11 大賢者に甘やかされてるのだ
その日カフカは、ユナから新しい魔法の使い方を教わっていた。
「だーっ、集中力切らすな! 探知魔法なんか息するようにやれ!」
「うぐ……」
カフカは眉間に皺を寄せ、ぎゅっと目を瞑りながら真剣に周りを探る。
だがダメだ。
なんか近くを飛んでいった、でっかい鳥に意識を持っていかれた。
「探知魔法は、いつもあんたが感情を拾ってるのの応用なんだよ。感情として受け取らないで個人個人の波長で受け取れ」
「むむ……なんとなく想像はつくのだ……」
「探知魔法が出来れば、半径500メートルくらいならどこに誰がいるのか、何をしてるのかわかるようになる」
——もしその力があれば、魔界でもビクビクしないで生きられる。
昔魔界にいた時は、近くで怒ってる感情を見つけたらとにかく遠くに逃げていた。
ふと、ユナがかつて公爵邸の内部をなんでも把握していたことを思い出す。
「ユナはもっと広い範囲で盗み聞きしてたのだ」
「盗み聞きって……言葉を選べアホ。けどまあ、同じ敷地内くらいの範囲なら、会話と考えてることくらいならわかるな」
あまりにレベルが違くて、カフカはがっくりとうなだれる。うう、私にも探知魔法を使いこなせる日が来るだろうか。
「あんたの大賢者が直々に教えてるんだぜ。もっと自分の従者を信頼しろ」
そうして頭をポンポンと撫でられる。
「大丈夫だ。カフカは心を読むのは上手いし、幻覚を見せるのも上手くなった。もちろん演技もな。
だから探知魔法も出来るようになる。探知魔法が使えるようになったら、認識阻害の魔法を教えてやるよ」
そう褒められれば、なんだか気分がいい。カフカはしばらくぶりに、ユナの感情を読んでみようと目を凝らした。
でもやはり、魔法が遮断されてしまって届かない。
「なんだよカフカ、俺の感情を読もうとしたな?」
「う、バレたのだ。だって……」
「なんだよ?」
「ユナは演技も上手だから、たまに不安になる。ユナの、本当の気持ちが知りたいって思うのだ」
——一緒にいられて嬉しいのは、私だけか?
魔法が上手になれば魔界で平穏に暮らせるって思うのは本当なのだ。
でも、ユナが褒めてくれるからもっと魔法が上手になりたいって、もっと褒めて欲しいって思ってる。
本当は……ずっと一緒にいたい。
少し切なく思った時、カフカの魔法がユナの感情を拾った。いや、拾ったというより、ユナの感情がカフカに割り込んできたと言うべきか。
それぐらい強い感情だった。
《バーカ、バカ、カフカのバーカ! 俺だってお前のこと好きに決まってる》
それを聞いた瞬間、時が止まる。
「……え?」
「ん? ——あ」
次の瞬間、ユナは精神魔法を遮断した。くるりとそっぽを向いて、すたすたと歩き去っていく。
その背中に魔法を投げつけても弾かれて、彼の感情はもう読み取れない。
ふふ、なんだ。大人になったのは外見だけなのか。
カフカの触れたユナの感情は、初めてユナの心を見たあの日と変わらない。
ちょっと口が悪いけど、怒りんぼうだけど、カフカのことを何よりも大事にしてくれて——
カフカは、あの日公爵に怒ってくれたユナのことをずっと覚えていた。そう、カフカのことを公爵なんかにやるものか、っていってくれ、て。
「……え?」
——今、好きって。
「ゆ、ユナ?!」
「あーあーあー聞こえない、なんにも聞こえねえなあ」
本日、3話投稿します!




