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離縁したら指名手配されました! でも大賢者に溺愛されたので何とかなります。  作者: りりきち
2章 ユナ、お前は――誰だ?

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13 三竦みの思惑

「ガロリア国王陛下。くだんの魔族令嬢との面会はいつ用意して頂けるのでしょう?」


 リアナ共和国の大統領がにっこりと微笑んだ。腹に一物も二物も含んだような顔だ。

 彼女は、ネイビーのマーメイドラインが美しい細身のドレスを着ている。知的な印象の銀髪をタイトに撫で付けていた。


「やはり女性はせっかちで困る。そう焦らずともあの魔族は逃げませんよ。なんせ、我が国とダンジョンとの友好の結婚ですから」


 ガロリア国王は、好々爺然とした笑顔で応える。この場で最も年上で、それゆえの自信のある声だった。大柄の体躯に、それを強調するかのような深紅の騎士服を着ている。

 そこで口を挟んできたのは、北方大帝国皇帝だ。若くして北方諸国を統一した彼は、凍てつくような目を向ける。黒髪に真っ黒な軍服を着た彼は、さながら断崖絶壁の雪のように冷たい。


「しかし、ガロリア国王。たかたが結婚ひとつで、ダンジョンの主顔なさるのは如何なものかと。ダンジョンの位置から考えれば、殆ど我が領土と呼べるのですよ」


 それを聞いたリアナ共和国大統領が、また微笑んだ。

 

「皇帝陛下、それでしたら我が国もダンジョンには面しておりますのを、お忘れなきよう。

 さしでがましながら申し上げますと、ダンジョンの探索率が最も高いのは我が国のパーティです。ここはひとつ、シンプルに実際のダンジョンの掌握率を考慮しては?」


「いやはや、これだから平民出身の方は困りますな。そのような野蛮な杓子定規で測られては。国家の代表たるもの、もっと理性的に考えていただきたいものだ」


 ガロリア王国の、やけに明るい声が響く。

 その時だった。緊急事態を知らせる音響魔法がけたたましく鳴り響く。

 次の瞬間、息を切らした伝令が会議室に勢いよく飛び込んできた。

 

「恐れながら申し上げます! ドラゴンです! ダンジョン上空にドラゴンが出現しました!!」 



***



 会議を中断した3人の元首が外に出た時、ちょうど漆黒の巨大なドラゴンが上空を旋回しているところだった。

 

 今回の会議は、北方大帝国の帝都にある議事堂で行われている。ここからはダンジョンのある死火山の頂きがかろうじて見えた。

 3人の目の前で、黒いドラゴンは何度か炎を吐いて、死火山に向かって飛び込んで消える。

  


「今までに、ダンジョンの外に魔物が現れた例はありません。こんなこと、今まで1度もなかった」


 口を開いたのは、北方大帝国皇帝だった。その言葉を補強するようにリアナ共和国大統領が続ける。


「我が国でも、あのようなドラゴンとの交戦記録はございません。

 ——ガロリア王国陛下。本当に“和平の結婚”なのですよね? ダンジョンから、友好の証として、魔族令嬢は嫁いで来られたのですね?」


 2人の視線が、ガロリア国王に集中する。ガロリア国王は、努めて落ち着き払った様子で答えた。


「なにか手違いがあったのかもしれませんな。今日のところはお開きとさせていただきたい。我が国でも、あのドラゴンについては調査させていただくとします」


「そうですね。もしかすると、私達の考えている以上に自体は深刻かもしれません。……利権争いなどしている場合ではないかもしれない」


 それは、北方諸国をわずか数年で統一した、軍師としての直感なのか。北方大帝国皇帝の呟きに、その場に重苦しい沈黙が落ちる。



***



「なぜ何もかも思いどおりに行かない?!」


 天幕の中で、ウィスペルン宰相が吠えた。

 国家の魔術師団をひとつ借りて、ガロリア王国からダンジョンに向かって出発した。しかし、現れたのはカフカではなく謎の巨大なドラゴン。たった1匹のドラゴンによって、魔術師団は壊滅まで追い込まれた。


 宰相の脳裏に、ガロリア国王の言葉が蘇る。


『魔族の女とその従者の少年を探せ。彼らはれっきとした国家反逆者である。

 ……万が一死体でも見つかれば、“我が国とダンジョンの和平を妬んだある共和国の差し金”だと糾弾すればよい。あの国には野蛮なダンジョンハンターが山ほどいるのだから、国が統制できないハンターがいても不思議ではない』


 陛下のお心は、ダンジョンの権利獲得に留まらない。魔族のあの女を使い、ダンジョンを手に入れながら共和国を下し、そしてダンジョンの力であの北方大帝国に打ち勝つおつもりなのだ……!


 宰相は暗い喜びに震えながら、次なる一手を考える。


 ……我が国の魔術師団では弱すぎる。ドラゴンにも打ち勝てるような、そう、大賢者が必要だ。

 北方諸国には、昔から優れた魔術師が多く生まれるらしい。しかし、侵略戦争と独裁政権で大きくなった北方大帝国は、魔術師に特権を与えないと聞く。


「なら、北方諸国から我が国の爵位を条件に、大賢者を迎えれば良いのだ……!」


 大賢者と呼ばれるほど強大な魔術師なら、噂になるに違いない。少し探せば見つかるはずだ。

 宰相はほくそ笑んだ。

本日も、お読みいただきありがとうございます!


続きが気になっていただけたら、評価、ブックマークして頂けるととてもとても励みになります……!


明日は、19:00、20:00、21:00に3話投稿予定です。

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