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離縁したら指名手配されました! でも大賢者に溺愛されたので何とかなります。  作者: りりきち
7章 誰かを守りたいと願う心に、強さは関係ない

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42/51

42 夢を見たのだ

 カフカは、真っ暗闇を歩いていた。

 探知魔法を使ってみても、何も跳ね返ってこない。どこまでも続く闇だけがそこにあった。


「うう、ここどこなのだ……?」


 カフカは、ひとりぼっちだった。


 

 その時、急に闇が晴れた。

 薄紫の空が広がり、サラサラと草の擦れる音がする。

 それで、カフカにはここがどこなのかわかった。


 目の前に小さな家が見える。

 その中で、傷だらけの小さな少女がわんわん泣いていた。

 白金の長い髪に、尖った耳。零れ落ちるようなペリドットの瞳。


「あれは——子供の時のカフカなのだ」


 子供のカフカのまわりには、似た色彩の兄弟たちが震えるように身を寄せあっていた。


「そうだ……カフカ達は、逃げて隠れるしか出来なかった」


 目の前の時間が早回しで進んでいく。泣いていた子供のカフカが、ひとりで走り回れるほど成長した時、もう周りに兄弟の姿はなかった。

 少女のカフカは、泣くのをやめて諦めたような暗く淀んだ瞳で地面を見つめている。


「……家族は、ほとんどみんな死んでしまったのだ」


 たまたま、カフカが逃げるのがすごく上手で、そして運が良かった。この時のカフカには、誰かを助ける力も、自分を守る力もなかった。

 ただ、逃げ続けていた。


 そして、アイスデーモンに追い回されている時、カフカは道に迷って中深部のかなり浅い所に迷い込んでしまった。

 そこを運悪く、ガロリア王国の魔術師に捕まったのだ。


「……それで、人間界に連れていかれた」


 暗い目をしたカフカは、煌びやかな重たいドレスを着せられて、煌びやかな公爵家に閉じ込められた。

 魔界にいた時のように死ぬ恐怖はなかった。でも、ずっと息苦しかった。


「そうなのだ、それで……ユナに、出会ったのだ」


 霧がぱっと晴れるように、カフカの視界にユナが映る。彼はカフカに手を差し出して、眩しそうに笑った。


 

「あんたを助けるためにきた、大賢者だ。


 ——俺はずっと、あんたを探してた」



***



「ユナ——!!」


 カフカは勢いよく起き上がった。虚空に伸ばした手は、期待通りの人に触れる。

 そして、ユナにきつく、きつく抱きすくめられた。


 

「……カフカ、……カフカ……よかった」

「ユナ……、本当に心配性なのだ。私はどこにも行かないのだ」

 

 だって、カフカは魔族なのだ。

 刃物で少し切られたくらいで、死んだりしない。


「……バカ、当たり前だろ。心配するに決まってる」

「……ごめん」

「不安になるから謝んな」

「む……? じゃあ……ありがとう?」

「ふ、それでいいよ」


 ユナ、泣いてるのだ?

 カフカを抱きしめる彼の声が、震えて鼻声になっている気がした。

 

 なぜだかとても、幸せな気持ちになる。

 不謹慎だろうか、彼が泣いてくれるのが嬉しいなんて。カフカが、魔族だから? 人間と、ルールが違うからなのだ?


 カフカは、自分を抱きしめるユナの背中をそっと撫でた。カフカをすっぽり被ってしまうくらい大きな背中なのに、なんでか、カフカは彼を守りたいと思った。


「ねえ、ユナ」

「……ん?」

「ユナは昔、『何度でも転生して、その度にカフカを探し出すから、また雇ってくれ』って言ってたのだ」

「……ああ、そんなことも言ったな」

「ねえ、カフカにもその魔法はかけられるのだ? 私も、何度でもユナに会いに行きたい」

「……いや、死んでもらっちゃ困るんだけど」

「もしもの話なのだ、私だって死にたくないのだ! ずっとずっと、未来の話なのだ!」


 カフカは、ユナの背中をぽかぽか叩いた。

 違うのだ、今すぐの話じゃなくて。カフカが、何度死んでも、帰るのはユナのところがいい。ずっとずっと、一緒がいい。


「未来の話? カフカ、あんた何百年生きるんだよ」

「んーわからないのだ……でも、魔界では2000年生きたら長生きなのだ」

「待って、大賢者の寿命長くて200年なんだけど」


 ユナが、顔を上げた。困ったように笑っている。

 

「でも、ユナは何度でもカフカに雇われに来てくれるって言ったのだ。ユナがまた転生魔法を何回でも使うといいのだ」


 フン、と口を尖らせた。ユナを伺うように上目遣いで見上げる。

 

「……サラッと言うなあ、あれ魔力消費えぐいんだけど」


 ユナは困ったように眉を下げている。でも彼は、できないとは言わなかった。それになんとなく嬉しそうにも見える。


 カフカは、こっそりと心をのぞいた。


《そんな何千年も俺と一緒がいいのかよ……なんでそんな、俺のこと好きなの》


 ふふ、照れてる。


「あっ……カフカ〜?! 今魔法使ったな?!」

「なんのことか分からないのだ〜魔族は息をするだけで魔法を使ってしまうから、仕方ないのだ〜」

「クッソ油断した!!」


 

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