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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第073話 極振りヒーラー、第三階層への鍵

ギルドホーム、談話室。


五人が集まり、テーブルを囲んでいた。ステラが告知を読み上げる。


「アップデートで、第三階層が追加されたって」

「でも、その前に第二階層のボスを倒さないと進めないんだよね」


ヒマワリが腕を組む。


「ボス……強いのかな……」


ノエルが少し不安そうに言う。


「大丈夫!みんなで行けば勝てるよ!」


リリアが明るく言う。


「……準備はいいですか?」


ティアが静かに尋ねる。


「うん!」


全員が頷き、立ち上がった。





第二階層の森。

鬱蒼とした木々が視界を覆い、薄暗い空気が漂う危険地帯だ。


この森の奥には階層ボスが存在し、討伐に成功すれば第三階層への道が開かれる。

プレイヤーたちにとって、次の段階へ進むための重要な関門だった。


五人は自然と隊列を組み、森の中へ踏み込んだ。

前衛にヒマワリとノエル。

中衛にティア。

後衛をステラとリリアが固める。


森の入口を抜けた直後――

茂みの向こうから、低い唸り声が響いた。


《フォレストウルフ》が六体。

群れとなって、こちらへ襲いかかってくる。


「前に出るよ!」


ヒマワリが一歩踏み込み、剣を構える。


「任せて!」


ノエルも大剣を抜き、並び立った。

二人が前線で敵を迎え撃つ。


「《サンダーラッシュ》!」


雷を纏ったヒマワリの三連撃が炸裂し、フォレストウルフの一体が光の粒となって消えた。


「《クレセント・ウェイブ》!」


ノエルの大剣から半月状の衝撃波が放たれ、二体の狼をまとめて薙ぎ払う。


「《二の矢・連》」


ティアの放った二連射が、残る一体を正確に射抜いた。


「《ヒール》!」


ステラの回復魔法がノエルを包み、減っていた体力が一気に戻る。


「《ホーリー・アロー》!」


純白の矢が走り、最後の狼を貫いた。


「いい連携だね!」


ヒマワリの言葉に、全員が小さく頷く。

五人はそのまま、森の奥へと進んでいった。




森の中間地点。

頭上で、風を切る羽音が響いた。


空から急降下してくる影。

《ウィンドホーク》が四体、高度を取って旋回している。


「高すぎる……!」


ヒマワリが空を睨む。だが、すぐに気持ちを切り替えた。


「《サンダーボルト》!」


雷光が走り、一体の鷹を撃ち落とす。

地面に叩きつけられた瞬間、ヒマワリの剣が追撃を叩き込んだ。


「《タワースイング》!」


ノエルが大剣を縦に振り抜く。

放たれた衝撃波が空を裂き、もう一体を強引に叩き落とした。


「《三の矢・参》」


ティアの矢が三方向へ放たれ、残る二体を同時に射抜く。

撃ち抜かれた鷹たちは、力なく地面へ落下した。


「《ホーリー・レイン》!」


リリアの魔法が発動し、光の矢が雨のように降り注ぐ。

落ちた鷹に止めが刺さり、戦闘は終わった。


「みんな……強くなったね」


ステラが、嬉しそうに微笑む。




森の広場。

視界が一気に開けた、その瞬間だった。


《フォレストウルフ》十体。

《ストーンゴーレム》三体。

《ポイズンスパイダー》八体。


――合計二十一体。

無数の敵が、五人を包囲する。


「……数が多い」


ティアが冷静に言う。


「私が引きつけるね!」


ステラが一歩前へ出た。

《ヒール》《リジェネ》《再生の祝炎》を連続発動。

さらに《プロテス》で防御を底上げし、バリアを何重にも重ねる。


「《挑発》!」


瞬間、モンスターの半数がステラへ殺到した。


「ステラ、無茶しないで!」


「大丈夫! バリアあるから!」


ステラは《マルチディバイン・シールド》を展開する。

三重の神聖障壁が、彼女の周囲に浮かび上がった。


次々と叩きつけられる攻撃。

だが、バリアは耐え抜く。


――ダメージは、《セラフィック・リザーブ》へと蓄積されていった。


「ゴーレムは任せて!」


ノエルが大剣を振りかぶる。


「《ブレイクスラッシュ》!」


鉱物系に特効を持つ一撃が、ゴーレムの体を砕いた。

一体が音を立てて崩れ落ちる。


