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狭間の世界にて  作者: リオン/片桐リシン
22—しげき兄ちゃんの物語 全7話
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22—しげき兄ちゃんの物語 5 <コードネーム>


 「ところで本題ですが…」

しげき兄ちゃんはさすが年長者だ、訪問の目的を見失わない。

 「それですが、あなた方だけを匿名でと言う条件はなかなか難しいと思います。一方で、私はカラスを使って人命救助の助けをしていますが、ある程度私の正体をかくして活動できています。 提案できるのは私と同じ方法です。最初に行政機関の信用を獲得するまでは、私と連携して情報を流すのはどうでしょうか?」

 「つまり、まず最初は山火事情報をブドリさんに教えて、それをブドリさんから消防に流すということですね。」

お兄ちゃんがまとめてくれた。

 「そうです。でも、それだけではなく、ほぼ同時にそちらからもまずは匿名で消防へと連絡してください。私はその情報の保証をする形ですね。私(ブドリ君)から間接的な連絡では、どうしても即応性に欠けます。できれば、あおいちゃんか三島さんから消防署へ直接連絡するルートも作りたいのです。」

 「それなら、僕が連絡役を引き受けます。」

お兄ちゃんが連絡役を引き受けてくれた。

 「分かりました。そうしたら、一度、私の方からうちの県の消防のトップに話しを通しておきます。『匿名さん』では他の人の通報がノイズになります。何かコードネームを付けてください。」

 「『エルフの女王』はどうですか?」

すぐにゆかりちゃんが提案した。

 「悪くはないが、それだと直ぐにあおいちゃんにた辿り着きそうだなぁ。」

しげきお兄ちゃんがゆかりちゃんの提案を却下した。ゆかりちゃんが少し膨れている。

 「そうですね、『エルフの女王』は、ミヤサワ君から聞いているあおいちゃんの行動と重なってしまいますね。しげき君には何か代案がありますか?」

 「『ノルマル姫』はいかがですか?」

 《あ、またパーリットルの作り話になった。しげき兄ちゃんには何かこだわりがあるのかな?》

とあおいちゃんは思った。

 「じゃあ、しげき兄ちゃんは『モーラー』ね。」

とゆかりちゃんが混ぜ返した。

 「じゃあ、ゆかりは『グラム』な。」

と、しげき兄ちゃんはやり返した。

 《私のコードネームの『ノルマル姫』って、…何かしっくり来るのよね。》

 《私のコードネームの『グラム』って、どこから来たのよ。でも、まあしっくりくるわ。良いわ。》

 女の子二人は何となくそう思った。このように3人のコードネームが決まった。


 三人のコードネームの会話を聞いて、物理学科の大学院生のブドリ君は苦笑した。

 《なんか『濃度』の高いコードネームだな。》


 ブドリ君は3人に告げた。

 「最初はうちの県の山火事から通報してください。」

あおいちゃんが口を挟んだ。

 「あの〜。山火事だけではなく市街地のボヤも傍に樹木があれば、わかります。」

 「それは良いですね。それなら通報数が多くなるから、信用獲得までの時間をかなり短縮できる。でも、その場合、通報者が『放火犯』じゃないかと疑われるおそれがあります。 う〜ん。なにか工夫が必用ですね。」


 あおいちゃんが口を挟んだ。

 「あの〜。放火などの犯人情報を添えるのはどうでしょうか?」

 「犯人情報と言うと?」

ブドリ君が訊ねた。

 「服装とか特徴とかどっちへ逃げた、などの情報を一緒に伝えるんです。放火犯本人なら、そんな情報を消防には言わないでしょ? 」

 「なるほど? それは『樹木』の目撃情報を伝えるということだよね。そんな放火犯の風体も分かるの?」

 「樹が現場の傍にいれば、ある程度は。」

その話しを聞いてしげきは

 《まるで監視カメラを張り巡らしているようなもんだな》

とブドリ君は思った。


 「あおいちゃんは触れていないくても、樹木と意思の疎通ができるの?」

この疑問は、火災連絡においてとっても重要だ。火災の通報は一分一秒を争う。毎日1、2回、12時間おきの確認では役に立たない。

 「ポケットの中に、ケヤキさんの小枝とか、葉っぱを入れておけば、常時ケヤキさんと意思の疎通ができます。ケヤキさんからの呼びかけが聞こえます。」

 《まるでポケベルとか携帯電話みたいなもんだな》

としげきは思った。


明後日31日がリシンの最終出勤日です。

その後は毎日が日曜日...

ボケてしまうのではないかと心配しています。

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