2-21 本格的Na活動
見渡す限りの砂場と岩場。遠方に岩の巨人が見える。
「マスター、あれは何ですか」
「あれはロックゴーレムですね、やりますか?」
「はい――」
言うや否やミスティアナが駆け出す。
その速さは音の如く、バフ無しならばライトは追い付くことが出来ない。
「アレ、単純な魔力による身体強化だけなんですよね?」
<そうじゃな。色々な要素はあるが、魔力以外に強化はしてないぞ。勿論神器も使っておらん>
「と、いうことは系統の違いってとこですかね」
<あとはそもそもの武器の重量もあるな>
「確かにディグレストーン軽いですもんね」
<いや、イグニティが重いだけじゃ>
ライトもミスティアナも身体能力は元々高い。
だとするば、二人の違いは何か?それは振られているパラメータの違い。
値の総合値は同じだが、ライトの場合は、どちらかというと腕力に振られている値が多く、ミスティアナの場合は、どちらかというと脚力に振られている値が多いのだ。
値としての差はそう多いものではないが、常人に比べて1の値の力が大きい二人は値の差が少なくとも如実に方向性が分かれるのである。
ドゴォオ!!と何かがぶつかるような衝撃音が大きく響くと同時に、ロックゴーレムの胸に風穴空き、全身が一気に崩れ出す。
「もう終わっちゃいましたか、着く前なんですけど」
「――戻りました、マスター」
「速い、良かったですよ、ミスティアナさん」
「ありがとうございます、マスター。魔石も取って来ました」
「うわぁ、綺麗に貫かれてますね」
剥奪槍の穂先に突き刺さった魔石を見せてくるミスティアナに、呆然と称賛が混ざったような表情を向けながら、その魔石を引き抜いて虚空へと仕舞い込む。
「じゃ、次の層に行きましょうか。この層と同様の環境の魔物は全て討伐したので」
「分かりました、次の層への階段はあちらです。マスター」
「だから何で分かるんですか……」
「よく分かりませんが、分かります」
「返答が矛盾の塊すぎる……」
よく分からないらしいが、自信満々のミスティアナを脇目に冊子を確認し、方向が確かに合っていることに大きく溜息を吐きながら、ライト達は歩き出す。
さて、ライト達が居る此処が何処かという話をしよう。
まあ、既に気付いている方もいるだろう。此処は未踏破ダンジョン『大迷宮』――のドライだ。
散歩の翌日でもある。つまり、冒険者パーティーとしての本格的な活動を開始したのである。
第一の活動は迷宮攻略、恐らく行く意味の無いツヴァイを飛ばしてドライへとやって来た。
そして今来る階層は、
未踏破ダンジョン『大迷宮』ドライ 20層。
開いた巨大な扉に入ると、その瞬間視界が切り替わった。
これまでの階層主部屋(経験として語れる程の回数入ったことは無い)とは明らかに異なっていた。
「――っ、これは空間転移ですか」
「マスター、警戒を。敵正反応、全方位に複数です」
「分かりました」
辺りは見渡す限りの砂漠、軽く足を動かすだけで沈むような感覚が襲ってくる。
空は、ダンジョン内だとは思えない程の晴天。
暑く輝く太陽が、徐々に体力を奪いそうな気がした。
砂を巻き上げながら二人へと迫る何かが周囲に複数体現れる。
「この感じ、サンドサーペントに近い……けど小さい。というこは冊子の情報からするに――」
「――マスター、来ます」
「ミスティアナさん、今回の階層主は、を倒すまで永遠に続けるタイプです。ドンドンやっちゃって良いですよ」
「了解です、マスターの仰せのままに」
剥奪槍の穂先が輝き出す。
ミスティアナが攻撃の準備を始めたのを見たライトは、邪魔をしないようにと、左手に灰色の魔法陣を浮かべた。
周囲の砂が数か所膨れ上がり、二人へと迫り来る。
《黒剛彩王-虚の理-偽詐術策-聡明》
《未来予知-槍術:神級-電光石火-絶技-天眼-神風》
―――上級重力魔法:空を駆ける者
―――上級槍術:光心刺突・四連
その姿を視認する前に、白い光が流れ害敵を貫き通す。
状況を上空から確認していたライトは、その速度に驚いていないように見えて滅茶苦茶驚いている。
(僕自身が行動していたとしても、初動が全く見えなかったんですけど……真面に戦ったら僕勝てなく無いですか?)
