表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全部奪われた俺が、ゼロから王になる話  作者: 月城リク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/27

3話 古びた灯火

読んでいただきありがとうございます。

ブックマークしていただけると励みになります!

深い闇の底からアッシュを引き戻したのは、パチパチと爆ぜる薪の音と、鼻を突く苦い薬草の匂いだった。


「……う、あ……」


重いまぶたを押し上げると、煤けた天井が視界に入った。脇腹に走る鋭い激痛に、アッシュは思わず顔をしかめる。


「気がついたか。ひどい傷だったが、運が良かったな。崖から落ちて助かったのは奇跡に近い」


傍らで薬草をすり潰していた一人の老人が、静かに声をかけてきた。


白髪混じりの髪に、深く刻まれた皺。


その瞳はどこか世捨て人のような静けさを湛えている。


「ここは……。じいさん、なんで、僕を……」


「死に損ないを放っておくほど、心は枯れておらんだけだ。今は寝ていろ。体力が戻らねば、話もできん」


老人は詳しくは何も聞かず、ただ数日間、淡々とアッシュの傷を癒してくれた。


アッシュは高熱にうなされ、意識が混濁する中で、老人が運んでくれる粥を飲み、深い眠りと覚醒を繰り返した。

 

数日が経ち、ようやく自力で起き上がれるようになった日の夜。


外で風が鳴る音を聞きながら、アッシュの脳裏に、止めていた記憶が濁流のように流れ込んできた。


(そうだ……あの夜……)


兵士の突きが脇腹を貫いた瞬間。


崩れ落ちた自分。


たまたま急所は外れたが、激痛で指一本動かせなかった。


そこへ、母が泣き叫びながら覆いかぶさった。


自分を守るために盾となった母の背中を、兵士の剣が無慈悲に引き裂いた、あの音。


(母さん……!)


息絶える寸前、母は死力を振り絞って自分を突き飛ばし、外へ逃がしてくれた。


あの震える手の感触。


自分を見つめた、血に濡れた最期の微笑み。


アッシュは布団の中で、包帯の上から傷口を強く握りしめた。


胸を締め付けるのは、母の安否、そして村のみんながどうなったのかという、言いようのない不安だった。


「戻らなきゃ……村に。みんな、どうなったんだ……」


アッシュはふらつく足で立ち上がろうとした。


「よせ。今のその体で行けば、途中で野垂れ死ぬのが関の山だ」

 

老人の冷徹な声が飛ぶ。


だが、アッシュの瞳には、止めることのできない強い光が宿っていた。


「死んでもいい……。でも、確かめなきゃいけないんだ。母さんが、みんながどうなったか、この目で見なきゃいけないんだ!」


老人は溜息をつき、それ以上は何も言わなかった。 


そして暗闇の森の中では、アッシュの荒い呼吸だけが響いていた。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、評価やブックマークぜひお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