第070話 極振りヒーラー、聖槍を得る
ステラがスキル習得イベントに挑んでいる一方で、
リリアは別の条件を探すため、第二階層の聖堂を訪れた。
普段は静かな聖堂だが、今日は様子が違う。
中が騒がしく、何人かのNPCが慌ただしく動き回っていた。
司祭が、困った様子で立っている。
「どうしたんですか?」
リリアが声をかける。
「ああ、冒険者殿……実は、大変なことになりまして」
司祭が深刻な表情で答える。
「第二階層の森の奥に《邪教徒の祭壇》が出現したのです。
邪悪な儀式が行われていて、このままでは闇の力が世界に広がってしまう」
「邪教徒の祭壇……」
リリアが眉をひそめる。
「聖なる力を持つ者にしか、祭壇を浄化できません。どうか、お願いできませんか?」
「私、行きます!」
リリアは即座に答える。迷いはなかった。
「……ありがとうございます。これを」
司祭が手をかざすと、光がリリアを包み込んだ。
【聖なる祝福を受けました】
【一時的にVIT・INT上昇】
「この祝福が、あなたを守ってくれるでしょう」
リリアは頷き、聖堂を後にした。
第二階層の森。
リリアは森の奥へと進んでいく。
だが、進むにつれて空気が変わり、重く、息苦しくなる。
「……何この空気。息苦しい……」
リリアが呟く。森全体を覆う邪悪なオーラが、肌に感じられる。
さらに奥へ進むと――
黒い衣を纏った人影が現れた。
《邪教徒の信者》だ。五人のグループが、リリアを囲む。
「侵入者だ……」
「排除しろ……」
信者たちが武器を構えた。
「来るなら、来なさい!」
リリアは杖を構える。
信者の一人が襲いかかると――
「《ホーリー・アロー》!」
純白の矢が信者を貫き、光の粒となって消えた。
だが、残りの四人が一斉に襲いかかってくる。
「数が多い……でも!」
リリアは魔力を集中させる。
「《バインド・チャーム》!」
魔導チャームが光り、信者たちの足を拘束する。
動きが鈍った敵に向かって――
「《ホーリー・レイン》!」
頭上から光の矢が雨のように降り注ぐ。
範囲攻撃が信者たちを包み込み、次々と光の粒となって消えていく。
「ふぅ……」
リリアは息を整え、さらに奥へと歩みを進める。
森の最深部。
開けた場所に、巨大な祭壇が立っていた。
黒い石で作られた祭壇は、邪悪なオーラを放っている。
周囲には紫色の霧が立ち込め、不気味な雰囲気を醸し出していた。
「これが……邪教徒の祭壇……」
リリアが呟く。
祭壇に近づこうとしたその時――
闇の中から、巨大な影が現れた。
黒い鎧に身を包んだ、巨大な騎士。
邪悪なオーラを纏い、闇の力を感じさせる存在だ。
《堕落した聖騎士ダークパラディン》
名前が表示される。
「……聖なる力を持つ者か」
ダークパラディンが重い声で言う。
「だが、貴様では私を倒せぬ。闇の力こそが、真の力だ」
ダークパラディンが剣を抜く。黒い剣が、闇を纏って輝いた。
「行きます……!」
リリアは杖を構える。
「《ホーリー・アロー》!」
純白の矢がダークパラディンに向かって飛ぶ――が、相手は素早く剣で弾き飛ばす。
キィン――!
矢が砕け散り、光の粒となって消える。
「くっ……防がれた……!」
リリアが驚く。
ダークパラディンが即座に反撃に転じる。
黒く染まった剣が、唸りを上げてリリアへと振り下ろされた。
「――っ!」
リリアは咄嗟に祈りを込める。
「《ディバイン・シールド》!」
瞬間、神聖な光が盾となって展開された。
ドガァン――!!
