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離縁したら指名手配されました! でも大賢者に溺愛されたので何とかなります。  作者: りりきち
3章 俺の魔法は、あんたの魔法だ

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17 恋って、なんなのだ?

「俺と——魔王を目指してくれ」


 抱きしめられたまま、カフカは目を瞬いた。聞き間違いかと思った。

 まおう? まおうって、あの魔王?


「な、何言ってる……カフカがあの殺し合いに勝てるわけないのだ!」

「なあカフカ。俺はあんたの大賢者だ。俺の魔法は、あんたの魔法だ」

「……なんだその理論」


 カフカが冷静に突っ込めば、ユナはカフカを抱きしめたまま楽しげに笑う。

 

「俺はあんたの従者だ。俺はあんたのものだろ?」

「む、それはそうなのだ」

「じゃあ、俺があんたのものなら、俺の魔法もあんたのものだろ?」


 ……そうだろうか? む、そうかもしれないな?


 するとユナは、テーブルの上にあった四角いカードを魔法で飛ばして手元に引き寄せた。


『1級魔術師 ユナス・ワーグナー』


 つい、その文字を目が追う。すると、ユナは隠すことなく、カードをカフカに手渡してくれる。

 思ったより重い。金属でできているらしかった。カフカの手元で、カードが煌めく。


「これは、俺が前世で使っていたダンジョンに入るための……まあ、簡単に言えば通行証だ。

 北方諸国は……ああ、今は北方大帝国だったか、とにかく戸籍が雑だから。今も使えるだろうな」

「ふうん……私が聞きたいのはそこではないのだ」


 カフカは、カードを持ち上げてユナの顔にかざした。


「どうして、本名を教えてくれなかった?」

「それは、前世の名前なんだ。今の名前は“ユナス・ワーグナー”じゃない。今回の俺は……教会に捨てられた孤児だったからな。でも」


 そこでユナは一拍置いた。カフカは、次を待つようにじっとユナを見つめる。


「カフカには“ユナ”って呼んで欲しかったんだよ。だから俺は、今世の名前を使う気はない」


 それならば、理解はできる。実際には“ユナス・ワーグナー”はもう死んでるってことなのだ。今目の前にいるユナはあくまでも、ユナスの生まれ変わりの別個人。

 でも、なんだかはぐらかされている気がする。それともユナは本気なのか?

 

 答えを探そうと、彼の膝の上に抱きかかえられたまま、じっと彼の黒い瞳を見る。

 どうせ精神魔法は弾かれるだろうと思っていたのに——ユナの誠意なのか、魔法が弾かれない。


《でも本当に、ただユナって呼ぶカフカの笑顔が見たかっただけなんだ……“あの日”みたいに》

「あの日? あの日ってなんなのだ、私とユナは昔に出会っているのか?」

「いや、俺とカフカは公爵家で初めて出会ったんだ。俺が——前世で勝手にカフカを知ってるだけだ」

「なんだそれは、どういう……」

「ひみつ、って言ったろ。あんたが大人になったら教えてやる」


 どうしてなのか、そう言ったユナの笑顔が寂しげに見えて、カフカの言葉は勢いを無くしてしまう。


「もう……子供じゃないのだ……」


 以前のやり取りを思い出す。ユナは、恋も知らないお子様のくせに、とカフカを揶揄った。

 ……この気持ちが恋じゃないなら、なんなのだ?


「カフカは……初めて味方ができたから、それを恋だと思ってるだけだ」

「そんなこと……!」

「——そうじゃなかったらいいなって、思ってるよ。俺の事、好きになんねえかなって思ってる」


 ユナの黒い瞳が、カフカを捉えた。射すくめられたように、その場から動けない。

 いつもの優しい眼差しでも、余裕たっぷりな大賢者の顔でもない。知らないユナ。 


 ……恋って、なんなのだ?

 どうして? ユナのことが好きなのに。

 これは恋じゃないのか?


 ユナの手が伸びてきて、思わず体が竦んだ。

 彼が困ったように笑う。そして撫でてくれようとした手は、下ろされてしまった。

 

 ……困らせたいわけではなかったのだ。

 ただ、ユナに隣にいて欲しくて。私の知らないユナがいるのがなんだか嫌で。

 ひとりで、悲しそうに、寂しそうにされるのが嫌で。

 ……それなのに、知らないユナがなんだか、こわい。

 撫でられたかった、のに。


 

「ねえ、ユナ」

「……なに?」

「私、魔王になる。だから、ユナはずっと私のものじゃなきゃだめなのだ」

「……ふ、仰せのままに。お嬢様」


 ユナはまた、いつもの余裕たっぷりな顔で軽く応える。


 

 今はこれでもいい。

 ユナは私の従者なのだ。ユナは、私のものだ。

 これが正しい恋なのかはわからない。きっと、私が魔族だから。人間とはルールが違うのだ。



 魔王になれば、もう逃げなくて済む。

 ユナの魔法があれば、もう魔族に怯えなくていい。

 


 ねえ、ユナ。私、ユナがいれば何も怖くない。

 だから、ユナのためならなんだってできる。

本日、21:00までの間に21話まで投稿します!

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