第067話 極振りヒーラー、生産職のクエスト1
ハネリ村の中心、掲示板前。
アップデート告知が掲示され、多くのプレイヤーが集まっていた。
特に目立つのは、生産職のプレイヤーたち。
鍛冶職、錬金術師、料理人――様々な生産職が、掲示板を囲んでいる。
ノエルもその中の一人だった。
掲示板には、大きな文字で告知が書かれている。
【新ダンジョン追加:古代工房遺跡】
第二階層に、生産職向けの新ダンジョンが追加されました。
クリア報酬:スキル《鍛錬》習得
「《鍛錬》……」
ノエルが呟く。
《鍛錬》は、装備を強化できるスキルだ。
武器や防具の性能を引き上げ、より強力なものへと変えることができる。
生産職にとって、喉から手が出るほど欲しいスキルだった。
周囲の生産職プレイヤーたちも、興奮気味に話している。
「《鍛錬》、絶対欲しいよね」
「でも生産職専用ダンジョンって、戦闘どうするの?」
「パーティー組んで行くしかないでしょ。戦闘職に守ってもらわないと」
「そうだよね。じゃあ、うちのギルドで固めて行こうか」
複数の生産職プレイヤーたちが、パーティーを組んで出発していく。
戦闘職と生産職が混在したバランスの良いパーティーだ。
ノエルは、一人掲示板を見つめていた。
リリアは今日、ログインしていない。リアルで用事があるらしい。
ステラとヒマワリも、別のクエストに向かっている。
「……一人か」
周りの生産職たちが、楽しそうにパーティーで出発していく姿を見ると、少し寂しくなる。
だが――
「自分の作った装備を、もっと先へ進めたい…《鍛錬》、欲しいな……」
生産職は、戦闘に向いていない。
戦闘用のスキルを持っていることが少なく、パーティーを組んで素材を集めるのが一般的だ。
戦闘職に守ってもらいながら、安全に素材を採取する――それが、生産職の基本スタイルだった。
だが、ノエルは違った。
ソロでも活動できるように、いくつかの戦闘スキルを習得していた。
《ブレイクスラッシュ》《タワースイング》《クレセント・ウェイブ》――大剣を使った攻撃スキルだ。
それでも、戦闘職に比べれば圧倒的に弱い。攻撃力も低く、防御力も高くない。
そして、生産職のメインウェポンは攻撃用の生産アイテムだ。
爆弾、毒薬、罠――事前に作っておいたアイテムを使って戦う。
だが、持てるアイテムには限りがある。尽きると、何もできなくなる。
生産職は、戦闘に厳しい。
それでも情熱を注ぎ込める人だけが、生産職を選ぶのだ。
ノエルは決意を固めた。
「……行ってみようかな。ソロでも、何とかなるかも」
ノエルは大剣を背負い直し、古代工房遺跡へと向かった。
第二階層の奥地、山岳地帯。
岩肌が露出した険しい山道を進むと、古代遺跡が姿を現した。
石造りの巨大な門が、静かに佇んでいる。
門には、古代文字で刻まれている。
『技を極めし者のみ、この門をくぐるべし』
「技を極めし者……か」
ノエルが呟く。
周囲には、他の生産職パーティーの姿も見える。
戦闘職と生産職が混在し、準備を整えている。
「みんな、パーティーで来てるんだ……」
ノエルは少し不安になる。
一人で大丈夫だろうか。
だが、ここまで来た以上、引き返すわけにはいかない。
「よし……行こう」
ノエルは勇気を出して、門をくぐった。
遺跡の内部は、薄暗い洞窟になっていた。
壁には鉱脈が走り、淡く光っている。
見たこともないような、美しい鉱石だ。
「おぁ……」
ノエルが思わず声を上げる。
《影鉄》《導魔鉱》《星鉄》――どれも2階層で入手できる高級素材だ。
市場に出回ることは滅多にない、レア中のレア。
「こんなレア素材、初めて見た……!」
ノエルは興奮しながら、採掘を始める。
つるはしを取り出し、鉱脈を叩いた。
カンッ、カンッ、カンッ!
