第26話:湯気の残り香、二人の鼓動が重なる場所
◆ あおいちゃん視点(21歳・あおい)
シャワーを浴びて、バスタオルで髪を拭きながら脱衣所を出た。
圭介さんは、私が用意したパジャマを着て、ベッドの端にちょこんと座っていた。少しだけ肩をすぼめて、緊張しているのが背中から伝わってくる。
その姿を見たら、胸の奥から溢れるような愛おしさが止まらなくなった。
もう、理屈なんてどうでもいい。
私は彼のもとへ駆け寄ると、濡れた髪を気にせず、火照った身体のまま、その背中にぎゅっと抱きついた。
「……圭介さん」
背中越しに伝わる、彼の大きな鼓動。ドクン、ドクンと、私の心臓と同じリズムを刻んでいる。
お風呂上がりの熱と、彼への大好きな気持ちで、私の顔はきっと今、これまでで一番赤くなっているはずだ。
「もう……ずっと待ってたよ?」
私は彼に顔を寄せ、その耳元で小さく囁いた。
◆ 課長さん視点(37歳・嶋田)
背中に感じた、柔らかくて、温かい感触。
あおいちゃんの濡れた髪から滴る雫が、シャツの首元を冷たく刺激するけれど、それ以上に彼女の体温が俺の心に深く食い込んでいく。
「あおいちゃん……」
喉が引きつったように鳴った。
後ろから抱きしめられ、耳元で囁かれる彼女の吐息。
もう、ダメだ。大人の理性も、三十七歳の落ち着きも、メーカーの課長としてのプライドも、すべてが崩れ去る音がした。
俺はゆっくりと身体を反転させ、あおいちゃんを正面から抱き寄せた。
目の前には、お風呂上がりで火照った、あどけないのに女性らしい彼女の瞳。
「……君は、本当に、俺をどうするつもりなんだ」
そう言いながらも、俺は彼女の細い腰に手を回していた。
あおいちゃんの顔が、湯気と恥ずかしさで真っ赤に染まっている。
俺の心臓は、耳を塞いでも聞こえるくらいの爆音で鳴り響いていた。
もう、言い訳はしない。心の声も漏らさない。
ただ、この温もりだけを一生抱きしめていたい。そう思った俺は、震える手で彼女の青い髪を優しく撫でた。
「……あおいちゃん。朝まで、ずっと一緒にいてくれるね」
その言葉は、俺の人生で一番、重くて、甘い、本当の約束だった。




