第24話:湊そっくりのクマのぬいぐるみ
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ショッピングモールを出た俺たちは、近くのゲームセンターへと足を踏み入れた。
電子音と賑やかなBGMが響く店内を二人で並んで歩いていると、不意に結愛があるUFOキャッチャーの前で足を止めた。
「あれ? なんかこのクマさん、既視感がある……」
結愛はショーケースの中にある、少し眠たそうな目をした茶色いクマのぬいぐるみを見つめて、小さく首を傾げる。
それからクマと俺の顔を何度か見比べて、ポンッと手を叩いた。
「湊くんだ! なんか誰かに似てると思ったら、湊くんだこれ! ふふっ、可愛い……これ欲しいかも」
「俺? ……まあ、結愛が欲しいなら取ってあげるよ」
「えっ、ほんと!?」
俺は百円玉を入れて、レバーを操作する。
狙いを定めてボタンから手を離すと、アームがウィーンと下がり、クマのぬいぐるみをガッチリと掴んだ。
そのまま持ち上がり、ゴトンッ! と小気味いい音を立てて取り出し口に転がり落ちる。
「ええっ!? すごい!!」
「お、一発で取れたな」
景品を取り出して渡すと、結愛は目を丸くして驚いていた。
「湊くん、UFOキャッチャーデートでやっても全然取れなかったのに……!」
「えっ、そうだったのか? じゃあ、たぶんビギナーズラックだな」
「記憶なくしたらハイスペックになってる……! ありがとう、すっごく嬉しい! 大事にするね。なんなら今日からこれと一緒に寝る!」
「……俺そっくりのクマと一緒に寝られるのは、なんかちょっと恥ずかしいな」
俺が思わず頬を掻くと、結愛は「えへへ」と嬉しそうにクマを抱きしめた。
「湊くんにも何か取ろうか?」と結愛が言ってくれたが、特に欲しいものもなかったので丁重に辞退した。
その後は、二人でバスケットボールのゴールにシュートを入れるゲームで対決したり、ガンシューティングで一緒にゾンビを倒したり、マリオカートのようなレースゲームでワイワイと遊んだ。
「そういえば、あっちにプリクラ機があったけど、あれは撮らないのか?」
一通り遊び終えた後、俺がふと尋ねると、結愛は少しだけ困ったように苦笑いした。
「うーん……私、あれはあんまり好きじゃないんだよね。目が大きくなりすぎちゃって、自分じゃないみたいで」
「あ、そうなんだ。女の子はみんなああいうの好きなのかと思ってた」
「ふふっ、女の子にもいろいろいるんだよ」
(なるほど、女の子にもいろいろいるのか……)
彼女の新しい一面を知れた気がして、俺はなんだか少し嬉しくなった。
ゲームセンターを出た俺たちは、駅前に新しくオープンしていたクレープ屋に立ち寄った。
甘いクレープを二人で分け合いながら、のんびりと歩いて帰路につく。
時計の針が午後三時を少し回った頃、俺の家へと到着した。
玄関の扉を開けると、土曜日出勤だったはずの両親の靴がすでに並んでいた。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
リビングに入ると、仕事着から着替えた両親がコーヒーを飲んでくつろいでいた。
「あら、おかえり。二人とも、楽しかった?」
「おう、楽しかったよ」
「はいっ! とっても楽しかったです!」
俺と結愛が笑顔で答えると、両親は心底ホッとしたような、優しい表情を浮かべた。
「よかった。湊が記憶喪失になってから、私たちも仕事でバタバタしてて、あんまり構ってあげられなかったから心配だったのよ」
「母さん……」
「結愛ちゃんに任せて本当によかったわ。いつもごめんね、そしてありがとうね」
深々と頭を下げる母さんに、結愛は慌てて首を横に振った。
「そ、そんな! 私の方こそ、湊くんと一緒にいられて毎日すっごく楽しいですから! 気にしないでください!」
うちの両親にもすっかり愛されている結愛を見て、俺は改めて、彼女が俺にとってどれだけ大切な存在なのかを実感していた。
その後、俺たちは二階の自室へと向かった。
部屋に入り、買ってきた紙袋からペアルックのスウェットを取り出して広げる。
「今、着てみるか?」
「ううん、明日の朝まで楽しみに待っておく!」
結愛はスウェットを綺麗に畳み直すと、俺のベッドの縁にちょこんと座り、自分のスマホを取り出した。
「湊くん、こっち来て」
呼ばれるまま隣に座ると、結愛はスマホの画面を開いて俺に見せてきた。
そこには、楽しそうに笑う過去の俺たちの写真がたくさん保存されていた。
「これはね、ここに行った時の写真でね。この時、湊くんがこんなこと言って……」
写真を見せながら、結愛は嬉しそうに当時の思い出を語ってくれる。
俺にはまだその光景を思い出すことはできないけれど。
結愛の弾むような声を聞きながら写真を見ていると、まるで自分がその場にいるような、不思議で温かい気持ちになった。
穏やかな時間はあっという間に過ぎ去り、窓の外が綺麗な茜色に染まり始める。
「あ、もうこんな時間だ」
結愛がスマホの時計を見て立ち上がった。
「それじゃあ、今日はもう帰るね。湊くん、また明日!」
とびきりの笑顔で手を振る彼女に、俺も立ち上がって応える。
「ああ、送っていくよ」
「えっ、いいの?」
「当然だろ。彼女なんだから」
少しだけ驚いた後、パァッと顔を輝かせた結愛と共に、俺は再び玄関へと向かった。
明日になれば、また彼女がこの家にやってくる。
そんな当たり前の未来が、今はどうしようもなく待ち遠しかった。
第24話をお読みいただき、ありがとうございました!