<それは今はいい、戦いに集中せよ>
(分かりましたよ)
注意の下、砂へと意識を集中させて敵の親玉を探す。
「今回の階層主は、サンドハイドキング。レイス系の魔物で、砂を魔法で操作して自身は隠れるという姑息な戦い方をする魔物ですね」
<お主より姑息ではないぞ>
「何か良いましたか?」
<いや、何でもない>
サンドハイドキング、サンドハイドという砂中を移動し奇襲をするレイス系魔物の進化個体。
前個体より魔法の扱いが段違いに上手く、並の冒険者では発見すら出来ずに死ぬことが多い化け物だ。
基本の攻撃は魔法で操作した砂で行い、止めだけは本体が行う。
サンドハイドキングの一番の強み且つ警戒すべき能力は、その隠密能力。
「魔力探知には全く引っ掛からない。魔法の軌跡もない。移動音もしない。当然見えもしない。……これは確かに苦労する訳です」
<マスター、私は問題無いので、ゆっくりと探して下さい>
「そうもいきませんよ、マスターとして任せっきりは嫌ですから」
脳に、ミスティアナの声が響く、彼女の声が念話で伝わる感覚には慣れていないので、まだ少し身体が反応してしまう。
マスターだからというより、そもそも何でも自分でやりたいタイプのライトは、他人にやらせることに慣れていない。
パーティーも組んでいない為に、連携も全く慣れていないのだ。
この場合は、連携とは言えなさそうではある。
「早く終わらせたいので、潰しに行きます」
三日月のような笑みが顔に刻まれる、余りにも黒い笑みが。
虚空から取り出したイグニティを握り締め、それに手から出した王気を纏わせる。
全てを塗り潰すかのような漆黒が刃と化す。
下では、目に見えない程の速度で魔法で作られた
「別に探す必要なんてないんだよ!――死に晒せ!!」
《黒剛彩王-虚の理-蛇王蛇法-剣術・蛇道:上級-悪逆非道-回避錬術-怪力-会心》
―――八彩王法:黒剣は、極星を墜とす
煌めきを含む漆黒にして極大の斬撃が下、一面の砂へと放たれる。
黒は砂を侵食し、視界に映る全てを塗り潰す。
すると、またしても突然視界が切り替わり、やや暗めの石材で造られている広間に居た。
隣には、いつも通りのミスティアナが居る。
「あれ?終わっちゃったんですかね?」
「恐らくそうかと思われます。確認してみては?」
「そうします」
虚空へとイグニティを仕舞い、同時に『大迷宮』の冊子を取り出してパラパラと捲る。
ドライの20層の階層主からは、仕様が変わるらしい。
本来階層主の居る筈の広間に入った瞬間に隔離された別空間へと転移させられ、そこで階層主と戦うことになる。
階層主を倒せば元の広間に戻り、報酬の宝箱が現れる。逆に死亡した場合は挑戦者の死体のみが広間に戻されるようだ。
この広間に戻って来たということは、つまり階層主が倒されたということに他ならない。
「うん、勝ったみたいですね。宝箱もありますし」
「流石です。マスター」
「そう、ですかね……」
<粗暴過ぎると、我は言いたいぞ>
「ヨル様、結果が全てではないかと思います」
<確かにそうなんじゃがなぁ……何というかのう……ライトよ、あの程度の敵に八彩王法は使わないようにした方が良いと我は思うぞ?>
珍しくしっかりとした提案をしてくるヨルとそんなのお構いなしに背中を押してくれるミスティアナに、板挟みにされたライトは落ち着かずも答えを出す。
正直に言えば、答えは一つしか無い。
「ヨルの言う通り、八彩王法はある程度控えることにしましょう」
「そうですか、マスター……マスターがそう言うならば」
「すみませんね、ミスティアナさん」
表情は変わらないが何処か、しょげている雰囲気を感じた為彼女の頭を撫でてあげる。
「でも八彩王法は、元々消耗が大きくて何回も使える技じゃないので、それに周囲への被害も馬鹿になりませんしね」
「分かりました、では次の層へと行きましょうマスター」
「そうですね」
報酬の宝箱の中身をさらりと仕舞いながら、二人は次の層へと歩いて行く。
◆投稿
次の投稿は12/7(水)です。
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◆蛇足
語り部「八彩王法、強いよね。強すぎるのに、普通に使い過ぎだとは僕も思った」
蛇の王「じゃが、次の話からバンバンまた使うぞ」
語り部「おい、ネタバレするな」
蛇の王「我、し~らない!」
語り部「待て!逃げるなっ!」