重い衝撃音が響き渡り、障壁が大きく揺らぐ。
剣の一撃を受け止めきれず、三重の神聖障壁のうち――一つが砕け散った。
光の欠片が宙に舞い、リリアの表情が引き締まる。
「くっ……重い……!」
リリアが歯を食いしばる。力の差を感じる。
ダークパラディンが再び剣を振るう。
攻撃が激化し、リリアは防戦一方になる。
障壁が次々と砕かれていく。
そして――
「《ダークウェーブ》!」
ダークパラディンが剣を掲げ、闇を解き放つ。
黒い波動が地を這うように広がり、リリアを飲み込んだ。
「くっ……《ディバイン・シールド》!」
リリアは即座に新しい障壁を展開する。
しかし攻撃は止まらない。
闇の圧力が、じわじわと体力を削っていく。
「このままじゃ……!」
リリアのHPが、30%を切る。
ダークパラディンが剣を高く掲げる。
「これで終わりだ……!」
最後の一撃が、リリアに向かって振り下ろされる。
その時――
司祭の声が、リリアの脳裏に響いた。
「聖なる力を信じなさい……!」
「あなたの中に眠る、真の力を……!」
リリアの体が、光り始める。
「……光……?」
杖が輝きを放つ。眩い光が、リリアを包み込んだ。
【スキル習得:セイクリッド・ランス】
「これは……!」
リリアは杖を構え直す。
杖先に、聖なる光が集まり、鋭く形を成した。
「《セイクリッド・ランス》!」
放たれた光の槍が、一直線にダークパラディンを貫く。
「ぐあぁっ……!」
悲鳴とともに、ダークパラディンは大きくよろめき、膝をついた。
確かな手応え――大ダメージだ。
「効いてる……!」
リリアが驚く。
聖属性の攻撃が、闇に堕ちた聖騎士に特効だった。
だが、ダークパラディンは立ち上がる。
激怒した様子で、リリアを睨みつけた。
「……小娘が……!」
ダークパラディンが全力の闇の力を解放する。
「《ダークネス・フィールド》!」
周囲が闇に包まれる。
視界が遮られ、リリアのHPが持続的に削られ始めた。
「くっ……息が……!」
リリアが苦しそうに呟く。
闇のフィールドが、生命力を奪っていく。
「このままじゃ……負ける……!」
リリアは必死に考える。どうすれば、この闇を払えるのか。
「もっと……強い力が必要……!」
リリアが杖を高く掲げる。聖なる力を、全身に集中させた。
「聖なる力よ……私に……!」
その瞬間――
リリアの体が、さらに強く輝き始めた。
【スキル習得:ホーリー・エクスプロージョン】
「《ホーリー・エクスプロージョン》!」
リリアを中心に、爆発的な聖なる光が放たれる。
光が闇のフィールドを浄化し、ダークパラディンを包み込んだ。
「これは……聖なる……力……」
ダークパラディンの声が、どこか安堵したように聞こえる。
光の中で、ダークパラディンの黒い鎧が砕けていく。
鎧の中から、元の聖騎士の姿が現れた。
「……ありがとう……浄化してくれて……」
聖騎士が微笑み、光となって消える。
静寂が、戻る。
「……終わった……」
リリアが膝をつく。疲労で、体が重い。
そして、祭壇へと向かう。
「これを……浄化しないと……」
リリアが杖を祭壇に向ける。
「《セイクリッド・ランス》!」
聖なる光の槍が、祭壇を包み込む。
祭壇が崩れ始め、邪悪なオーラが消えていく。
やがて、祭壇は完全に崩壊した。
「……終わった……」
リリアが安堵の息を吐く。
「よくやりました、冒険者殿」
司祭がテレポートで到着する。
「あなたは真の聖騎士の力に目覚めたのです」
「聖騎士の……力……?」
「ええ。これからも、その力で人々を守ってください」
司祭は穏やかに微笑んだ。
リリアは静かに頷き、村へと戻る。
ハネリ村。
夜の灯りに照らされながら、リリアは手にした杖を見つめた。
「新しいスキル……か」
小さく呟き、そっと握りしめる。
「これで、もっとみんなを守れる」
その表情に、柔らかな笑みが浮かんだ。
「次のイベントも、頑張らないと」
「――みんなを守るために」
胸の奥で、確かな決意が形を成す。
リリアは前を向き、静かに歩き出した。
次は3/18 21時投稿予定
お楽しみに!




