23話 断罪の銀閃
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「反乱だ! 奴隷どもを叩き潰せ!」
監督官の悲鳴のような号令とともに、十数人の重装歩兵が抜剣し、怒濤の勢いで迫りくる。
対する民たちの手にあるのは、石を砕くため槌のみ。
だが救国軍として戦ってきた者達にはこれだけで充分だった。
「若、ここは俺たちが食い止める! 後方で指示を!」
ギランが素手で兵士の盾を殴り飛ばし、叫ぶ。
だが、アッシュは一歩も引かなかった。
「いや、僕が道を拓く。ギラン、みんなを連れて続いてくれ!」
アッシュは父の真剣を構えた。
眼前に迫る三人の兵士。
彼らはあの日、村を焼き、母を殺した者たちと同じ紋章を胸に刻んでいる。
アッシュの脳裏を過ったのは、憎しみではなく、研ぎ澄まされた静寂だった。
――シュンッ!
空気が裂ける音がした。
アッシュが地を蹴った瞬間、彼の姿は兵士たちの視界から消えた。
バルトとの三ヶ月で体に刻んだ「対人戦」の間合い。
ガギィン!
鋭い金属音とともに、先頭の兵士の厚い胸当てが、紙細工のように両断された。
鮮血が舞い、兵士が絶叫とともに崩れ落ちる。
「な、なんだ今の速さは……!?」
怯んだ次の一人を、アッシュは無駄のない一突きで沈めた。
かつて山で一人で振っていた剣ではない。父の遺した本の図解をなぞるだけでもない。
今、この戦場で、守るべき民を背負ったアッシュの剣は、真の意味で「カイゼル大将の武」として覚醒を始めていた。
「ひ、怯むな! 相手は子供だぞ! 囲めッ!」
残りの兵士たちが包囲しようと動くが、その背後から、ギランを先頭にした大男たちの咆哮が響き渡った。
「誰が子供だと!? この御方は、我らが救世主だッ!」
ギランが奪い取った鉄槌を振り下ろし、兵士を地面に叩き伏せる。
その凄まじい怪力と、アッシュの電光石火の剣技に、採掘場を守っていた兵士たちの戦意は瞬く間に崩壊していった。
戦いはものの数十分で幕を閉じた。
(さすが父の元で戦った兵士だな。)
返り血を浴びながら、アッシュは真っ直ぐに監督官を見据えた。
逃げ腰になった男の喉元に、剣を突きつける。
「……鎖の鍵を渡せ。今すぐにだ」
アッシュの冷徹な声に、監督官は腰を抜かし、震える手で腰に下げた鍵の束を差し出した。
(母さん……父さん…やっと一歩目が踏み出せたよ)
アッシュは心の中で呟き、奪い取った鍵をギランへと投げ渡した。
朝日に照らされた採掘場で、次々と同胞たちの鎖が解かれていく。
自由を手にした民たちの歓喜の叫びが、岩山に木霊していた。
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