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死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


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第068話 極振りヒーラー、生産職のクエスト2

遺跡の最深部に辿り着くと、景色が一変した。


広大な空間に、巨大な工房が広がっている。

天井は高く、壁一面には古代の武器や防具の設計図が刻まれていた。

精密な図面、複雑な構造――現代では再現できないような、高度な技術が記されている。


「これ……すごい技術……」


ノエルが息を呑む。壁に近づき、設計図を一つ一つ見ていく。

剣、鎧、盾――どれも美しく、機能的だ。


工房の中央には、《魔導炉》がある。巨大な炉が、まだ微かに光を放っていた。

赤い光が脈打つように明滅し、かつての力を感じさせる。


「ここ、本当に工房なんだ……昔の職人が使ってたのかな」


ノエルが呟く。工房の雰囲気に圧倒され、足を止める。

設計図を一つ一つ見ながら、ノエルは感動していた。

細部まで計算された構造、バランスの取れたデザイン――全てが完璧だ。


「いつか、こんな風に作れるようになりたいな……」


ノエルが小さく呟く。憧れと尊敬が、胸に満ちていく。

工房の奥には、素材が置かれている。

古代の金属、宝石、布――どれも貴重なものばかりだ。

ノエルは慎重に素材を集め始める。一つ一つ丁寧に手に取り、アイテム欄に収めていく。


その時――


ゴゴゴゴゴ……


地鳴りが響いた。

工房の中央で、魔導炉が激しく光り始める。

炉から光が溢れ出し、周囲を照らした。


そして――

炉の前に、巨大な機械が現れた。

歯車とパーツで構成された、巨大なロボット。

全身が金属で覆われ、関節部分には古びた歯車が噛み合っている。


《古代守護機械ギアコロッサス》


名前が、システムウィンドウに表示された。


「え、ちょ、ボス!? 嘘だろ……!」


ノエルが思わず声を上げた。

予想外の展開に、背筋がひやりと冷える。


ギアコロッサスが唸りを上げ、腕を大きく振り上げた。

次の瞬間――


巨大な拳が、ノエルめがけて振り下ろされる。


「うわっ!」


ノエルは反射的に横へと跳ぶ。

直後、拳が地面に叩きつけられ、石畳が爆ぜるように砕け散った。


破片が舞い、衝撃が足元を揺らす。


「まともに戦えるか……!」


ノエルは大剣を構えた。

まずは攻撃してみなければ、始まらない。


「《ブレイクスラッシュ》!」


大剣を振り抜き、ギアコロッサスの胴体へ斬りかかる。

金属系に特効を持つ一撃が、重厚な装甲へと直撃した。


ガキンッ――!


甲高い金属音が響く。

だが、手応えはあまりにも薄い。

HPバーが、ほんのわずかに減っただけだった。


「……効かない……!?」


ノエルは歯を食いしばり、間髪入れずに次の攻撃へ移る。


「《クレセント・ウェイブ》!」


半月状の衝撃波が放たれ、ギアコロッサスを正面から捉える。

しかし――


衝撃は弾かれるように散り、与えたダメージは微々たるものだった。


「そんな……!」


さらに踏み込み、最後の一撃を叩き込む。


「《タワースイング》!」


大剣を大きく振り上げ、縦に叩きつける。

狙いは腕部――だが、

鈍い音を立てただけで、装甲には傷一つ残らなかった。


「……硬すぎる……」


ノエルは一歩引き、息を整える。

攻撃は通らない。

真正面からの戦闘では、勝ち目が見えなかった。


「どうしよう……攻撃、全然効かない……!」


ノエルは逃げながら、ギアコロッサスの動きを観察する。

腕を振り下ろす、足を踏み出す、体を回転させる――パターンを読み取ろうとする。


その時――


「あれ……?」


ノエルは気づいた。

ギアコロッサスの関節部分――そこだけ、赤茶色の錆が浮いている。

歯車同士が噛み合う箇所に、明らかな劣化が見て取れた。


「関節が……錆びてる?」


その瞬間、ノエルの脳裏に一つの考えが閃く。

視線を巡らせると、工房の壁にそれはあった。

《古代のハンマー》――鍛冶職が使う、巨大な鍛錬用の道具。


「これなら……!」


ノエルはハンマーを掴み、ギアコロッサスへと駆け出した。

巨大な腕が振り下ろされる。

ノエルは間一髪でかわし、その懐へと飛び込む。


狙いは――関節。


「《ブレイクスラッシュ》!」


古代のハンマーを振り抜き、錆びた歯車を叩きつける。

金属に特効の一撃が、劣化した関節に直撃した。


ガキンッ!


