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27 大事なものを守る鍵

ご覧いただきましてありがとうございます。

ブックマークやいいねもしていただけて、とても励みになります。

 「それで、どうかな? この仕事を君たちにお願いしたいんだけど、どうだろう出来そうかな?」

 俺の問いかけに、三人は力強く頷き合い、代表してティモが元気に答えた。

「はい! 出来ます! やらせてください!!」

 それではと、俺が何となく通訳するような形で、カレヴィさんたちと若干の細かい点を確認していく。

 基本的には毎日シベットがやってくるので毎日1回やって欲しいけれど、大雨が降ったときなどは小川の水が増水して危険なので、必ず休むこととなった。


 『あの、柵に付けた戸のあたりから少し上流に大きな柳の木があるんだけど、その根元まで水がある間は休み、としてもらえるかな?』

『あと、誰かの具合が悪かったり、怪我をしたりしてる時も絶対に無理をしないでね。そういう時は、遠慮しないで誰かがここに知らせに来て欲しいわ』

「はい、わかりました!」

 ジョージさんとレアさんの話を俺が俺の言葉で繰り返すと、三人は目をキラキラさせて大きく頷いた。



 最後に全員で握手をする。

 ではまた明日、と何度も振り返りながら笑顔で帰っていく小さな背中が見えなくなるまで、農園主と奥方たちは、手を振りながら見送ってくれた。


   ◇   ◇   ◇


 『そうだ! 私からみんなにプレゼントがあるんだよ』

 足取りも軽く小屋の前まで帰ってきた子供たちに、満面の笑顔でそう言って、ギルマスは馬車の後ろで何やらゴソゴソやりだした。

「ヒューゴさんからみんなにプレゼントがあるんだって、何だろうね?」

 これ、実は俺も聞かされていない。

 みんなで、何だろうねーと言いながら待っていると、ギルマスは工具箱と一緒に、南京錠と掛け金を持って戻ってきた。


 『君たちの大事なものを守るためには、これが必要だろうと思ってね』

 ギルマスは茶目っ気たっぷりの笑顔でウインクし、意外にも慣れた手つきで、鼻歌交じりに金具をねじ止めしながら言った。

 取り付けた高さは、子供たちに合わせて若干低めである。

『この鍵があれば、安心してみんなで出掛けることもできるだろう?』


 掛け金と南京錠をつけ終えると、ギルマスは鍵を三つ持って、目線を少しでも近づけるように子供たちの前にしゃがむ。

 鍵には、ペンダントにするのに丁度良さそうな長さの革ひもが付いていて、それを一人ひとりの首にかけてやりながら、ギルマスはさらにこう続けた。

『私の大事な小屋を管理してもらうわけだから、このくらいはさせてもらわなくちゃね。私から君たちへのプレゼントだよ』


 ギルマスは、ちょっと赤い顔をして照れくさそうに笑っている。

 その言葉を、俺の言葉で繰り返してやると、子供たちもまた興奮に頬を赤くしながら、口々にありがとうございます、大事にします、頑張ります、と言って笑った。


   ◇   ◇   ◇


 レンニに水と飼葉を出してやり、ひと息ついたら出発である。

「また来るからなー。みんな頑張れよー」

「ありがとうございますー、頑張りますー!」

 子供たちに見送られ、馬車はゆっくり動き出した。



 『ちょっと……もう一カ所寄って行きたい所があるんだ。そこでもう一泊野営になるけど、いいかな?』

 俺に見せたいものがある……なんてギルマスに聞かされては、もちろん俺に断る選択などない。

 例の廃屋のあたりから街道に戻るかと思った馬車は、そのまま小川沿いに少し下り、次の小さな橋を渡ってさらに山脈の方へと進むようだった。


 時刻は既に昼を過ぎているので、馬車に乗ったままで昼食をとることにする。

 さっき農園に行った時、ナラさんは俺とギルマスの分の弁当も用意してくれていたのだ。

 中身は、自家製ハムや濃厚な玉子と新鮮な野菜を、全粒粉パンにたっぷり挟んだ、かなり具沢山なサンドイッチだった。

 一緒に状態保存付きの革の水筒に入れて持たせてくれた、冷えた軽い赤ワインとの相性もバッチリである。

 街道と比べると道は若干がたぼこしているが、馬車にもだいぶ慣れてきたし、風も穏やかで日差しも強すぎず、快適な馬車の旅である。



 『何とか、うまく行きましたね』

『そうだね。あとはカレヴィさんたちに任せておけば、大丈夫だよ』

 これからの計画としては、子供たちに手伝ってもらうことでコピ・ルアクの収量を安定させ、何とか商品化に漕ぎつけたい所である。

 そして、三人の子供たちに関しても、焦らずゆっくり良い関係を築いていって、本人たちの希望も入れつつ彼らの環境を少しずつ良くして行く予定だ。

 お風呂に入れてあげたい、髪を切ってあげたい、食堂でごはんを一緒に食べたい……と、二人の奥方たちがめちゃめちゃ張り切っていた。


 『ただ一方的に与えるだけの援助では、意味がないんだよね。かといって搾取になってしまっては、もっと良くないしね』

『誰かが無理をしたり、我慢をしたりするんじゃなくて、なるべくみんなの望む良い形に収まるといいですね」

 馬車に揺られつつそんなことを喋っていたら、馬車の進む道が緩やかな昇り傾斜に入ったのが分かった。



 『あと三十分くらいで着くよ……うん、今日は他に誰もいないみたいだね』

 どうやらそこは、この辺りからさらに奥深い山に入って狩りや猟や採集を行うひとたちが共同で使えるようになっている野営地らしい。

 索敵ってそんなこともわかるんだ、便利だなーなんて考えていたら、レンニが荒く息を吐いて大きく踏ん張り、それと同時に視界がぱぁっと開けた。


 車なら五十台くらいは駐車できそうな広場の手前は芝地で、奥に行くと小石と砂地になり、小川が流れているらしい。

 この広場に繋がっている道は、今来た道のような馬車が通れる程度のものが二本の他に、徒歩や馬で通れそうな細いものが三本ほど確認できた。

 トイレらしい小屋も、馬車サイズの道の割と近くに一つずつある。

 一応ここも冒険者ギルドの管轄だそうで、常駐している管理人はいないが、定期的に巡回しては整備しているとのことだ。


 『でもみんなマナーよく使ってくれているみたいで、散らかっていることはそんなにないんだよね。いろいろと便利な場所にあるから、利用者は結構いると思うんだけど……そうそう、あそこに飲める湧き水もあるんだよ』

 ギルマスが指さした辺りの、広場をはさんでほぼ反対側の山肌に、そのまま飲める水が湧いており、石を積んで水場が整えられているという。

 キャンプするなら水場は近い方が圧倒的に便利なので、他に利用者がいないなら良い場所をキープさせていただこう。


 ギルマスの指示に従って、レンニは進行方向を変え、ゆっくりと水場に向かう。

 湧き水に近付くにつれ、その隣の山肌に結構な大きさのほら穴がぽっかり口を開けているのが見えてきた。

『ギルマス、あれ何ですか? ほら穴?』

 ギルマスは俺の方を振り返り、静かに言った。


 『ああ、あれが、迷いの洞窟だよ、リョウ君』

次回は、2022年4月8日金曜日18時頃の公開を予定しています。

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