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離縁したら指名手配されました! でも大賢者に溺愛されたので何とかなります。  作者: りりきち
7章 誰かを守りたいと願う心に、強さは関係ない

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43 それは幸せのかたちだ

「なあ……ごめん、カフカの故郷をぶっ壊しちまって」


 ユナが、宰相もろとも吹き飛ばした村は、もはやただの更地だった。

 瓦礫の中から、あの時宰相が持っていたアーティファクトの粉々になった破片が出てくる。アーティファクトですらこの有様だ。ただの人間の宰相が、大賢者の本気の魔力に抗えるはずがなかった。

 

「気にしてないのだ。カフカにとって、空と草原が故郷なのだ。人間みたいに村自体には未練はない」

「そういうもん?」

「そういうものなのだ。でも……」


 ユナが魔法で作ってくれた、ピスタチオカラーのソファが……なくなってしまった。

 あれに、2人でくっついて座るのが好きだったのに。


「なんだ、ソファなら何度でも作ってやるよ」

「フン、2人で初めて座ったソファはあれだけだったのだ、そっくりでも、なくなったことにかわりはないのだ」


 カフカはツンとそっぽを向いて腕を組んだ。横目で見れば、ユナがうなだれているのが見える。

 ユナは大賢者でなんでも出来るけど……すぐ調子に乗るし、たまにちょっとデリカシーがない。フン、反省するのだ。

 

「う、ごめん……」

「でも、何百回も一緒に座ってくれるなら……許してやらないこともないのだ」

「もちろんだ、何百回でも何千回でも一緒に座る」


 ユナが真剣に反省しているようなので、カフカはついでに要求を増やすことに決めた。

 

「ついでに……すごくおっきくて、ふわふわのベッドも欲しい」

「分かった、任せろ」

「あと、赤い屋根の可愛いおうちも」

「任せろ、なんでも作る」

「んーあと……あ。前頼んだお揃いの緑の服も着るのだ。そうしたらもしかしたら、許したくなるかもしれない」


 そういった途端、ユナがふふっと笑みを零した。


「む? なんで笑うの——」

 

 ユナが魔法を使う。

 魔法の光が消えた時、ユナが着ていたのは、ピスタチオカラーの魔術師らしいデザインのローブだった。細かい白金の糸で織られた刺繍が沢山入っている。

 それからユナの胸元には、小鳥の形をした、ペリドットのブローチが光っていた。


「あー!! いつの間に買ったのだ?!」

「ひみつ」


 ユナが照れているのがわかった。全く、この男は。


「どう? 許したくなったか?」

「ふ、フン。仕方ないから許してあげるのだ……ねえ、ユナ、私も着替えるのだ。あのピスタチオカラーのドレスを出して欲しい」


 ちょうど、『千分岐の砂時計』の未来に行った時に着ていたから、帰ってきて洗濯してユナの収納魔法に預けてしまった。


「カフカ。こっちを着てくれ」


 そう言ってユナが取り出したのは、彼が着ているローブとお揃いの白金の刺繍が施された、ケープ付きデザインのピスタチオカラーのドレス。


「ユナ……お揃いなのだ、これ……」


 嬉しい。

 あの日、2人で『ダンジョン探索』をした時に話した何気ない会話を、ユナは覚えていてくれたのだ。


 ユナが魔法を使って、ドレスを着せてくれる。相変わらず、ユナの選ぶドレスは飛べそうなほど軽くて着心地がいい。


 その場でくるんと回ると、ドレスの裾がふわっと広がった。


「可愛い。似合ってる」


 ユナはそう言って、幸せそうに目を細めた。

 それから、綺麗にラッピングされた小さな包みを差し出される。開けてと言われるがまま開ければ、中に入っていたのはブラックダイヤがはめられた、黒い鴉のブローチだった。


 ユナの胸元に光る、小鳥のブローチに目が行く。そして、自分の手元の黒い鴉を見た。

 それはまるで、カフカとユナみたいな。


「ありがとう……ユナ……大事にするのだ」

「どういたしまして」


 それから、ユナはブローチをカフカの襟元に付けた。これも魔法でつけられるのに、ユナはカフカのことはいつも自分の手で喜ばせようとしてくれる。

 それがなんだかくすぐったい。



***



 その日を境に、魔界にはとある噂が流れた。


 緑のドレスを着た弱い魔族が、とんでもなく強い“魔法”を従えて、頭の中をのぞいてくる。

 するとなぜか、殺し合いたい気持ちがなくなって、幸せになれるという。




「ふん、下らん。あらかた、幻惑の魔法の類いだろう。真の強者はそんなまやかしになど操られん」


 ドラゴンが不満げに鼻を鳴らすと、火の粉が舞った。

 彼の体は炎を彷彿とさせる朱色をしている。


 

 魔界において、最も魔王に近いと名高い種族。それが彼らドラゴンだった。

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