表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/34

32 ぐーたら令嬢、有意義な休暇を過ごす

 幸い、テストはいい成績で終えることが出来た。

 テストを終えると、長期休暇が始まる。

 入学して以来、私は公爵邸に帰っていない。勉強に集中したい、と言い訳してはいるが本音はお察しである。まあ、向こうとしても、役に立ってはほしいが顔は見たくない、というのが本当のところだろう。

 長期休暇の期間はおよそ2ヶ月。生徒たちの実家が多い都心部と郊外に建つ学園ではかなり距離があるので、休みに入っても家に戻らない生徒も多い。そのため、食事は各自用意する必要があるが、設備は開放されているので生活には困らないのだ。

 5歳の時、初めての長期休暇を前に、帰りたくない、と言った私をヘスマンはとがめなかった。優しく頷き、公爵に言い訳をして、長期休暇中私が暇をしないように、本や遊び道具をそろえてくれた。

 長期休暇のたびにそうやって過ごし、それは今年も変わらない。

 図書室で借りてきたり、ヘスマンが手配してくれたりした本や遊び道具を部屋に敷き詰め、心地のいい服で上質な椅子に腰掛ける。手近な本をとってページを開き静かな空気の中でひたすら読み進めた。目が疲れたら本を置き、傍らの遊び道具を引き寄せてしばらく手の中でもてあそぶ。チェスやらオセロやらはヘスマンに相手をしてもらいつつ、そうやって最初の一週間を過ごした。

 この人生を始めてから、文字を覚える必要性に駆られて本を読むようになった。が、他に娯楽もないこの世界で、文字さえ覚えれば楽しめる読書というアクティビティはかなり私の支えになってくれた。

 前の人生は飽きたら寝ていたし、その前はスマホという圧倒的な存在がいたので特段本を愛することもなかったのだが、楽しさに気づいてしまってもう虜だ。

 そんな読書家の私を持ってしても、流石に一週間たつとだんだん部屋にいることに疲れてくる。

 そんなときは、運動着に着替えて外に出るのだ。

 人気のない運動場に、身軽で汚れてもいい服で立つとどこか懐かしい気持ちになる。襲ってくるのはあのときのような憂鬱ではなく、体を動かせるうれしさなのだが。

 この世界で女性が運動することはあまり奨励されていない。というかむしろ積極的な反対を受けるレベルである。しかし、これから何が起こるかわからない私の人生のこともあるし、何より慣れない学園生活は体力勝負。運動は不可欠である、というのが私の結論だった。

 貴族の一般的な道徳観を持つヘスマンは、最初この主張にいやな顔をした。ヘスマンが私の言葉にそんな顔をするのは珍しいので、よほど女性の運動が禁忌なのだと知れた。とはいえ折れるわけにも行かず、1時間にわたる大激論の末、私は運動の時間をもぎ取ったのだった。ただし、ヘスマンによって人払いのされた中で、絶対に人が来ない決められた時間だけ、という制約付きだが。まあ、彼にしても私が運動していることを誰かに知られ、そしられるのは本意でないのだろう。

 そういうわけで、ヘスマンによる鉄壁の防御の中で、私は1時間だけ体を動かす。

 最初はストレッチ。それから筋トレ、ジョギング。

 全く知識はないのでなんとなくだ。日本で見た筋トレの動画やラジオ体操なんかを思い出してまねているだけ。効果的な運動には鳴っていないだろう。

 とはいえ、運動不足な体では、やはり汗をかくし喉も渇く。

 運動の時間が終わったら水分補給をしてお風呂に入り、十分に体を休めるまでがセットである。

 そして回復したらまたしばらく部屋にこもり・・・。

 こんな生活の合間に、時々招かれるお茶会やら舞踏会やらへ参加して、私の長期休暇はすぎていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