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1-5 冒険者と迷宮の都市



 目の前に見えるは、正に壁という言葉以外が出てこない、灰色の高き壁門(へきもん)。



「アレがラビルですか、流石大都市だけに外壁が厚いですね」



 ミスティアナとの対話の夜から2週間の日々が流れ、遂には、ライト達は迷宮都市ラビル、その入口の前に着いたのだ。

 因みにだが、あの夜以降の夜もミスティアナと何度も話していたりする。



「『大迷宮(ラビリンス)』のスタンピードに備えて、外壁は王国一を誇る頑強さですぞ」

「なるほど、そう言うことですか、あっち側に『大迷宮』があるんですよね?」

「そうですな」



 ラビルに門に入る為の手続きを待つ人々の横を通りながら、暢気にトリスと話すライト。



「本当に良いんですよね?」

「大丈夫ですぞ、我々セイク商会は、特殊許可証がありますからな。ライト殿は運が良かったですな。いや、その強さが引き寄せているのでしょうな」

「ハハッ、そんなことありませんよ」

「相も変わらずに謙虚な方ですなぁ」



 本来、初めてラビルに入る為には、少し時間がかかる。

 のだが、長くラビルで活動しているセイク商会には、手続きを省ける特殊な許可証があり、それの効果を雇われの護衛であるライトも受けれるようだ。



「セイク商会に着いたら、依頼は終了ですよね?」

「そうですな、全くライト殿が居なければ我が商会は、あそこで死に絶えていたでしょう。感謝しかありませぬな、あの後何度も来た魔物達を一騎当千の如く倒していく姿は、流石の一言でしたぞ」

「トリスさんは本当に口が上手いですね」

「いやいや、本心ですぞー!」



 のんびりとした会話がこの後も続いた。



◆◇◆



 目の前に在るのは、レンガ造りの巨大な建物、人が結構な頻度で出入りしており、店の繁盛具合を如実に表している。



「此処がセイク商会の本店ですか」



 此処は、ラビルの北側に位置するセイク商会の本店だ。

 一応の説明、ライト達がラビルに入った門は西側である。

 ラビルは、上から見れば円形の形をしており、十字の形に大通りがある。

 このセイク商会の在る北の通りは、商売通りと言われ様々な店が商売を行われ、賑わっているのだ。

 


「これにて、依頼完了ですな。こちらが報酬になりますぞ」

「ありがとうございます。短い間ですが、お世話になりました」

「それは、こちらの言うことですぞ。本当に世話になりましたな。何か困ったことでも必要な物でもありましたら、このセイク商会へ参ると良いですぞ。従業員に言って、名前を出すと私の所に通すように言っておきますのでな」

「そんなことまで……」

「気にすることは無いのですぞ。私としても優秀な冒険者と繋がりを得るという利がありますからな。親切だけでは無く、打算もということですぞ」



 それを正直に口に出す辺り、トリスが良い人なのだと、再度認識するライト。

 新たな場所での新たな出会いに心の中で密かに感謝したのであった。



「なら、早速それを使う、と言いたいところですけど。流石に色々と作業ありますよね?」

「そうですな。オークションの準備に早くも取り掛からなければなりませんからな。むむ……今夜は空いておりますので、宿を取って軽く散策でもしてまた来てくだされ」

「お勧めの宿ってあったりします?」

「そういうと思っておりましたぞ。宿なら南通りの迷浪運河亭(めいろううんがてい)が良いですな。私の同郷がやっている宿ですぞ。黒地に白い文字で書かれた看板と川のようなマークが特徴ですな」

「ありがとうございます。では、また夜に!」

「気を付けるのですぞー!」



 そんな元気な声を背に、ライトは移動を開始した。






「ん~と、此処かな?」



 ライトの目の前には、デカくて黒い看板に白くそして豪(えら)く達筆な文字で迷浪運河亭と書かれた宿を見つけた。

 文字の横には、多分川かな?という感じの少し下手な白黒の川のマークが描かれている。

 ライトは迷いなく宿の中に入る。

 チリンチリンと小気味の良い音が扉を開けると同時に響く。

 そして、入り口直ぐの受付らしき場所に向かう。



「いらっしゃいませ!御一人でよろしいですか?」

「はい、トリスさんの紹介で来まして、長期的に一室借りたいのですが、出来ますか?」



 元気良い、ブラウンの短髪の女性に、ライトはトリスのことを伝えつつ注文を口にする。

 すると、女性は少し驚いた顔をしながら答えてくれた。



「トリスさんの紹介ですか!此処とトリスさんに繋がりがあること、一般には知られていないので、貴方は本物さんですね!ならお部屋に空きが有りますので、大丈夫ですよ。どれ程の期間にしますか?」

「そうですね……取り敢えず一か月でお願いします。先に一括で料金を払うことは出来ますか?」

「出来ますよ!延長する場合は期間の終了にお話ししていたければ良いです!料金は一日1000Dなので3万1000Dなんですけど、トリスさんの紹介なら3万Dで良いです!」

