1-6 ラビルのギルドで彩王の覇気
迷浪運河亭にて。
「……っ、ふぁ~」
「おはようじゃ、ライト」
「おはようございます、ヨル」
窓から入る陽光にて、目が覚めるライト。
隣には、黒くて薄い、シースルーのネグリジェを着たヨルが寝ており、起きたライトにおはようの挨拶を告げる。
「今日は、ラビルのギルド支部に行って、大迷宮の情報を仕入れて、序でにトアさんの手紙も渡して、で身体を動かして終了ですかね。迷宮に潜るのは明日からにしましょう」
「まだ、時間はあるからな。気負わずやっていくのじゃな?」
「二週間後のオークションの資金はもうたんまりありますし、多分足りると思います。けど、一応は金策をします、けど別に焦る必要はないので、ゆっくりやっていくことにしました」
ライトは、ヨルに今日の予定とこれからの方針について話した。
オークション用の資金は、実はもう足りていたりする。
一年前の特別依頼報酬で既に1,000万D程の貯金があった、それだけでは正直に言ってオークションに参加するには心許な過ぎた。
だが、昨夜その貯金が軽く2000倍になったりした。
更に格上の素材が手に入った為に、討伐証明のだけギルドに渡し、綺麗に解体されたまま死蔵していた古代森竜をセイク商会に、魔石だけでなく全部分売ったからである。
セイク商会としても少なくない出費の筈なのに、トリスは即金即決であった。
新しくあの談話室に現れた秘書も同じような感じであったし、問題は無い様だ。
何故なら、竜種の素材はそれだけ貴重だからだ、古代個体ならば尚更である。
多少痛い程度の出費など、今後得られる利益に比べれば小さすぎると判断したトリスの選択は正解以外の何ものでもない。
「さて、朝食を頂きに……ヨル、何で腕を掴んでるんですか?」
「ハァ、ライトは分かっとらんのう」
「………こんな朝っぱらからはしません。予定作ってるんですから、やるなら夜です」
「仕方ないのぉ。ここ最近は、体力温存とセイク商会の連中が居たから、それに他の女に現を抜かしていたようで、できなかったからな。激しめにいくぞ」
「明日は大迷宮に行くんですけどね……」
ライトは、夜にヨルと一緒に居る自分を想像して少し心配になる。
何の話かと言うと、まあ、行為についてである。
ヨルは、ハイペースでライトを進ませる為に、ヤるのを我慢していた。
セイク商会の馬車を使うことになったから、その我慢はいらなくなったかと思われたが流石に他人の正式な所有物のである物の中で、行為をするのをライトが躊躇したから出来なかった。
それ以外にも、毎夜ミスティアナにライトが会いに行くため時間が無かったのもある。
ヨルの中の欲求はもう肥大しまくりなので、今夜発散させろということである。
(性欲お化けが過ぎますよ、全く)
ライトは、大きな溜息を吐いた。
◆◇◆
全体的に白く、清潔で頑丈そうな印象を受ける大きな建物……ラビルのギルドだ。
正式に言えば、ギルド協会・人界アウトライル王国・ラビル支部のギルド会館である。
因みに場所は、東通りの真ん中くらい。
「じゃあ、入りますか」
<そうじゃのう>
ライトは、深くフードを被り、出入りが一旦治まったギルドへと入る。
内部は、全体構造はハジノスと似ているが、広さが段違いであった。
その広い空間は、様々な冒険者達で賑わい、活気に溢れていた。
(流石、冒険者の都市と言われるだけありますね)
大迷宮は、内部の強さに大きな幅が在る為、低ランクから高ランクまで多くの冒険者が訪れる。
そこに最も近い都市であるラビルが繫栄するのは当然のこと、何時しか冒険者と迷宮の都市と呼ばれるようになった。
前話のタイトルなのに、前話で解説しないというね。
ハジノスとは、また違った雰囲気にライトは、周囲を見回す。
すると、気になる集団を見つけた。
装備がある程度赤に統一されている複数人の集団だ。
(クランでしょうね)
クランとは、パーティーを複数集めた集団である。
まあ、皆様は大体分かると思うので、軽く説明して終わりな。
クランリーダーを中心に複数のパーティーを纏め、同じ志を持つかは知らんが、ある程度行動を共にする者達のことだ。
クランでしか受けれない依頼などもある為、恐らくは便利だと思う。
今は、ソロ専門のライトには無縁の者達ではあるが。
――あい、ボケっと突っ立ってんじゃねぇよ。退けろ」
――私達が、誰か分かってるの?」
――あのクラン『炎血の翼』の団員ですよ?」
ライトが、止まって見ていると、背後からぶつかられ、口々に言い放ってくる。
振り返ると、それぞれ赤・青・緑の髪に、先程見た集団と同じ、赤い鎧を身に着けていた。
心の中で、軽く溜息を吐く。
<やれ、ライト>
(了解ですよ、ヨル……)
《黒剛彩王-蛇王蛇法-偽詐術策-聡明-会心》
―――彩王の覇気・王蛇絢爛
ギルド内が不可視にして絶対の威圧感に満たされる。
辺りが静寂に包まれ、空間の温度が幾らか下がった気がした。
ライトは、ゆっくりと振り返り、口を開く。
