第071話 極振りヒーラー、神射七式・中位解放
第二階層の森の奥、《射撃訓練場》。
ティアは一人、弓を構えていた。
的に向かって矢を放つ。矢は一直線に飛び、的の中心に命中する。
シュッ、シュッ、シュッ!
連続で矢を放つが、全て命中する。完璧な精度だ。
だが、ティアの表情は満足していない。
「……まだ足りない」
ティアが呟く。
弓を下ろし、深く息を吐いた。
《一の矢 速》《二の矢 連》は既に習得している。
だが、それだけでは不十分だ。
もっと上を目指さなければ。
「腕を上げたな、ティア」
背後から声がした。
ティアが振り向くと、銀髪の女性が立っていた。
背中には大きな弓を背負い、凛とした雰囲気を纏っている。
《神弓師範シルフィード》――ティアの弓術の師匠だ。
「師匠……」
ティアが軽く会釈する。
「《一の矢》と《二の矢》、完璧に使いこなしているようだな」
シルフィードが微笑む。
「はい。でも、まだ上があると……」
「その通りだ。神射七式は七つで一つ。まだ道半ばだ」
シルフィードが腕を組む。
「……次の試練を受けさせてください」
ティアが真剣な眼差しで言う。
シルフィードは少し考えてから、頷いた。
「……いいだろう。ついて来い」
【クエスト発生:神射七式・中位の試練】
二人は訓練場の奥へと向かった。
訓練場の特設エリア。
三つの的が、異なる方向に配置されている。
前方、左斜め、右斜め――それぞれ距離も角度も異なる。
「《三の矢 参》は、三方向同時射撃の技だ」
シルフィードが説明する。
「一本の矢では届かぬ場所がある。だが、三本なら全てを捉えられる」
「試練内容は――三体の的を同時に射抜くこと」
「三方向、同時に……」
ティアが的を見る。
それぞれの的は、普通に狙えば一本ずつしか射抜けない。
同時に三本――それには、特殊な技術が必要だ。
ティアは弓を構え、矢を三本番える。
「《三の矢 参》!」
矢を放つ。
だが、矢はバラバラに飛んでいく。
一本は的に当たるが、残り二本は明後日の方向へと飛んでいった。
「……集中が足りない」
ティアが呟く。
もう一度、試す。
今度は意識の向け方を変えてみる。
「矢を同時に放つのではなく……意識を三つに分ける……」
ティアが深呼吸する。魔力を込め、三本の矢に均等に力を配分する。
「《三の矢 参》!」
矢が放たれる。
今度は二本が的に命中した。だが、一本が外れる。
「……あと一歩……」
ティアは諦めない。
もう一度、弓を構える。
目を閉じ、的の位置を頭の中で描く。
前方、左斜め、右斜め――三つの的の位置を、正確にイメージする。
目を開き、弓を引く。
「《三の矢 参》!」
三本の矢が放たれる。
矢は正確に飛び、全ての的に命中した。
【スキル習得:三の矢 参】
「見事だ。次へ進もう」
シルフィードが満足そうに頷く。
広い訓練場。
複数の的が、自動で動き回っている。位置が変化し、予測が難しい。
「《四の矢 雨》は、範囲攻撃の技だ」
シルフィードが説明する。
「矢の雨を降らせ、広範囲の敵を一掃する」
「試練内容は――動き回る的を、矢の雨で全て射抜くこと」
「動く的……普通に狙っても当たらない」
ティアが的を見る。的は不規則に動き、一本ずつ狙うのは非効率だ。
「だからこその範囲攻撃だ」
シルフィードが言う。
ティアは弓を引く。
「《四の矢 雨》!」
だが、何も起きない。矢は普通に飛び、一つの的に当たっただけだ。
「……?」
「まだスキルを習得していないからな。イメージが重要だ」
シルフィードが助言する。
ティアは目を閉じる。
「矢の雨……空から降り注ぐ……」
「指定地点に……魔力を集中させて……」
ティアは弓を天に向ける。魔力を込め、矢を放った。
「《四の矢 雨》!」
矢が空高く飛び、頂点で分裂する。複数の矢が、雨のように降り注いだ。
だが、範囲が狭い。一部の的にしか当たらない。
「……範囲が足りない……」
ティアは再び弓を構える。
「もっと広く……もっと高く……」
魔力を最大まで込める。矢が淡く光り始めた。
「《四の矢 雨》!」
矢が空高く飛び、大きく分裂する。
広範囲に矢の雨が降り注ぎ、動き回る的全てに命中した。
【スキル習得:四の矢 雨】
「良い。最後の試練だ」
シルフィードが言う。
特設障害物コース。
三枚の厚い木の壁が立っている。壁の向こうには、的がある。
「《五の矢 貫》は、貫通射撃の技だ」
シルフィードが説明する。
「どんな障害も貫き、敵を射抜く」
「試練内容は――三枚の壁を貫通し、最奥の的を射抜くこと」
「……三枚の壁を、貫く……」
ティアが壁を見る。厚い木の壁――普通の矢では、一枚すら貫通できない。
ティアは弓を引く。
「《五の矢 貫》!」
矢が放たれる。
だが、一枚目の壁に突き刺さって止まった。貫通しない。
「……貫通しない……」
「力だけでは足りぬ。貫くという意志が必要だ」
シルフィードが言う。
ティアは深く息を吸う。
「貫く……絶対に、貫く……」
弓に魔力を込める。矢が淡く光り始めた。
「《五の矢 貫》!」
矢が放たれる。
一枚目の壁を貫通――
二枚目の壁も貫通――
だが、三枚目で止まった。
「あと一枚……!」
ティアは諦めない。最後の一本、全ての魔力を込める。
「全ての魔力を、矢に込める……」
矢が強く輝く。光が溢れ、周囲を照らした。
「必ず……貫く……!」
「《五の矢 貫》!」
矢が光の筋となって飛ぶ。
一枚目、二枚目、三枚目――
全ての壁を貫通し、最奥の的に命中した。
【スキル習得:五の矢 貫】
「見事だ、ティア。神射七式の中位、全て習得した」
シルフィードが満足そうに笑う。
訓練場の出口。
「《三の矢》《四の矢》《五の矢》、全て完璧だ」
シルフィードが言う。
「ありがとうございます、師匠」
ティアが礼を言う。
「だが、まだ上がある」
「……《六の矢》と《七の矢》ですね」
「その通りだ。特に《七の矢 神降》は、神射七式の極致。簡単には習得できぬ」
シルフィードが真剣な表情で言う。
「……必ず、習得します」
ティアが決意を込めて言う。
「期待しているぞ。次の試練まで、腕を磨いておけ」
シルフィードが背を向け、去っていく。
ティアは一人、訓練場に残された。
「《六の矢》《七の矢》……」
ティアが呟く。
「まだ、道は長い」
「でも、必ず極める」
ティアは弓を握りしめ、前を向いた。
神射七式の頂点を目指して――
ティアの修行は、まだ続く。
次は3/19 21時投稿予定
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