鉱石が少しずつ剥がれていく。
手応えがあり、確実に採掘できている。
その時――
ゴゴゴゴゴ……
地鳴りが響いた。
洞窟の奥から、巨大な影が現れる。
岩で形作られた、巨人のようなモンスターだ。
《ロックゴーレム》
「来た……!」
ノエルは即座に大剣を構える。
「採れたら逃げる……!」
ノエルは素早く鉱石を採掘し、ゴーレムから距離を取る。
ゴーレムが拳を振り下ろすが、既にノエルはその場にいない。
「動きが遅い……タイミングを合わせれば……!」
ノエルはゴーレムの攻撃パターンを観察する。
拳を振り下ろした後、次の攻撃までに数秒のラグがある。
その隙を突けば、採掘できる。
ゴーレムが拳を振り下ろす。
ドガァン!
地面が砕け、衝撃が走る。
その隙に、ノエルは再び鉱脈へと駆け寄る。
カンッ、カンッ!
素早く採掘し、鉱石を手に入れた。
ゴーレムが再び拳を振り上げる。
ノエルは即座に後退し、攻撃を回避する。
「よし……何とか、採れた……!」
アイテム欄を確認すると、《影鉄》《導魔鉱》《星鉄》が手に入っていた。
「次のエリアに行こう」
ノエルは洞窟を抜け、次のエリアへと進んだ。
遺跡の中庭に出ると、景色が一変した。
色とりどりの植物が生い茂り、まるで秘密の庭園のようだ。
月の光を思わせる白い草、太陽のように輝く黄色い花、生命力に満ちた緑の蔦――どれも美しく、神秘的だった。
「これ、高級ポーションが作れる素材……!」
ノエルが目を輝かせる。
《月光草》《太陽花》《生命の蔦》――どれも、最高級の回復ポーションや強化ポーションの材料になる。
ノエルは慎重に採取を始める。植物を傷つけないよう、丁寧に根元から切り取った。
その時――
ズルズル……
不気味な音が聞こえた。
足元から、植物のようなモンスターが現れる。
緑色の蔦が絡み合い、人型を形成している。
《ポイズンプラント》
「うわっ!」
ノエルが後退する。
ポイズンプラントが蔦を伸ばし、ノエルに襲いかかる。
蔦がノエルの腕に絡みつき、引き寄せようとした。
「くっ……!」
ノエルは大剣を振り、蔦を切断する。
「《ブレイクスラッシュ》!」
大剣が光り、鉱物系に特効の斬撃が放たれる。だが、ポイズンプラントは植物系――効果は薄い。
「効きにくい……!」
ポイズンプラントが口を開き、毒の胞子を吐き出す。胞子がノエルを包み込み、体に染み込んでいく。
【状態異常:毒】
「痛っ……!」
HPがじわじわと減り始める。
毒のダメージが、体力を奪っていく。
ノエルは慌ててアイテム欄を開き、解毒ポーションを取り出す。
自分で作った、自作のポーションだ。
「自分で作ったポーションが、こんなところで役に立つなんて……」
ノエルはポーションを一気に飲み干す。
苦い味が口の中に広がり、毒が解除された。
【状態異常:毒 解除】
「ふぅ……」
ノエルは大きく息を吐く。
ポイズンプラントが再び襲いかかってくる。
蔦を伸ばし、ノエルを縛ろうとする。
「させない……!」
ノエルは大剣を縦に振り抜く。
「《タワースイング》!」
大剣が弧を描き、ポイズンプラントの蔦を切断する。
蔦が地面に落ち、動かなくなった。
「《クレセント・ウェイブ》!」
続けて、半月状の衝撃波を放つ。
衝撃波がポイズンプラントの本体に直撃し、ダメージを与えた。
ポイズンプラントが怯む。
その隙に、ノエルは再び攻撃を仕掛ける。
「もう一発……!」
大剣を振り下ろし、ポイズンプラントの体を両断する。
ポイズンプラントが悲鳴を上げ、光の粒となって消えた。
「ふぅ……」
ノエルは肩で息をする。
戦闘職に比べれば、圧倒的に時間がかかる。だが、何とか倒せた。
「痛いけど……こんなチャンス、二度とないかも……!」
ノエルは再び採取を始める。
《月光草》《太陽花》《生命の蔦》を丁寧に採取し、アイテム欄に収めた。
「よし……次のエリアに行こう」
ノエルは決意を固め、遺跡の奥へと進んだ。
生産職として、《鍛錬》を手に入れるために――
次は3/15 21時投稿予定
お楽しみに!




