22—しげき兄ちゃんの物語 7 <初通報>
通話が終わりそうになった時、あおいちゃんが机の上においていたブドリ君の腕の袖を引っ張った。
ケヤキさんからあおいちゃんに連絡があった。
「ブドリさん。うちの市(六王市)の北の方の山で山火事が発生したそうです。まだ小火です。」
「あ、すいません。課長さん? 六王市の北の方で山火事が発生したそうです。ご存知ですか? 通報はありましたか?」
『…?』
「直ぐに調べてみてください。まだボヤのようです。」
『…! …。 …。』
「はい。 私の家からで煙は見えませんね。カラスを飛ばします。一旦電話を切ります。じゃあ、後ほど。」
ブドリ君は通話を切ると、カー太ンの方を向いて語りかけた。
「山火事の場所の確認をお願いできるかな? 隣の市で少し遠いけど。」
「カー。」
カー太ンは庭に飛び出し、直に4羽のカラスが北西の空へと飛び立った。
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40分ほどしてカー太ンが戻って来た。
「カーカ、クククク。」
「うん。分かった。」
ブドリ君は再通話機能で課長を呼び出した。
「あ、課長さん。山火事は北山町のさらに北の山です。」
『…?』
「はい。カラスが確認しました。まだ炎は小さいようです。焚き火が原因のようです。その上空でカラスが3羽旋回しています。それを目印にしてください。」
『…、。』
「そうですね。これで火災を発見できることを信頼してもらえるとよいのですが。」
『…!』
「ありがとうございます。…はい。それでは。」
と言って、ブドリ君は電話を切った。
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結局、あの時の山火事は、他人の山に入り込んでソロキャンプをしていた人の焚き火が下草に燃え移ったことによるものだったそうだ。通報が遅れたのは、無断で私有地でにキャンプしており通報を躊躇したこと、山の中で携帯の電波が弱くかったのが理由だそうだ。さらに、燃えたのは乾いた下草だったため、煙がほとんどでなかった。そのため、目視に依る火災発見が難しかったそうだ。
幸いに旋回するカラスを目指した地域の消防団が現場を見つけ、小火のうちに消し止めることができたそうだ。「そうだ」と伝聞形が多いのは、この火事はボヤのうちに消し止められてニュースにならなかったからだ。それに、消防団から地域の消防署経由で県庁へ、顛末が報告されるまでに時間がかかった。
このⅠ件で、『ノルマル姫の伝言』は県の消防関係者の間で、『マリアの予言』と同様に県の消防に認知された。
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いつもの三島家の食卓でいつもの3人がヒヨコまんじゅうを食べながらのんびりまったりと会話している。
「ブドリさんの話しでは、この前の山火事の通報で、『ノルマル姫の伝言』は信用を獲得したそうだよ。」
「それは良かったわね。」
ゆかりちゃんが答える。
「でもブドリさんのところのカラス、え〜とカー太ンさんだったっけ、カラスさん達がいなければ、場所を伝えることができなかったわよね。」
あおいちゃんはヒヨコまんじゅうのお尻を見ながら、そんなことを言った。
山火事の通報の難しさ、特に火災の発生場所を伝えることの難しさが明らかになった。今回はカラス達の助けで、場所を伝えることができたが、その助けが無ければ、山の中の火災現場を伝えることはできないだろう。今後の課題だ。
一方、街中の場所の特定は比較的容易だ。樹木達も自分の植わっている町名は分かっているようだ。そして、区割りが細かい分だけ、場所の特定は容易そうである。まずはできることから始めましょう。
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