プロローグ
プロローグ
二人の男達が、茂みをかき分けながら前へ前へと進んでいた。
「……こっちであってるのか?」
後ろを歩く男が、前を歩く男に言葉を投げかけた。
明るい紫色の短髪に、同じ色をした目。瞳は縦に長い。身長一三三フォーネル程度の引き締まった体躯の背には、一対の蝙に似た、髪色と同じ色をした翼をもつ。背中がこの通りのため、主に体の前を包むような、革製のブレストアーマーを身につける。その他足回りなども含め、ほとんどが魔獣の皮から作られたものだ。
アーサー・スナー。一八歳。英雄みたいな名前を持つ彼は、一六歳に旅立ってからそれなりの時間を冒険者として過ごしている、ベテランの域にさしかかった人物だ。
このガドネア大陸には、一六歳になったら親元を離れて旅に出るという風習がある。これは通称『一六歳修行』と呼ばれ、彼はそれに倣い旅をしている。この二年間の間、様々なパーティに身を置いて来たが、彼と他の者たちとの折が合わず、現在は今の相棒との二人旅だ。
翼の下方、腰部辺りにウェストバッグを縛り付けており、バッグと鎧の間には短剣二本分の鞘がぶら下がっている。短剣自体は、彼の両手にあり、邪魔になる草を切り拓きながら、前をゆく男を追っている。
前を歩く、金髪碧眼の男。身長はアーサーよりも高く一四二フォーネル程度ある。アーサーと同じく革製のブレストアーマーとアンダーアーマーの組み合わせだが、彼の場合は背中まで覆うものだ。
ファーネル・テナイ、一七歳。アーサーとは幼馴染である。ユニス王立学園で学年は違えど中等部まで共に過ごした仲だ。卒業後はアーサーの旅に合流し、二人で旅をしている。
現在地は、彼らの出身地ユニス王国のお隣、デニアス王国。南にタルファームという町があり、そちらより北にまっすぐ延びる街道の途中から少し西側、街道を少し離れた草むらを移動していた。
「ああ、間違いない」
ファーネルは自身ありげに、ロングソードで草を切り分けながら進んでいく。
それから数分進んだ後、彼が宣言したとおり、街道へと戻ることができた。
アーサーは安堵の溜息を漏らし、ファーネルはどうだといわんばかりに胸を張る。そして二人を乗せていたキャラバン隊に合流を果たし、一路北へと進路を取った。
二人は、北への移動がてらキャラバンの護衛依頼を受け、同乗している。今回草むらに飛び込んだ理由は、キャラバンを襲った魔物を追い払うためである。それまでもつかず離れずの距離を保ったまま併走していた魔物にしびれを切らし、その魔物を仕留めるべく草むらへと飛び込んだのだ。討伐自体は成功したものの、かなり深いところまで逃げ込まれたため、戻るのにほんの少しだけ迷ってしまった、というわけである。
何はともあれ、今回は無事にキャラバンを守ることができたことで、二人は安堵した。この先の宿泊地は、申し訳程度のキャンプ地であることから、不安要素はなるべく削っておいた方が良かったというのも、理由だった。




