椅子に腰を下ろす。

背負っていた大盾を壁に立てかけると、ずしりとした重量感が床に伝わった。


「バルト、紹介するね。こっちがギルドマスターのステラ。それとヒマワリ」

「はじめまして、ステラです」

「ヒマワリだよ。よろしく」

「俺はバルト。ノエルとは、よく一緒に狩りしてるんだ」


気さくな笑みを浮かべて、バルトが言う。


「大盾使いなんだね。珍しいよね」


ヒマワリが興味深そうに盾を見る。


「まあな。タンクは需要があるから、パーティには誘われやすいけど」

「かっこいいですね、その盾!」

ステラが目を輝かせる。


「ああ、これ? けっこう気に入ってるんだ。《鉄壁の守護者》ってやつ」


バルトは誇らしげに盾を撫でた。


「VIT特化で、防御力が高い。カウンタースキルも持ってる」



ノエルがバルトの装備を一通り確認し、顎に手を当てた。


「うーん……けっこう傷んでるね。直すには素材が必要かも」

「素材?」

バルトが首を傾げる。


「《硬鉄鉱石》が五個と、《魔獣の皮》が三枚」

「それ、どこで手に入る?」

「第二階層の鉱山と、森のモンスターがドロップするよ」

「そっか……じゃあ、取ってくるわ」


そう言って立ち上がろうとしたバルトを、ノエルが慌てて引き止めた。


「待って! 俺も一緒に行く!」

「え? いいのか?」

「うん。素材の場所、案内するよ。それに……久しぶりに一緒に冒険したいし」


その様子を見ていたステラが、少し遠慮がちに手を挙げる。


「あの……私も一緒に行っていいですか?」

「え? いいけど……マスターが来なくても大丈夫だぞ?」

「えっと……三人の方が、安全だと思って」

「ステラも来るの? やった!」

ノエルが素直に喜ぶ。


「私も行く?」

ヒマワリが問いかける。


「ううん、大丈夫。すぐ戻るから」

「わかった。気をつけてね」

「じゃあ、三人で行くか」


バルトが立ち上がり、大盾を背負った。




第二階層の鉱山。

洞窟の内部には、淡く光る鉱石が点在している。


「《硬鉄鉱石》は、この辺にあるはずだよ」

ノエルが周囲を見回す。


「あ、あそこに……光ってるのが見えます!」

ステラが指差した。


鉱石へ近づき、採掘しようとした――その瞬間。


ゴゴゴゴゴ……


地鳴りとともに、岩の塊が動き出す。

二体の《ロックゴーレム》が姿を現した。


「来たか……《挑発》!」


バルトが大盾を構え、前へ踏み出す。

ゴーレムの攻撃が盾に叩きつけられるが、衝撃を受け止めたバルトは微動だにしない。


「ノエル、ステラ、頼む!」


「任せろ! 《タワースイング》!」


ノエルの大剣が唸りを上げ、ゴーレムを叩きつける。


「《聖炎》!」


ステラの放った炎が追撃となり、岩の身体を包み込んだ。


「《シールドバッシュ》!」


怯んだ隙を逃さず、バルトが盾を叩き込む。

三人の攻撃が噛み合い、ゴーレムは崩れ落ちた。


「……いい連携だな」

バルトが感心したように言う。


「えへへ。ステラとのコンビも、バッチリだね」

ノエルが笑う。


「バルトさんの防御、すごいです。全然ダメージ受けてないですね」


「まあ、それが取り柄だからな」


そう言って、バルトは少し照れたように笑った。


その後、無事に《硬鉄鉱石》を五個採取することができた。


第二階層の森。

《魔獣の皮》を落とす《シャドウウルフ》を求め、三人は木々の間を進んでいた。


ほどなくして、影のような動きが視界を横切る。

三匹の《シャドウウルフ》が、低い唸り声を上げて現れた。


「《挑発》!」


バルトが前に出て、大盾を構える。

敵意を一身に引き受け、三匹の攻撃を受け止めるが――


攻撃は確実に防げているものの、敵の体力がなかなか削れない。

盾越しに攻撃を受けながら、バルトは歯噛みした。


(……やっぱり、火力が足りねえな)


「バルトは守りに集中して!」


ノエルが叫び、ステラもすぐに詠唱を重ねる。


「《プロテス》」


バルトの防御力がさらに引き上げられ、攻撃はほぼ通らなくなった。


「よし……これなら耐えられる!」


その隙を逃さず、ノエルが大剣を振るう。


「《クレセント・ウェイブ》!」


衝撃波が森を薙ぎ払い、狼たちの動きを削ぐ。


「《フェニックス・フレア》!」


ステラの炎が追撃となり、《シャドウウルフ》は次々と光の粒へと変わっていった。


戦闘が終わり、静けさが戻る。

地面には、《魔獣の皮》が三枚残されていた。


素材を揃え、三人はギルドホームへの帰路につく。

森を抜けながら、バルトがぽつりと口を開いた。


「……助かったよ。三人だったから、あっという間だった」


ソロでは時間がかかる。

それどころか、危険も多い――そんな思いが、その言葉には滲んでいた。


「大盾使いは、防御は得意なんだけどな。前に立って守る分、攻撃が遅くて、どうしても火力は低い」


自嘲気味に言うバルトに、ステラはしばらく考え込む。


パーティで前に立ち、仲間を守る盾。

それは、今のギルドに最も足りていない役割だった。


「……あの、バルトさん」


ステラは顔を上げる。


「よかったら、私たちのギルドに入りませんか?」


バルトが驚いたように足を止める。


「防御ができる人がいると、みんな安心して動けるんです」


ノエルも、隣で大きく頷いた。


しばらくの沈黙の後、バルトは小さく笑った。


「……ありがとう。じゃあ、世話になるよ」


その言葉に、ノエルが思わず跳ね上がる。


「やった!」


森の中に、少し明るい声が響いた。


ギルドホームに戻ると、ヒマワリが真っ先に駆け寄ってきた。


「おかえりー。素材、集まった?」

「ああ。この二人のおかげでな」


そう言ってバルトがステラとノエルを見ると、ノエルが一歩前に出る。


「ねえヒマワリ! バルトがギルドに入ってくれることになったよ!」

「えっ、本当!?」


驚きつつも、ヒマワリはすぐに笑顔になる。


「大盾使いは心強いね。歓迎するよ、バルト!」


その後リリアとティアも戻り、簡単な挨拶を交わす。

こうして――バルトは正式に、ギルド《星天の翼》の一員となった。


「これで六人だね」


ノエルの言葉に、皆が頷く。




その日の夜。

ギルドホームの作業台で、ノエルがバルトの装備を調整していた。


「はい、完成」


磨き上げられた大盾は、灯りを反射して輝いている。


「おお……新品みたいだな。助かる」

「明日、みんなでクエスト行こう」


ステラの提案に、バルトは盾を肩に担いで笑った。


「いいな。試運転にもなる」


仲間たちの笑い声が、静かな夜に溶けていく。


こうして――

防御の要となる新たな仲間を迎え、

ギルド《星天の翼》は、次の冒険へと歩み出すのだった。


次は3/25 21時投稿予定

お楽しみに!

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