表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ぬのが怖いので、不人気の回復職を選びました。  作者: s-rush


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/115

第102話 極振りヒーラー、最強ギルドとの闘い1

【星天の翼】の拠点では、束の間の休息が訪れていた。

洞窟の奥では焚き火が静かに揺らめき、赤い光が岩肌を照らしている。

戦いで強張った身体を、その温もりがゆっくりと解きほぐしていた。


「午後は……何も起きなければいいね」


そう言って微笑んだのはルナだった。軽い調子とは裏腹に、その視線は周囲を油断なく見渡している。


「襲撃があっても、全員揃ってるから大丈夫だよ」


ノエルはそう答えながら、大剣の刃に布を走らせる。金属がかすかに鳴り、磨き上げられた刃が焚き火の光を反射した。


その時だった。


ティアの表情が、はっきりと強張った。

弓を握る手に力がこもり、弦がわずかに軋む。


「……誰か来ます。複数です」

「敵?」


ヒマワリが即座に剣に手をかける。

バルトが入口に立つ。重装備の体が入口を塞ぐように構える。


焚き火が爆ぜ、小さな火の粉が舞った。


「来るぞ……」



洞窟の入口に、五つの影が現れる。

レヴィン、ミラージュ、アルベルト、ジン、フェリシアだ。


【流星の覇者】――その名を冠する五人の幹部が、静かに洞窟を見据えていた。

全員が武器を携え、隠そうともしない殺気を纏っている。その圧だけで、空気が張り詰めた。


ステラが《プロテス》を全員に付与し、防御力を底上げした。


「幹部が全員……」

ティアが冷静に状況を分析する。五人全員が揃っているということは、本気で襲撃に来たということだ。



「どうして……?」


ステラの声には、隠しきれない不安が滲んでいた。


「……前に一度、やり合ったよな。今度は借りを返しに来た」

ミラージュが短剣を構える。夜間の奇襲で撃破されたことを、まだ覚えている。


「小規模ギルドで唯一ここまで残った。その実力、改めて確かめさせてもらう」

レヴィンが剣を抜く。静かだが、圧倒的な存在感がある。


「来るなら来い! ここは通さないよ!」

ノエルが大剣を構える。


「いいだろう。始めようか」

レヴィンが静かに言った。その瞬間、五人が同時に動き出す。




「《剛力》《迅速》《魔力増幅》!」

フェリシアが【流星の覇者】のメンバーにバフを付与する。

五人の全身が光に包まれ、ステータスが大幅に上昇した。攻撃力、速度、魔力が跳ね上がる。


「まずい……強化された!」


ヒマワリの声に焦りが混じる。


「負けないよ!」


「《プロテス》《剛力》《迅速》《魔力増幅》《星の巡り》――」


さらに一歩踏み込み、優しい光を解き放つ。


「《慈愛の抱擁》」


淡い輝きが波紋のように広がり、【星天の翼】の全員を包み込んだ。

強化効果が範囲内の仲間すべてに行き渡り、身体の芯から力が満ちていくのが分かる。


洞窟は眩い光に満たされ、

両陣営は互いに最大限まで強化された状態で、真正面から対峙した。


「《ライトニングチェイン》!」


フェリシアが攻勢へ出る。

放たれた雷が一本の線となって走り、次々と標的を変えながら連鎖していく。


「っ――!」


雷撃は前線をすり抜け、後衛へと跳ねた。


「きゃっ!」


ルナが悲鳴を上げ、リリアも同時に被弾する。

身体を駆け抜ける痺れに、足元が揺らいだ。


「《フレア》!」


続けざまに放たれた火属性魔法が、小規模な爆発を起こす。

前衛のノエルとバルトが直撃を受け、爆風が周囲へと広がった。


「くっ……!」


バルトは盾を構え、衝撃を正面から受け止める。

地面に足を食い込ませ、後退だけは免れた。


「回復します」


フェリシアは間髪入れずに回復魔法を展開する。

両陣営に支援役がいる。長期戦になる予感がした。


ステラは一瞬だけ呼吸を整え、次の手を打つ。


「《ヒール》《ハイヒール》《リジェネ》《再生の祝炎》」


四つの回復スキルが重なり合い、共鳴する。

その中心で、光が結晶化した。


――リストア・ヴェール。


持続回復とダメージ軽減の複合バリアが全員を包み込む。

淡い光の膜が、【星天の翼】のメンバー全員を守った。


「これで……守れる……」


ステラの呟きは、祈りのように静かだった。





「《ナイトステップ》」


ミラージュの姿が、音もなく掻き消えた。


――速い。


そう認識した瞬間には、すでに背後だ。

空間を跳ぶように出現したミラージュが、ヒマワリの死角から短剣を振るう。


「っ……!」


ヒマワリは反射的に振り向き、剣で受け止めた。

甲高い金属音が洞窟に響き、火花が散る。


「速い……!」

「《シャドウスラッシュ》」


ミラージュが間髪入れず、連続斬撃を叩き込む。

