24話 新生の咆哮
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地獄から解放された歓喜の叫び声が絶えず鳴り響く。
つい先ほどまで鞭の音と罵声が支配していた場所には、今、自由を手にした数百人の民たちの荒い呼吸だけが満ちていた。
足元の鎖は断ち切られ、泥にまみれた彼らの瞳には、戸惑いと、それ以上に強烈な「希望」の光が宿っている。
アッシュは返り血を拭うこともせず、一番高い岩場へと歩みを進めた。
その隣には、巨躯を揺らしながらギランが控え、周囲を威圧するように立っている。
「……皆、聞け!」
アッシュの声が、岩壁に反響して響き渡った。
ざわついていた民たちが一斉に口を閉じ、岩場の上に立つ一人の少年に視線を注ぐ。
「今日、お前たちを縛っていた鉄の鎖は壊された。だが、心にある鎖はどうだ? このまま逃げ出し、どこか遠くで隠れて、また別の国で奴隷として使い潰されるのを待つのか!?」
厳しい問いかけに、民たちが顔を見合わせる。
「……嫌だ。もう、あんな地獄は御免だ!」
「でも、俺たちに何ができる! 」
「何度も逃げ出そうとした!!でもその先は?!逃げた後どうする!国の軍隊が来れば、ひとたまりもない……!」
悲痛な叫びが上がる。
アッシュはゆっくりと、胸元の銀の首飾りを引き出した。
朝日を浴びて、盾と剣の紋章が神々しく白銀に輝く。
「この紋章を覚えているか! かつて、僕の父やお前たちが、平和のために掲げた旗印だ!」
最前列にいた老いた奴隷が、膝を突き、震える声で叫んだ。
「……それは、カイゼル大将の……救国軍の紋章だ……っ!」
「そうだ。僕はカイゼル・レジスの息子、アッシュ・レジスだ。父は裏切られ、母も殺された。だが、僕は生きている。父が願った『誰もが笑って暮らせる国』を取り戻すために、僕は今、ここに立っている!」
アッシュは父の真剣を天高く突き上げた。
「僕は、軍を作る。復讐のためだけじゃない。奪われた名前を、奪われた誇りを、今も各地で奴隷として生きている民を救うために、僕たちの手に取り戻すための軍だ。……僕と共に戦う者はいるか! もう一度、エルダンの国を取り戻したい者はいるか!!」
一瞬の静寂。
そして、真っ先に動いたのはギランだった。
彼は岩場の下で、大地を揺らすほどの勢いで片膝を突いた。
「このギラン、大将の御子にこの命を捧げる! 共に戦おう、同胞たちよ!!」
「……おおおおおっ!!」
地鳴りのような咆哮が、採掘場全体から沸き上がった。
一人、また一人と、屈強な男たちが槌を掲げ、アッシュに向かって膝を突く。
それは単なる暴動の終わりではない。
かつてのエルダン王国の民たちが、一人の少年の元に再び「軍」として集結した、歴史が動き出す瞬間だった。
(父さん、母さん……見てて。ここから、エルダン王国の新たな一歩を始めるよ)
アッシュは高く掲げた剣の重みを感じながら、目の前に広がる新たな「力」を、その瞳に焼き付けた。
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