21話 軍の矜持、銀の紋章
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アッシュは鉄格子の向こう側、闇に沈むギランを静かに見据えた。
「ギラン。あんたに聞きたいことがある。……かつてこの大陸が一つだった頃のエルダン王国を知っているか」
ギランの巨体が、びくりと震えた。繋がれた鎖が重く鳴る。
「……忘れるはずがない。……どの民も等しく太陽を仰げた、我らが故郷の名だ」
男の声は、深い郷愁と、二度と戻れぬ絶望に震えていた。
「そうだ。だが、今のこの腐りきった国は、その名を捨て、かつての同胞を奴隷に落とした。……あんたも、かつての輝きを取り戻すために、救国軍で戦っていたのか?」
「……ああ。俺はエルダンの栄光を、取り戻すため、各地に散らばった民を救うために救国軍の盾となった。だが、裏切りによって救国軍はなくなり、俺たちは誇りも名前も奪われた。……今の俺は、ただの重い肉の塊だ」
ギランは吐き捨てるように言い、自らの太い腕に嵌まった鉄枷を強く握りしめた。
アッシュは、ゆっくりと懐に手を入れた。
「……呪いなら、解きに来た。この紋章に誓って」
アッシュが引き出したのは、青白い月光を浴びて白銀に輝く一筋の首飾りだった。
そこに刻まれているのは、盾を貫く一振りの剣。
それは国の紋章ではない。
かつてカイゼル大将が率い、虐げられた民のために戦った『救国軍』の紋章だ。
「……ッ!!? その……その銀の紋章は……!」
ギランの呼吸が止まった。
弾かれたように鉄格子に食らいつき、その巨体で柵が歪まんばかりに身を乗り出した。
濁っていた瞳が、その輝きを映して見開かれる。
「それは……我ら軍の……! なぜ、それを、お前のような小僧が……。カイゼル大将は死んだはずだ。エレン様も、……処刑されたと!」
「母さんは、僕を身籠ったまま逃げ延びてくれた。死ぬ間際まで、僕に父さんの優しさを語りながら、僕を守り抜いてくれたんだ」
アッシュは、涙で顔を歪ませるギランの大きな手に、鉄格子の隙間からそっと手を重ねた。
「僕は、エレン・レジス…カイゼル・レジスの息子だ。ギラン。……僕と一緒に、もう一度、父さんが志した国を取り戻してくれないか?」
ギランは独房の冷たい床に額をこすりつけ、むせび泣いた。
かつての英雄の息子との邂逅。
それは、死に絶えていた戦士の魂が、再び熱い産声を上げた瞬間だった。
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