短剣が閃き、ヒマワリを襲った。


ヒマワリが《ソニック・ブレイク》で迎撃する。

素早く二連撃を繰り出す。剣と短剣が激突し、火花が散った。両者の速度は互角だ。


「《スプリットダガー》」


短剣が二度突き出される。

一撃目がヒマワリの剣を弾き、二撃目が隙を突いた。


「《陽炎》!」


ヒマワリの足元から揺らぎが広がる。

視界が歪み、虚像が生まれ、敵の命中精度を狂わせるスキルだ。


――だが。


しかしミラージュは動じない。虚像を見破り、本体に狙いを定める。

短剣がヒマワリの肩を掠めた。


「くっ……!」


初めての被弾。

ダメージエフェクトが、血飛沫のように弾ける。


「ヒマワリちゃんがダメージを受けたところ、初めて見た……」


ステラの声が震える。

ヒマワリはこれまで、すべてを回避してきた。それが、初めて崩れた瞬間だった。


「バルトさん、十秒だけ時間を稼いで」


ヒマワリは一瞬でインベントリを操作する。

光の粒子が集束し、もう一本の剣が顕現した。


――ギルドメンバー以外には、決して見せてこなかった切り札。


二刀流。


右手に、左手に、新たな剣が握られる。


「……本気、出すよ」


ヒマワリが二刀流の構えを取る。左右の剣が交差し、風と雷の光を纏う。


「面白い」


ミラージュの口元が、わずかに吊り上がる。


「こっちも本気で行く」


両手に短剣を構え直し、同じく二刀流の姿勢を取った。


二人が再び激突する。剣と短剣が乱舞し、火花が散る。

四本の刃が空中で交錯し、金属音が連続して響いた。


互角の勝負だった。


「《サンダーラッシュ》!」


右、左――片手ずつ叩き込まれる雷撃の三連撃、合計六連の斬撃が、雷光となって走った。


「《シャドウスラッシュ》!」


ミラージュもまた、影の斬撃で応戦する。


雷と影が正面衝突し、視界が白く弾けた。

その速度は、もはや目で追えるものではない。






「《グランドスラッシュ》!」


アルベルトの大剣が、地を薙ぐように横一線へと振るわれた。

刃そのものが届くより先に、圧縮された衝撃波が解き放たれる。


バルトとノエルが同時に構え、盾と大剣で受け止める。

だが、威力が桁違いだった。


二人の身体は弾き飛ばされ、地面を削りながら後退する。

重装のバルトですら、足を止めきれない。


「二人がかりでも……まだ足りないな」


アルベルトは息一つ乱さず、冷静に言い放つ。

巨漢の戦士は余裕の表情で、倒れ伏す寸前の二人を見下ろしていた。


「任せろ。俺が、全部受け止める」


バルトが前に出る。

盾を構え、重心を落とし、真正面から踏み込んだ。


「《シールドバッシュ》!」


渾身の一撃。

盾が唸りを上げ、スタン効果を伴って叩き込まれる。


――だが。


アルベルトは大剣を縦に構え、そのまま受け止めた。

盾と大剣が衝突し、鈍く重い音が洞窟に響く。


次の瞬間、押し返されたのはバルトだった。


「くっ……!」

「《ブレイクスラッシュ》!」


横合いから、ノエルが踏み込む。

鉱物系・装甲系に特効を持つ一撃。

大剣の刃が、アルベルトの脇腹を正確に狙った。


「《アースブレイク》!」


アルベルトは攻撃を迎え撃つように、大剣を地面へと叩きつける。

地面が砕け、衝撃波と共に範囲ダメージとスタン効果が広がった。

足場が崩れ、二人の身体が大きく揺らぐ。


バルトとノエルは踏みとどまろうとするが、完全には防ぎきれない。

じわじわと、押され始めていた。


「《カウンターシールド》!」


バルトが盾で攻撃を受けた際、反撃を発動する。

しかしアルベルトの防御力が高く、ダメージが通りにくい。


「《クレセント・ウェイブ》!」


ノエルが大剣の軌道に沿って半月状の衝撃波を放つ。

衝撃波がアルベルトを襲うが、アルベルトが《ヘヴィスマッシュ》で相殺した。


「……力が足りない」


アルベルトは淡々と告げる。

その一言が、二人の前に立ちはだかる“絶対的な壁”を、はっきりと示していた。






「《スナイプモード》」


ジンが射程距離を大幅に延長する。弓の照準が研ぎ澄まされ、遠距離からでも正確に狙える。


「《ピアシングショット》」


ジンが単体に高威力の矢を放つ。矢が一直線に飛び、ティアを狙った。


「《五の矢 貫》」


ティアが貫通射撃で反撃する。矢が飛び、ジンの矢と空中で激突した。


「《クイッククロス》」


ジンが二連射する。ティアの迎撃の矢が、空中で叩き落とされる。


「《トリプルボルト》」


さらに三本。

同時発射された矢が扇状に広がり、範囲ごと敵を捉える。


「――《一の矢 速》!」


ティアは速射に切り替え、迎撃に集中する。

だが、三本すべてを防ぎきることはできなかった。


一本が、肩を掠める。


「くっ……!」


ダメージエフェクトが弾け、ティアは距離を取るために後退した。