一方、ヒマワリは《ストームスタンス》を発動。

風と雷を纏い、狼の群れへと斬り込んだ。

高速の連撃が、次々とフォレストウルフを沈めていく。


「《四の矢・雨》」


ティアが放った矢が空中で分裂し、蜘蛛の群れに降り注ぐ。

範囲攻撃が功を奏し、複数の敵がまとめて消えた。


「《ディバイン・シールド》!」


リリアの支援が重なり、ステラを守る神聖障壁がさらに強化される。


「――今だよ!」


ステラが声を張り上げる。


「《セラフィック・リザーブ》解放!」


蓄えられていた光の力が、一気に解き放たれた。

聖属性の爆発が広場を包み込み、残ったモンスターをまとめて吹き飛ばす。


――静寂。


「相変わらず、すごい威力だな」


ノエルが感心したように呟く。


「えへへ……」


ステラは、少し照れくさそうに笑った。



森の最深部、森を抜けると突然視界が開けた。

目の前には深い谷があり、その上空には巨大な巣が浮かんでいる。

巣には巨大な扉が立っており、古代文字で「天空の覇者」と刻まれていた。


「……ここが、ボス部屋だね」


ステラが静かに呟く。

誰も冗談を言わず、全員が自然と頷いた。


「みんな、バフかけるね」


《ヒール》《リジェネ》《再生の祝炎》を付与し、《リストア・ヴェール》でバリアを展開する。

そして、《プロテス》《剛力》《迅速》《魔力増幅》《星の巡り》を重ねがけした。


「私たちにもバフかけて欲しいな」


ヒマワリが期待の眼差しを向ける。


「うん、分かってるよ。新しいスキル、試してみたいんだ」


ステラが深呼吸する。


「《慈愛の抱擁》!」


ステラの体が光り始める。

背中から白い光の翼が六枚展開され、頭上には金色の光輪が浮かび上がった。

全身は柔らかな白金色の輝きに包まれ、周囲には光の羽が舞い散る。

足元では、複雑な紋様を描いた魔法陣が淡く輝いていた。


ステラが展開しているバフが、全員に適用される。

バリア、継続回復、全ステータス上昇――全員が光に包まれた。


次の瞬間――

ステラが展開していた無数のバフが、波紋のように広がる。


バリア。

継続回復。

全ステータス上昇。


五人全員が、温かな光に包まれた。


「これは……《慈愛の抱擁》の効果だよ」


ステラが穏やかな声で説明する。


「範囲内にいるパーティーメンバーには、私自身にかかっているバフが全部適用されるの」


ふわり、と光の羽が舞い落ちる。


「だから、なるべく私の近く――この範囲から離れないでね」


その言葉に、皆が光を感じながら頷いた。


「ステラ、天使みたい……!」


リリアが感動する。


「……準備万端、ですね」


ティアが頷く。

ステラは一度、全員を見渡し――にっこりと笑う。


「じゃあ、行こう!」


五人は同時に扉へと手を伸ばし、

――重々しい音とともに、ボス部屋への扉が開かれた。





ボス部屋は、広大な空中エリアだった。

足場は岩で構成された浮遊島が点在している。

中央の巣から、巨大な鷲が飛び立った。


《天空の覇者ストームイーグル》


翼を広げると十五メートルはある、巨大な鳥だ。


「キィィィィ!」


甲高い鳴き声と共に、ストームイーグルが急降下する。

鋭い爪が、一直線に薙ぎ払われた。


ノエル、ティア、ステラ、リリアが衝撃を受け、体勢を崩す。

だが――


次の瞬間、ステラの周囲に展開されたバリアが強く輝いた。


鋭い爪が叩きつけられるが、神聖障壁がそれを正面から受け止める。

鈍い衝撃音とともに光が揺らぎ、攻撃は弾かれた。


「キィィィィ!」


ストームイーグルが再び鳴く。

小型の鳥型モンスター《スカイハンター》が六体出現し、空中から急降下攻撃を繰り返す。


「雑魚は任せて!」


ヒマワリがそう叫ぶと同時に、二つのスキルが発動する。


「《蜃気楼》《陽炎》!」


瞬間、彼女の周囲に虚像が生まれ、空気が大きく揺らいだ。

視界は歪み、実体と影の境界が曖昧になる。


戸惑った鳥たちが、次々と虚像へ突進する。

爪と嘴が空を裂くが、捉えるのは幻ばかりだ。


――本物のヒマワリは、そこにいない。


降下してきた瞬間。

その隙を、ヒマワリは見逃さなかった。


「今だ!」


一気に踏み込み、剣を振るう。


「《疾風連斬》!」


一撃、二撃――

