18話 鉄と泥の咆哮
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乾燥した風が、白い石粉を巻き上げる。
視界の先には、巨大な岩山を無残に抉り取った採掘場が広がっていた。
すり鉢状になった底へ向かって、蟻の列のように、鎖に繋がれた民たちが這いつくばっている。
カン、カン、カン――。
絶え間なく響く重苦しい音は、槌が岩を打つ音。
だが、時折混じる「ピシィッ」という鋭い音は、監視兵たちが振るう鞭の音だった。
「……これが、バルトが言っていた場所か」
アッシュは岩陰からその光景を苦々しく見つめた。
王都の路地裏にいた者たちよりも、ここに送り込まれている民は一様に体格が大きく、屈強な骨組みをしていた。
岩を砕き、巨石を運ぶための「動力」として選別された者たちだ。
だが、その強靭な体格には肉が削げ落ち、浮き出た肋骨が過酷な労働を物語っている。
アッシュは父の真剣をボロ布で幾重にも包み、大きな薪の束の中に隠して背負った。
身分は、食料や資材を運び込む「下働きの運搬人」
王都から流れてきた浮浪の若者を装い、アッシュは監視の目を掻い潜って採掘場の内部へと足を踏み入れた。
鼻を突くのは、汗と泥、そして鉄錆の混じった不快な臭い。
すれ違う民たちの瞳に、光はない。
彼らはただ、泥にまみれた手で重い槌を振るい、倒れれば蹴り飛ばされるだけの存在に成り果てていた。
「おい、お前!ぼさっとするな、これをあっちへ運べ!」
太った監督官が、アッシュの肩を乱暴に突く。
アッシュはわざとふらつくふりをして、深くフードを被り直した。
視線は常に、現場の状況を冷静に分析していた。監視兵の数、配置、そして鎖の継ぎ目。
(……一人で暴れても、ここは制圧できない。まずは、彼らの中に『芯』となる者を見つけなきゃいけない)
アッシュが泥濘に足を取られながら進んでいた、その時だった。
一段と高い岩場の上で、ひときわ大きな、まるで岩壁が動いたかのような巨影がよろめいた。
「……あ、が……っ」
他の民よりもさらに頭一つ分は大きい、文字通りの巨漢。
あまりの重労働に、ついにその膝が折れたのだ。
周囲に響く、重々しい鎖の音。
アッシュの足が止まる。
その巨漢の瞳の奥に、絶望に塗り潰される寸前の、微かな「怒り」の火が見えた気がした。
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