「《四の矢 雨》」


ティアが指定地点に矢の雨を降らせる。

ジンの周囲に無数の矢が降り注ぐが、冷静に回避する。

高いAGIで矢の雨をかわし、反撃の機会を窺った。




「《超加速》」


レヴィンの全身が眩く光り、空気を切り裂く音が一段低くなる。

次の瞬間、その姿は残像すら残さず前へと跳んだ。


「《流星の突貫》!」


流星が地を駆ける。

一直線――狙いは、後衛の要であるステラ。


剣が振り上げられ、殺気が洞窟を貫いた。


「させない!」


ヒマワリが《加速》で割り込もうとする。

だが、その進路に影が滑り込んだ。


「邪魔させないよ」


ミラージュの短剣が閃き、牽制の刃がヒマワリを止める。

一瞬の足止め――それで十分だった。


「《三の矢 参》!」


ティアが三方向同時射撃で迎撃する。

三本の矢がレヴィンを狙うが、レヴィンが《超加速》の速度で回避する。


「《マルチ・ディバイン・シールド》!」


WIS依存の神聖障壁が三つ展開されたが、レヴィンの一撃で全て砕け散った。


「ここは通さない!」


バルトが間に入り、盾で受け止める。

しかしレヴィンの威力は凄まじく、バルトが押される。


「《流星の連撃》」


レヴィンが流星の軌跡を描く連続攻撃を放つ。

剣が何度もバルトの盾を叩き、火花が散った。

バルトが必死に防御するが、徐々に押される。盾に亀裂が入り始めた。


「《アイアンウォール》!」


バルトが受けるダメージを大幅に軽減する。しかしレヴィンの攻撃は止まらない。




ヒマワリとミラージュは、なおも互角の攻防を続けていた。

二刀流対二刀流――剣と短剣が空中で何度も交錯し、火花が散る。

技術、反応、読み合い。どれ一つとして、簡単に優劣はつかない。


だが――


バルトとノエルは、アルベルトを押し返しきれずにいた。

二人がかりでも、圧倒的なSTRの差が埋まらない。

一撃一撃が重く、盾と大剣の上からでも体力を削られていく。


遠距離では、ティアとジンが互いに一歩も譲らない。

放たれた矢は空中でぶつかり合い、砕け散る。

精度も判断も、完全に拮抗していた。


ルナとリリアがフェリシアと魔法合戦を繰り広げる。

ルナが《マジックブースト》で《サンダーボルト》を放ち、リリアが《ホーリー・アロー》で援護する。

フェリシアが《リフレクトシールド》で防御し、《フロストバースト》で反撃した。


ソルが《ラッキーストライク》で敵を狙うが、フェリシアの《リフレクトシールド》で反射された。


「くっ……」


攻撃がそのまま自分に返り、ソルは後退を余儀なくされた。


――均衡しているようで、確実に消耗している。


それを、レヴィンは見逃さなかった。


「このままでは時間がかかる。本気で行くぞ」


短いが、決定的な判断。


「ああ」

ミラージュが即答する。


「了解」

アルベルトが大剣を握り直す。


「狙いは外さない」

ジンが弓を引き絞る。


「支援します」

フェリシアが詠唱を開始した。


――五人が、同時に“切り札”へと踏み込む。


「《流星の一閃》」


レヴィンが流星のように高速で斬る。

剣が光の軌跡を描き、ティアに向かって一直線に突進した。

レヴィンの剣がティアの腕を切り裂く。


「くっ……!」


ステラが《ハイヒール》で回復するが、追いつかない。レヴィンの攻撃が速すぎる。


「《メテオスラッシュ》!」


アルベルトが空中に跳ね上がり、落下と同時に衝撃波を発生させる。

隕石のように落下し、地面に激突した。

バルトとノエルが吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて大ダメージを受ける。


「痛い……!」


ノエルは立ち上がろうとするが、身体が言うことをきかない。

バルトも、膝をついたまま動けない。


「《神速》」


ミラージュが移動速度を爆発的に上昇させる。

《超加速》よりもさらに速い。ヒマワリが追いつけない。


「速すぎる……!」


ヒマワリが二刀流で応戦するが、ミラージュの速度についていけない。

ミラージュが連続攻撃を放つ。

三回の連続攻撃がヒマワリを襲い、ヒマワリのHPが削られていく。


「《ボルトストーム》」


ジンが指定範囲に複数の矢を降り注がせる。広範囲攻撃が後衛を襲った。

ルナ、リリア、ソルが被弾した。

リリアが《ディバイン・シールド》で防御するが、防ぎきれない。


「くっ……」


ソルも大きくHPを削られる。


【星天の翼】が徐々に押され始めた。

五対八の数的優位があるはずなのに、【流星の覇者】の五人が圧倒している。


レヴィンがステラを見据える。

支援役を倒せば、【星天の翼】の防御は崩れる。

最終決戦が、今始まろうとしていた。


次は4/19 21時投稿予定

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