「では、金貨三枚です」



 本当に元気のいい人だな、とライトは苦笑いしながらも、ギルドカードから金貨を三枚取り出し、カウンターに置く。



「はい、確かに受け取りました!こちらがお客様の部屋の鍵です。二階の奥から二番目ですよ!」

「ありがとうございます。ああ、一か月お世話になるので、一応自己紹介を。ライト・ミドガルズ、ただのしがない冒険者です。よろしくお願いします」

「私は、この迷浪運河亭の看板娘!フラスコです!よろしくですよ、ライトさん!」

「では、部屋に行った後、少し出掛けます。食事は何時頃出ますか?」

「8時頃ですね、今から3時間程でしょうか?」



 ライトは、その時間を頭の中で意識し、行動の予定を一気に組み立てる。

 この手のことは、ライトの大得意分野である。



「じゃあ、出掛けた後に一度戻って来て食事をしてからまた出掛けます。トリスさんと少し話し合いの予定が入ってまして、深夜になる前には帰って来る予定です」

「分かりました!お気を付けて!」



 太陽のように燦々な笑顔に送られてライトは、移動を開始した。

 密かに、良い宿を教えてもらったとほくそ笑むのであった。



◆◇◆



 人の気配の無い閑散とした廊下を歩き、目当ての部屋を見つけコンコンとドアを叩く。



「ライト殿ですかな?入ってきて良いですぞ」

「失礼します」



 此処は、セイク商会の談話室。

 シックなデザインの家具が並び、全体に落ち着いた雰囲気を作り出している。

 ライトは、部屋の中央にあるテーブルとそれを挟むように存在する二つソファを確認し、トリスの真正面に位置する場所に座る。



「本日は、時間を取って頂き感謝します。トリスさん」

「そこまで畏まらなくても良いですぞ。ライト殿、私と貴方の仲ではありませんか」

「ふふ、ありがとうございます。で、そちらの方は?」



 ニコニコと笑うトリスに、自然とライトも口が緩む。

 だが、入って来た時から気になっていたことの方が重要なので、そちらを先に聞くことにした。

 そちらの方とは、トリスの隣に座る緑髪碧眼のエルフの女性?少女とも呼べそうな何ともラインの微妙な女性だ。

 因みに魔法使い風のローブを着ている。



「彼女は、我々セイク商会の専属鑑定士、シュビラ殿ですな」

「どうも、シュビラなのです。よろしくなのです」

「よろしくお願いします、シュビラさん。それにしても、鑑定士を準備しているってことは、僕が何の話をしに来たのかも分かってるってことですか?」

「当然ですな。良い商談になることを期待しておりますぞ」



 トリスは、ライトが何の話をしに来たか完全に予測し、その話に必要であろう人材を準備していた。

 改めてライトは、エルトリス・セイクという男が、これほど大商会を営業し、今も尚発展させ続けられるのか理解出来た気がした。

 でだ、先程トリスが言った通り、ライトは商談をしに来た。

 金が必要だからである……何故かって?そんなこと分かり切っているだろう?



「それなら、勿体ぶるのは僕のやり方じゃありません。僕が第一に売りに来た、いやセイク商会に買わせに来たものは、こちらです」



―――取出(トリイデ)・(・)巳蚓魑(ミヅチ)



 ゴトンと音を立てて、ソレが三人の中心にあるテーブルに現れる。

 米俵二つほどの大きさの綺麗な翡翠色の玉、引き込まれるような神秘的なオーラを放っている。



「こ、これはっ!?」

「す、凄いのですっ!」

「エンシェントフォレストドラゴン、その魔石です」



 一年の時を経て、古の竜の魂が、再び人の目に晒された。



「さあ、商談と行きましょうか、エルトリス・セイク3代目商会長殿?」

「全く、ライト殿は本当に最高ですな……」



 双方の顔に浮かぶのは、三日月のように深い笑み。

 それらが喜びから来るものか、企みから来るものか、それは当人達しか知り得ない。


 他に語ることがあるとすれば、この夜に聞けば度肝を抜かれる程の大金が動いたこと、それはきっと必然だったであろう



◆作者の願い

『面白い』,『続きが気になる!』と思った読者の皆様へ。

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□■□■□



◆蛇足

語り部「なあ、トリスは何でこんなにもライトを信用してるんだ?」

蛇の王「トリスの種族の特性に理由があるな。まあそのうち本編で語られるのでこの話題は終了じゃ」

語り部「じゃあ鑑定士って何者なんだ?」

蛇の王「鑑定士は、スキル-鑑定・○級を持つ者のことを言う。級が上がるごとに得られる情報が増え、最上位は理ではなく神眼というスキルで、それになると見た人物の一生まで赤裸々に分かるらしい」

語り部「蛇の王は持ってるのか?」

蛇の王「うむ、我はスキル-神眼・蛇道を持っておるな」

語り部「効果は?」

蛇の王「神眼の上位互換じゃ、更に強いもの相手でも調べられるぞ」

語り部「お前本当に何でもありだな」


語り部は、もう何でもコイツ一人で良いだろと密かに思った。



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