22話 トモダチ①
「暇?割とあるが」
イザークはアベルと、使用人の裏庭に居た。
呼んだダリルを探して地下に降りてきたら、使用人部屋に緊張が走り――これは公爵家の誰が降りてもそうなるらしい――外に通じる扉から煙草を加えたダリルから手招きされた結果だ。
アベルからひとしきりプンスカされている間は、ダリルは煙たそうな顔で煙草を吸っていた。レシピを書き写す話に対しての返事が、暇はあるという。
「専門機関の方々、どうがを止めたり動かしたり出来るようになったらしいからな。あれじゃイザーク坊っちゃんいなくても、スタミナポーション飲みまくって徹夜しまくるぜ」
「情報早いなー」
「メイド情報だ、久しぶりに客間を大掃除したのに客がベッドでほとんど寝てないってな」
「イザーク様、こいつメイドにモテるんです」
ダリルはアベルにつつかれて、じろりとつり目で睨んだ。
切れ長の目に、赤髪を一括りにしたダリルは近寄り難いタイプの美形だから背後でキャッキャされそうだ。
アベルは人懐っこさと可愛い系を搭載したタイプなので、真逆の二人が仲良くしているのがイザークは面白い。
「スタミナポーションって?」
「ポーションの種類も説明してないのか、お前」
「い、色々あったんだい!」
もっと基本的な話で引っかかっていたのはイザークのせいだ。
「アベルは悪くないよ、俺がまだ何にも分かってないからそのせいで!」
「イザーク坊っちゃんがそう言うなら」
ダリルが煙を吐いたが、その香りはハーブの香りがした。
「イザーク様の目の前で堂々とタバコ吸ってる不良シェフに文句言われたくないね」
「ハーブ煙草だこれは、喉にいいンだよ」
「だからって吸うなー」
「まぁまぁ俺は気にしてないから」
タールもニコチンもないなら、受動喫煙の心配もないのだろう。
「ポーションには種類があります。下級中級上級ですね。ポーションは怪我に効きますが、スタミナポーションは眠気や疲れを一時的になくします。本来はダンジョン討伐隊が魔物の山に囲まれた時に凌ぐ体力回復役なんですが、専門機関の方は眠気打破に使ってらっしゃるようですね」
「あぁ〜似たようなのはあったなぁ」
使用用途を聞きながら、何社かのコマーシャルが脳内で聞こえた気までした。
ただ、魔法の世界ならば疲労回復はガチめなのだろう。味が気になるところだ。
「あとはポーションは怪我を直しますが病気を治せません。病気を治すキュアポーションも三段階あるので、具合のレベルで飲み分けます。回復魔法もありますが、鬼族は苦手なカテゴリーなので魔法習得するよりキュアポーション頼みですね。貴族には癒師の訪問も頼めますので、中級回復魔法をかけて治らなければ上級キュアポーションを出されますね」
「毒のある魔物肉にチャレンジして、子供の時に飲んだなぁ、キュアポーション」
「なにやってんのダリル」
呆れて見上げたが、ダリルは何のその。煙を吐いて他人事の顔だ。
やーいバカー!とからかったアベルにはウザそうな表情をしたが、料理人たるもの味が気になったのかもしれない。
「あとは、魔力ポーションですね。これも三段階ありますが、やはり産地で効果は違います。魔力枯渇すると気持ち悪くなりますので、大体ポーションと魔力ポーションは万が一に備えて持ち歩きますね。イザーク様も今の体でどの産地がいいのか調べませんと」
「それは確かにやらないとね」
明日からまた新しい魔法を取得するつもりだ。数をこなせば魔力はがつんと減るに違いない。
「尚のこと、ダリルにはイザーク様のレシピを書き写して貰わないと」
「やるのはいいが、俺にアレが操作できるのか?」
「あっそうか……。レシピはメモ帳にもアプリにも散らばってるから俺が操作しないと……ん?スクショすればいいのか!」
『すくしょ?』
アベルとダリルの声が重なる。イントネーションがやや間違っていた。
「そうか、スクショしてアルバムから1枚ずつページを書き写してもらえば簡単だから、ダリルはスライドすればいいだけだよ」
『すらいど』
ダリルたちからしたら、音が鳴ったり人が動いたりする板をどうしたらスライドという言葉を使うのか、分からなそうだ。




