23話 トモダチ②
買い物に出ていたらしいメイドと従僕が、魔法陣から出てきて、そそくさとドアを潜りにきたので三人はドアから少し離れた。
その瞬間、中から扉が開いてメイド達と入れ替わりにピンクゴールドの髪の主が現れた。
「よォ」
専門機関のメンバーの一人だった。
片膝をつこうとしたアベルとダリルを片手で制して、彼は右手を胸に、左手を背中に回してイザークに軽く頭を下げる。
ハイドロイドと一緒にいる時に、よく使用人がやる礼だ。イザークも真似して返すと、うんと頷かれる。
「イザーク様、鑑定でご挨拶を」
アベルに小声で言われて、この間は「鑑定していいよ」の間なのに気づく。握手と似たタイミングだ。
鑑定、と唱えたいのを我慢して鑑定の魔法陣を広げた。
アレクシス・アーベントレート。20歳。魔術師。
何族かの記載はないが、ハイドロイドにはなかった職業が出た。何を出すかは個人の裁量なのだろう。
相手からも同じ鑑定が来た。特に探られるような気配はなく、軽く魔力が当たっただけ。
「無事に鑑定を取得したらしーな」
「ありがとうございます、アーベント……」
「アレクシス、いや、アレクでいい」
「アレク様?」
「様もいらね、大した家じゃない」
アベルの顔色からすると、なんだかつけた方が良さそうなのだが、端麗な顔を思い切り顰められた。
「そもそもオレァ専門機関じゃねェし」
「えっ?そうなんですか?」
「叔父貴に用事があって、ついでに専門機関についてきたんだけどよ。翻訳能力があるからって引っ張ってこられただけだ」
(なんか……ヤカラだ……口調はヤカラなのにめちゃくちゃ見た目は王子様だ)
ピンクゴールドの髪の毛に、珊瑚の瞳。
妖しい紫眼と湛えた色気のあるハイドロイドとタメを張るイケメンなのだが、こちらは白馬に王冠姿で長い刺繍のマントでも身につければ、沢山の女性が行き倒れそうだ。
直立しているダリルをちょいちょいと呼んで、アレクシスはその手からハーブ煙草を一本とる。
アベルがすかさず着火魔法で火をつけて、イザークはなんだか高級ホストにでも来た気持ちになった。実際に行ったことなどないが、イメージだ。
「あにめも面白いが、ぶっ続けだとさすがに目が疲れンな。小腹も空いたし勝手に降りてきたんだわ」
「なにかお作り致しますか?」
「イザーク、料理を嗜んでるらしいな。何か作ってくれ」
「なにが食べたいですか?」
日本の家庭環境のせいで、イザークは無茶ぶりに慣れている。なんなら無茶ぶりをされている自覚もない。
ただ、「なんでもいい」というNGワードだけはあまり聞きたくないが。
「庶民的な料理。大層なものじゃなくていいぜ。キッシュやハニーポテトは美味かったが、手が混みすぎてんだよ」
「庶民的……ってなにかダリル案がある?」
「要は使用人の食べる賄いみたいなものじゃないか?めんつゆやポン酢でサッと作るような」
異世界にも、めんつゆやポン酢もある。否、サトウ導師様様だ。
イザークが思い浮かんだのは、ジャンクな食べ物だったが、ハンバーガーなどはアレクシスは食べなれているらしい。
「牛丼、とか。肉じゃがとか?」
「おぉ、いいなそれ。今は牛丼で、夜は肉じゃがにしてくれ」
「専門機関の方々も同じものでよければ作りますけど」
「良い良い、イザークの手作りならあいつらなんでも喰うだろ」




