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離縁したら指名手配されました! でも大賢者に溺愛されたので何とかなります。  作者: りりきち
6章 これが恋じゃないなら、なんなのだ?

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34 お前は……誰だ?

 カフカは目を覚ますと、見知らぬベッドに寝かされていた。


「ん……、ここはどこなのだ?」


 キョロキョロとあたりを見回す。品のいい調度品が並び、木のいい香りがする。

 お洒落ではあるが、人間の貴族の家というには質素。


 その時、部屋の扉が開いた。

 カフカは自然と身構える——だが、そこに現れたのは見知った顔だった。


「——ユナ?!」


 黒髪に、背の高い立ち姿。だけど、何かが違う。

 すこし、カフカの記憶よりも年上なような。彼の黒い瞳は、よく知る顔に似ているのに、凪いだ海のような静けさをたたえていた。


「よかった。目を覚ましたんだな」

「ここはどこなのだ? 確か——私はユナと……」


 ……何をしていたんだったか?

 ユナと、出かけていたはずだ。確か。なんだか頭にモヤがかかったみたいに思い出せない。

 うんうんと唸っていると、ユナが優しく微笑んで、カフカの頭を撫でてくれる。


「無理に思い出さなくていいさ。あんたはしばらく眠ってたんだ、きっと疲れていたんだよ」


 あ、れ——?

 ユナは、こんなに穏やかな人だったか?


「何か食べられそうか? ポタージュを入れたんだけど」


 ユナがマグカップを差し出してくる。ほんのり甘い香りが部屋に広がった。


「! 飲むのだ!」


 息をふきかけて、ちょっと冷ましてから口をつける。暖かいスープが口いっぱいに広がった。


「美味しい?」

「美味しいのだ〜!」


 そう言ってユナを見上げれば、彼は眩しそうに目を細めて笑った。



***



 ユナの家は、深い茶色の木で出来たログハウスだった。

 彼に連れられて外に出ると、爽やかな風が吹き抜ける。カフカの長い白金の髪が空に舞い上げられた。


 周りを見れば、青々とした山脈に囲まれているのがわかった。高原の澄んだ空気が気持ちいい。


 ……だけど、なんだか違和感がある。ユナの家は……こんなに爽やかな風の吹く山にあったっけ……?


 カフカが青い空を見上げていると、ユナが静かに隣に寄り添ってくれる。

 そしてエスコートするように手を取られた。

 なんだかずっと前からこれが当たり前だったような——そんな気分になる。


「カフカ。体はもう大丈夫か?」

「大丈夫なのだ! 凄く元気なのだ!」

「そうか。よかった」


 ユナはカフカの手を引いて、ゆっくり歩き始める。


「……ねえ、カフカ。あんたは今……幸せか?」

「何を言ってるのだ。ユナと暮らせていて、幸せじゃないわけないのだ!」


 自分の口から出たのに、なぜか違和感があった。

 本心だ。ユナとずっと一緒にいることが、ずっと前からカフカのいちばんの願いだった。


 ——“ユナと暮らしていて”……?

 あれ、本当にそうだったのだ? 


 考えに沈みそうになった時、ユナに頭を撫でられて、意識がそちらに向く。


「俺も、あんたと会えて幸せだ」


 ユナの笑顔が、なんだか消え入りそうな蝋燭の火みたいに見えた。

 ——ねえ、ユナが幸せなら、私も幸せなのだ。



***



 少し散歩をして家に戻った。気分も随分良くなったし、段々とぼんやりしていた頭も動くようになってきた。


 ふとカフカは、昔ユナに言われた言葉を思い出した。

『探知魔法は息するようにやれ!』そうなのだ、うっかり寝ぼけて忘れていたのだ。


 カフカは探知魔法を展開する。

 そして、気付いてしまった。


 ——“ユナが、カフカに認識阻害の魔法をかけている”ことに。



 あまりに違和感が無さすぎて、魔法の発動を魔族の本能でも感じられなかった。

 でも、今思えば違和感はずっとあった。



 だけど、カフカの探知魔法は“彼は間違いなくユナだ”と告げている。

 どういうことだ……?


 その時、部屋の入口から声が聞こえた。


「ああ……気付いちゃったか」


 その声は、咎める声ではなかった。彼の声は、悲しみと寂しさに満ちていた。


「ユナ……」


 思わず呼びかける。彼は、眉を下げて微笑んだ。

 そして、ベッドに腰かけるカフカをふわっと抱きしめる。愛おしむように、縋るように。


 カフカは自分を抱きしめる男を見上げた。



「ユナ……お前は、誰だ?」

本日は、21:00までに39話まで投稿します!

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