歯車が軋み、噛み合わせがわずかにずれる。

与えたダメージは小さい――だが。


「……効いてる!」


確かな手応えが、ノエルの腕に残っていた。


ノエルは続けて攻撃を仕掛ける。

ハンマーを振り上げ、関節部分を叩いた。


ドガン、ドガン、ドガン!


何度も叩くたびに、歯車がずれていく。

ギアコロッサスの動きが、少しずつ鈍くなった。

だが――


ギアコロッサスが怒ったように、攻撃を激化させる。

両腕を振り回し、ノエルを追い詰めようとする。


「くっ……!」


ノエルは後退するが、壁に追い詰められた。逃げ場がない。


「このままじゃ……!」


その時――

ノエルの視界に、魔導炉が映った。まだ光を放っている、巨大な炉。


「魔導炉……エネルギーを使えば……!」


ノエルは工房の設計図を思い出す。

壁に刻まれていた図面の中に、魔導炉の使い方が記されていた。

炉を再起動させれば、エネルギーを解放できる。


ノエルは魔導炉に駆け寄る。炉の前に操作盤があり、古代文字が並んでいた。


「これを……こうして……!」


ノエルは操作盤に飛びつき、手探りでレバーを引いた。

次の瞬間――魔導炉が激しく輝き出す。


炉の内部でエネルギーが渦を巻き、

抑えきれない力が、今にも溢れ出そうとしていた。


「これで……どうだぁ!」


ノエルがレバーを最大まで引く。

炉から、光が溢れ出した。

眩い光が工房を満たし、ギアコロッサスを包み込む。

光がギアコロッサスの体を侵食し、動きを鈍らせた。


【弱体化:動作速度低下】

【弱体化:防御力低下】


「よし……これなら戦える……!」


ノエルは大剣を構え、ギアコロッサスに向かって駆ける。

ギアコロッサスが腕を振り下ろしてくる。だが、弱体化した今なら――


「避けられる!」


ノエルは横に跳び、攻撃を回避する。そのまま関節部分に接近した。


「《ブレイクスラッシュ》!」


大剣を振り、関節部分に叩き込む。

今度はしっかりとダメージが入り、歯車が砕けた。

ギアコロッサスが怯む。その隙に、ノエルは追撃する。


「《クレセント・ウェイブ》!」


半月状の衝撃波が、ギアコロッサスの胴体に直撃する。

装甲が削れ、内部の歯車が露出した。


「もっと……!」


ノエルは攻撃を続ける。

ギアコロッサスが反撃しようと腕を振るが、動きが鈍い。


「《タワースイング》!」


大剣を縦に振り抜く。

斬撃が走り、ギアコロッサスの腕が切断された。


ドンッ――

金属の塊が地面に落ち、砕ける音が工房に響く。


片腕を失ったギアコロッサスは、体勢を崩しながらも踏みとどまった。

まだ、止まらない。


残された腕が動く。

巨大な手が伸び、ノエルを掴み取ろうと迫ってきた。


「させない!」


ノエルは《ブレイクスラッシュ》で腕を斬りつける。

腕が止まり、ノエルを掴めない。


「最後だ……!」


ノエルは全力で大剣を振り上げる。そして――


「《ブレイクスラッシュ》!」


大剣が、ギアコロッサスの中枢――胴体の中央に叩き込まれた。


ガシャンッ!


内部で歯車が砕ける音が響き、ギアコロッサスの動きが完全に止まった。

全身を巡っていた光が弱まり、巨体はゆっくりと崩れ落ちていく。


そして――

その姿は、無数の光の粒となって霧散した。


……静寂が、工房に戻る。


「……勝った……? 勝ったぁ!」


ノエルが叫ぶ。疲労で膝をつくが、顔には笑顔が浮かんでいた。


その時――

システムメッセージが表示された。


【スキル習得:鍛錬】


「やった……!」


ノエルの目が、思わず輝いた。

視界に浮かんだスキルウィンドウへと、食い入るように視線を向ける。

《鍛錬》:装備を強化できる。素材と時間が必要。強化段階は最大Ⅹまで。


「これで、もっといい装備が作れる……!」


ノエルが、嬉しそうに呟く。

その直後――


工房の中央に、光が集まり始めた。

見覚えのない演出だ。


「……あれ?」


淡い光が形を成し、宝箱が出現する。

ダンジョン情報には、そんな報酬は載っていなかったはずだ。


ノエルは一瞬だけ戸惑い、それから慎重に近づく。

宝箱の蓋を、そっと開けた。


中には、ひと揃いの装備セットが収められていた。


《匠の証》――生産職専用のユニーク装備だ。

眼鏡、作業着、手袋、ベルト、ブーツ――五つの装備が、美しく並んでいる。


《ユニークシリーズ》


各ダンジョンを初回かつ単独で攻略した者にのみ授与される特別報酬。

世界に同名の装備は存在せず、破壊・譲渡は不可能。


《匠の証》シリーズ

《匠の眼鏡》(頭)


