16話 再起の街、静かなる誓い
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背後でバルトが深く頭を垂れる気配を感じながら、アッシュは一度も振り返ることなく山を下った。
父の真剣を帯び、確かな「武」をその身に刻んだ今、足取りに迷いはない。
数日後、アッシュは再びあの因縁の街、「バザール」へと辿り着いた。
活気ある表通りのすぐ脇、一歩路地裏へ入れば、そこには鉄の枷をはめられ、泥の上に力なく座り込んでいる男たちがいた。
「……ッ」
アッシュは足を止め、息を呑んだ。
男たちは皆、虚ろな目をし、ボロ布を纏って家畜のように引き回されている。
かつての統一国家。エルダン王国の民――父が命を懸けて守ろうとした同胞たちだ。
この国がバラバラになった後、彼らはどこの国でも奴隷として虐げられる存在に成り下がっていた。
「おい、ぐずぐずするな! 飯を食わせている分くらいは働け!」
鋭い鞭の音が響く。
一人の男が荷車を引ききれず、膝をついた。
監督官が容赦なくその背を蹴りつけ、汚れた泥の中に顔を埋めさせる。
アッシュの右手が、無意識に剣の柄に伸びた。
三ヶ月、バルトとの死線で磨き上げたこの腕なら、目の前の役人など一瞬で斬り伏せられる。
胸の奥から、はち切れんばかりの怒りと衝動が突き上げてくる。
(……助けたい。今すぐ、その鎖を……!)
だが、アッシュは震える拳を太腿に叩きつけ、かろうじて踏み止まった。
今ここで、目の前の数人を救ったところで、自分はただの「お尋ね者」として追われるだけだ。
そうなれば、国中に散らばり、今も地獄を味わっている何万という同胞を救う術は永遠に失われる。
(……すまない。今は、耐えてくれ……)
アッシュは顔を伏せ、唇から血が滲むほど強く噛み締めた。
助けを求めるような同胞の呻き声を背中に受けながら、彼はあえてその場を通り過ぎた。
一歩、また一歩と遠ざかる足取りは、鉛のように重い。
(必ず戻ってくる。……一人残らず、その鎖を断ち切りに、僕が必ず戻ってくるから!)
心の中で猛烈に誓い、アッシュは二度と振り返らなかった。
彼らを再び一つの「軍」として束ね、この国を根底から作り変える。
その孤独な決意とともに、アッシュはさらに多くの同胞が集められているという場所を目指し、街の門を抜けた。
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