31 ぐーたら令嬢、友情と復讐に悩む
初夏のシェブランアカデミーはテスト期間に入った。
ただでさえ次が最終学年。また、最優秀者となりパレス住まいと言うこともあって注目されているせいか、勉強には気合いが入る。
例のごとく、ヘスマンと黒いもやの助けを借りつつタスクをこなす日々。失敗を繰り返すまいと、睡眠時間の確保を重要視することにしたので体調も万全だ。
それから、あの朝の約束は今も継続されている。
てっきり一日だけのことだと思っていたのに、明日も、と毎日言われ続け、成り行きで毎朝話すことになっている。幸いにも、王子は自分の言葉を守る人だった。誰もいない、二人だけの時間なのだから楽にするように、といわれ、警護抜きで話すことすら許されている。初めは学校の様子を報告するような内容ばかりだったのがいつの間にか個人的な話になり、今では本を薦め合ったり勉強の相談をしたりしている。本当の意味で、友人と言うべき存在になっていた。
「フー!」
今日も、長く続く廊下の中程で彼が待っている。
フー、というのは私の愛称で、彼だけが私をこう呼ぶ。私もお返しに、彼のことをビリー、と愛称で呼んでいた。
「おはよう、試験勉強の調子はどう?」
「順調!そっちは?」
「これを読み終わった」
ビリーが掲げたのは私が以前勧めた本。王子には試験がないので、今の時期は暇なのだという。ビリーからその感想を少し聞いて、私は教科書で理解しきれなかった部分を相談して。穏やかな時間が流れる。
「頼むから、今年も最優秀者でいてくれよ?」
冗談交じりに笑ったのに笑い返す。
「もちろん、そのつもり!」
ビリーに手を振って別れ、廊下の残り半分を歩く。
今年も最優秀者でいる。それはもちろんそのつもりだ。ただ、理由はビリーのためばかりではない。
「手がかりをつかまなきゃ・・・」
前回の市について、私は未だ手がかりをつかめずにいる。
公爵家よりも大きく、真っ白なあの部屋はどう考えても皇族がらみの物だ。そして、今私が持っている皇族とのつながりは、ここ、パレスしかない。
ビリーに感じている友情は本物だ。その一方で、彼が私の復讐に欠かせないピースであることも、また確かなのだった。