「ギルド内では、人は止まってはいけないのでしょうか?」
「あっ…いっ……」
「ギルド内を見回すのは、行けない行為なのでしょうか?」
「ひっ……」
「誰かに上から目線で、否定されるべきことでしょうか?」
「…………」
ライト自身は、至って普通に話しているだけだ。
だが、その身から放たれる威圧感が、嫌でも恐怖を掻き立てる。
「"俺"の質問に答えろ、『炎血の翼』の団員さんよ?」
いつもとは違う一人称を使ったライトの一言共に、空気が一段重くなる。
実は、ライトはヨルに「喋り方に威厳が無いから練習せよ」と言われたことがあった。
それから少しずつ練習し、普段より格好良いんじゃないかと思えるくらいには出来た。
元の口調と瞬時に切り替えも可能にし、努力が伺える。
だが、
「おいおい、黙ってちゃ分かんねぇよ。さっさと答えろ、俺に無駄な時間を使わせるな」
格好良いというより、王というより、ただの不良みたいな感じである。
因みに、ヨルに披露した時は「即刻練習し直せ」と言われた。
現在修正中で在る為、まだ不良っぽい感じだ。
「ハァ、言葉では理解できな――「そこまでにしてもらえるかい」――誰だ?」
「あたしはグレンダ、そこの馬鹿共の所属クラン『炎血の翼』のリーダーだよ」
燃え盛る炎のような鮮血の髪に褐色の肌、その身を包む真紅の鎧とその上からでも分かる鍛えられた肉体。
ライトの二倍はありそうな高身長で、顔に横一筋の傷跡のある女性だ。
この覇気を放つライトに普通に話しかけられることから、相当な実力であることは明白である。
「じゃあグレンダ、お前は此奴らの件、どう落とし前をつける?」
「あんたが、要求することにクラン全体で出来る限り答えるってのはどうだい?」
「お前、面白いな」
(中々強そうですね、クランのリーダーをしているだけあります)
ライトは、勝手に笑みを浮かべようとする頬を頑張って精神で押さえつける。
同時に、の誇示の機会をどう作るか思考を巡らす。
「なら、お前らのクランがギリギリ経営困難になる程の金銭を全てだ」
「全てと言わないのが優しさか、逆に少し残すという意地の悪さか、よく分からないね。だが、流石にその要求は簡単には飲めないね」
(そう言ってくれると思いましたよ……)
もし、演技をしていなかったら、ライトの顔は自分の思い通りに進んだ喜びで、満面の笑みを浮かべていただろう。
それほどに、想像通りだった。
「だが、お前は要求を呑むと言った」
「出来る限りだと言っただろう?確かにうちの団員があんたに失礼をした。けど、限度があるんだよ。それにクランとしての意地がね」
「となると、解決策は一つしか無いな」
「そんなものあるのかい?」
「あるだろ、俺達は冒険者、語るなら口じゃなくて実力だろ」
当初は力の誇示の為に、あの三原色の馬鹿を再起不能になるまで、叩きのめす予定だった。
しかし、グレンダが入って来たせいでその手は、使えなくなった。
ならば、グレンダも巻き込んでしまえば良いというのが、ライトの考えだ。
「決闘ってことかい?」
「いや、決闘じゃねぇよ。お前ら『炎血の翼』全員と俺との戦いだ」
「……少し、あたし達を舐め過ぎじゃないかい?」
「ただ全員に関わることだから全員に権利を与えただけだ。別に厳選しようが、全員で来ようがどっちでもいい。まあ、このルールでもやりたくないって言う腰抜け共なら、別に俺もやらなくていいが?」
ここぞとばかりに、ライトは煽り散らかす。
ライトの正直な感覚で言えば、グレンダ以外は自分の相手にならないだろうと確信している。
そこに、驕りや油断は一切含まれていない。
ライトは、自己評価は低いが、自分の強さは正確に理解しているのである。
「ふふっ、うちに喧嘩売ったこと、後悔させてやるよ、小僧が」
「その口が、減らず口でないことを祈ってるよ。グレンダ……じゃあ訓練場に行こうか」
静寂が辺りを包む中、バチバチと視線で火花を散らす二人の足音のみがギルド内に響いていた。
◆作者の願い
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◆技解説
スキル技録
彩王の覇気・王蛇絢爛 周囲の生物に防ぐことの出来ない威圧感を与える 蛇には効果絶大 範囲は自由に調節可能 スキルによって軽減される場合あり『秘匿事項あり』
◆蛇足
語り部「ライトは巻き込まれ体質なのか?」
蛇の王「巻き込み体質なのではないか?結局の処は乗り気ではあるからな。自分の持って行きたい方向に運命が来るのじゃよ」
語り部(いや、全然そう思えない。お前との契約とか巻き込まれの典型じゃん)
蛇の王「何故そう微妙な目で我を見てくる?」
語り部「なんでもない~い。あ、そう言えば本編と後書きのセリフの間を無くすという作業をしたぞ」
蛇の王「露骨に話題逸らすではないか……何を隠しておる?」
語り部「別に隠しては無いぞ」
蛇の王「本当かのう~?」
この日、語り部は一日中蛇の王に疑いの目を向け続けられた。




