表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全部奪われた俺が、ゼロから王になる話  作者: 月城リク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/27

10話 剥き出しの過去

読んでいただきありがとうございます。

ブックマークしていただけると励みになります!

囲炉裏の火が、静かに爆ぜる。


老人が差し出した薬を飲み干すと、体の奥からじわりと熱が広がった。


強張っていた筋肉が、ゆっくりとほどけていく。


「……助かったよ、じいさん。前もそうだったけど、あんたの薬はよく効く」


身支度を整え、立ち上がる。


首元に手をやる。


だが――紐は切れている。


街での乱暴の中で、引きちぎられたのだろう。


今は、上着の浅いポケットに押し込んであった。


「恩に着るよ。じゃあ、行くわ」


軽く手を挙げ、扉へ向かう。


外はすっかり夜。


冷たい空気が、隙間から流れ込んでくる。


だが――


その一歩が、僅かに狂った。


「おっと……っ!」


膝が抜ける。


踏み出した足が引っかかり、体勢が崩れる。


前のめりに倒れ、手をついた。


その瞬間――


ポケットから、銀色の塊が滑り落ちた。


カラン、と乾いた音。


転がったそれは、囲炉裏の火を受けて淡く光る。


――母の形見。


アッシュが手を伸ばす。


だが、それよりも速く。


空気が、変わった。


「……おい」


低く、這うような声。


振り返る。


そこにいたのは――


見たことのない老人だった。


目が、違う。


呼吸が、違う。


纏う気配すべてが、別人のようだった。


「……それを、どこで拾った」


一歩、詰め寄る。


足音が、やけに重い。


「拾ったんじゃない。……母さんのだ」


言った瞬間――


老人の肩が、びくりと震えた。


「母親の……?」


声が、かすれる。


「……名を言え」


一歩、さらに近づく。


「お前の母親の名を――言えッ!」


掴まれる。


両肩を、強く。


骨が軋むほどの力。


その目は、もはや理性を保っていなかった。


「……エレン。エレン・レジスだ」


言い終えた瞬間。


力が、抜けた。


老人の手が離れる。


そのまま、崩れ落ちる。


膝をつき、床に手をつく。


そして――


「……生きて、おられたのか……」


震える声。


「……あのお方は……生きて……おられたのか……っ」


顔を覆い、嗚咽が漏れる。


静かな小屋に、不釣り合いなほどの涙。


アッシュは、動けなかった。


ただ、見ている。


目の前の老人が――


自分の“母”の名に、心を乱している。


理解が、追いつかない。


老人がなぜ泣いているのか。その涙が何を意味するのか。


アッシュにはまだわからなかった。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、評価やブックマークぜひお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