加速する斬撃が風を切り、五連の刃が鳥たちを切り裂く。


次々と光の粒となって消えていき、空は一瞬で静まり返った。


「《四の矢 雨》」


ティアが空中の残りの鳥に矢の雨を降らせ、一掃する。


「駄目だ、高すぎて……届かない……!」


ノエルが悔しそうに歯噛みする。

ストームイーグルはさらに高度を取り、地上からの斬撃を完全にかわしていた。


その時。


「私に、任せてください」


落ち着いた声とともに、ティアが一歩前へ出る。

弓を引き絞り、狙いを定めた。


「《五の矢・貫》」


放たれた一射は空中で分かれ、一直線に収束する。

貫通力を宿した矢が、高空の本体を正確に射抜いた。


「――ギィィッ!」


ストームイーグルが苦鳴を上げ、HPゲージが大きく削れる。


間髪入れず、リリアが詠唱を終える。


「《セイクリッド・ランス》!」


純白の光が槍となり、空を裂いて突き刺さる。

聖なる一撃が本体を貫き、翼が大きく揺らいだ。


「今です!」


ステラが両手を広げる。


「《フェニックス・フレア》!」


不死鳥の炎が空へと舞い上がり、ストームイーグルを包み込む。

灼熱の光が炸裂し、決定的な大ダメージを刻み込んだ。


「キィィィィィ!」


激昂したストームイーグルが高度を落とし、翼を激しく羽ばたかせた。

次の瞬間、巨大な竜巻が発生する。


五人の体が宙に舞い、叩きつけられた。

神聖バリアは砕け散り、ノエルが大きく削られる。


だが――

継続回復の光が即座に癒やし、ノエルのHPは一気に全快した。


ストームイーグルのHPが、ついに半分を切った。


「キィィィィィィ!」


甲高い叫びとともに、巨体が超高速で急降下する。

狙いは――ノエル。


「来る……!」


ノエルは即座に大剣を構え、防御姿勢を取った。


「ノエル!」


ヒマワリが《加速》で割り込み、腕を掴む。


次の瞬間、二人の姿は爪の軌道から外れていた。

突風だけが、背後をかすめていく。


「あの攻撃……たぶん、耐えられないと思う」


ヒマワリが素早く立ち上がり、空を睨む。


ストームイーグルは、そのまま高度を取り直そうと翼を広げた。


「――逃がさない!」


リリアが即座に詠唱を完了する。


「《バインド・チャーム》!」


光る魔導チャームが射出され、翼へと絡みついた。

羽ばたきが乱れ、動きが明らかに鈍る。


好機が、生まれた。


「……今です」


ティアが静かに引き絞り、放つ。


「《三の矢・参》」


三方向から放たれた矢が、同時に翼へ突き刺さる。

ストームイーグルが悲鳴を上げ、高度を保てずに大きくよろめいた。


「――地上まで、降りた!」


ノエルが踏み込み、大剣を振り抜く。


「《タワースイング》!」


轟音とともに、巨体が地面へ叩きつけられる。


「一気に、畳み掛けるよ!」


ヒマワリが《ストームスタンス》を発動。

風と雷を纏い、本体へ一直線に突進する。


「《疾風連斬》!」


加速する五連撃が、確実にHPを削り取る。


「《ブレイクスラッシュ》!」


続けて、ノエルの大剣が深く切り裂いた。


「《五の矢・貫》」


ティアの貫通射撃が胴体を貫き、致命傷を刻む。


「《ホーリー・エクスプロージョン》!」


リリアの聖なる光が爆ぜ、巨体を包み込んだ。


「みんな……最後だよ!」


ステラが両手を掲げる。


「《フェニックス・フレア》!」


最大火力の炎が、不死鳥のごとく舞い上がり、ストームイーグルを焼き尽くす。


「キィィ……」


か細い鳴き声を残し、翼を広げたまま巨体が崩れ落ちる。

次の瞬間、光の粒となって霧散した。


「やった……!」


五人の歓声が、ボス部屋に響く。


やがて、部屋の奥に新たな扉が出現した。

その先には、澄んだ風が吹き抜け、空に浮かぶ美しい街並みが見える。


「……あれが、第三階層……」


ステラが、感慨深く呟く。


「すごい……空中都市みたい」


ヒマワリが目を輝かせた。


「せっかくだし、このまま行ってみようよ!」


リリアの提案に、全員が頷く。


こうして五人は――

新たな冒険の舞台、第三階層へと足を踏み入れた。


次は3/21 21時投稿予定

お楽しみに!

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