効果:

・素材の品質を視覚的に判別できる

・生産時のクリティカル率 +10%

・【DEX+15】【INT+10】


説明:

数多の素材を見極めてきた匠の視点を宿す眼鏡。

そのレンズ越しに見えるのは、表面ではなく“本質”である。


《匠の作業着》(体)


効果:

・生産中の疲労度減少

・素材スロット +10

・【VIT+15】【STR+10】


説明:

長時間の鍛錬を想定して作られた堅牢な作業着。

身体への負担を和らげ、集中力を最後まで保たせる。


《匠の手袋》(右手)


効果:

・生産成功率 +15%

・生産時間 -10%

・【DEX+20】【LUK+10】


説明:

精密な作業を可能にする特製の手袋。

指先の感覚が研ぎ澄まされ、偶然すら味方につける。


《匠のベルト》(足)


効果:

・ツール(ハンマー、ナイフなど)をベルトに装着可能

・生産中の転倒・中断耐性 +50%

・【STR+12】【VIT+8】


説明:

実戦を想定した多機能ベルト。

必要な道具を即座に取り出せる構造が、作業の流れを途切れさせない。


《匠のブーツ》(靴)


効果:

・不安定な場所での作業ペナルティ無効

・【AGI+12】【DEX+8】


説明:

足場を選ばず立ち続けるための作業靴。

揺れる床や崩れかけの地面でも、匠の姿勢は決して崩れない。


セット効果:《伝説の匠》


・生産経験値 +10%

・フィールド上でも簡易的な工房を呼び出して使用可能

・生産時、極稀に【傑作品】が完成


説明:

全てを身に着けた時、名もなき職人は“伝説”へと至る。

その手が生み出すものは、やがて世界に名を刻むだろう。


「これ……すごい……!」


ノエルは、しばらくその場に立ち尽くしていた。

一つひとつを目に焼き付けるように見渡し、工房の設計図を、可能な限り記録していく。


この構造、この発想、この工程――

知識として持ち帰れば、きっと今までとは違うものが作れる。


「……これで、もっといいものが作れる……!」


やがて工房を後にし、遺跡の出口へと向かう。

背後で、古代の工房は静かに沈黙したままだ。


――だが、その技術は、確かに受け継がれた。





ギルドホームに戻ると、談話室には全員が揃っていた。


「ノエルさん、おかえり」


ステラが、いつもの柔らかな笑顔で迎える。


「おかえりなさい。……あら?」

リリアがノエルを一目見て、視線を巡らせた。


「装備、変わったわね」

「うん。新しい装備、手に入れたんだ」


ノエルは少し照れくさそうに答える。


「似合ってるじゃない。眼鏡、いい感じよ」


リリアが微笑む。


「職人感すごいですね」


ヒマワリが小さく拍手する。


「ありがとう……」

ノエルも、自然と笑顔になった。


その時、少し離れた場所で腕を組んでいたティアが、淡々と口を開く。


「……その行動、合理性に欠けます」

冷静な視線が、ノエルを捉える。

「ですが……生存率は、ゼロではありませんね」


「え、そこ!?」

ヒマワリが即ツッコミを入れる。


ティアは小さくため息をついた。


「はぁ……命が安い人ほど、無茶をしたがるんですから」

そう言いながらも、視線は装備に向いている。

「……ただ、その装備。性能は、かなり優秀です」


「ほら、ちゃんと褒めてるじゃない」

リリアがくすっと笑う。


「勘違いしないでください」

ティアは即座に言い返す。

「評価しただけです。助けたのは“効率的”だったからです」


ノエルは一瞬きょとんとした後、少しだけ照れたように笑った。


「それでも……ありがとう、ティア」


「……礼を言われる筋合いはありません」

そっぽを向くが、否定はしなかった。


そしてノエルは、少し真剣な表情になる。


「それに……《鍛錬》も手に入れた」

声に、確かな力が宿る。

「これで、みんなにもっといい装備を作れる」


「楽しみにしてるわ」

リリアが期待を込めて頷く。


「最高の装備だね!」

ステラも笑顔で言う。


ティアは一拍置いてから、短く告げた。


「……戦力向上は、ギルド全体の効率を上げます。悪くありません」


「つまり、期待してるってことだよね?」

ステラがニヤッとする。


「……解釈は、任せます」


温かな空気が、談話室に満ちていく。


こうして――

ノエルの新たな一歩は、仲間たちに見守られながら、確かに始まった。

次は3/16 21時投稿予定

お楽しみに!

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