第7話 希望の在り処
翌朝。
アクアは研究所を休んだ。
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もちろん無断欠勤ではない。
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有給休暇。
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残り少ない貴重な休みだ。
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だが。
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今は研究の方が重要だった。
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「よし」
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机の上にはジョウ博士のノート。
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父が命を懸けて残した夢。
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ブルーマーズ再生計画。
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アクアは再び読み始める。
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設計図。
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理論式。
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実験結果。
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どれも常識外れだった。
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だが。
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成立している。
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少なくとも理論上は。
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「本当にできるの……?」
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ページをめくる。
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すると。
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一箇所だけ折り目が付いていた。
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ジョウ博士自身が何度も見返した場所だろう。
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アクアはそこを開いた。
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【最重要項目】
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赤字。
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【天然飲料水サンプル】
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またそれだ。
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この研究はそこへ行き着く。
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何度も。
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何度も。
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まるで。
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全ての鍵がそこにあるかのように。
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「天然飲料水……」
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アクアは検索端末を起動した。
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データベース検索。
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結果。
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【確認個体数】
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【ゼロ】
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やはり。
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存在しない。
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世界中どこを探しても。
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天然飲料水は見つかっていない。
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「詰みじゃん……」
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アクアは椅子へ倒れ込んだ。
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その時だった。
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首元に違和感。
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「ん?」
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ペンダント。
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父の形見。
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何かがおかしい。
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指で触る。
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細い亀裂。
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昨日まで無かったはずだ。
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「壊れた?」
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アクアは慌てて外した。
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子供の頃から持っている宝物だ。
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壊したくない。
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慎重に調べる。
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すると。
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カチッ。
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小さな音がした。
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「え?」
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ペンダントが開いた。
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初めてだった。
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二十年以上。
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一度も開かなかったのに。
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アクアは息を呑む。
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中には。
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透明なガラス容器。
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とても小さい。
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米粒ほどしかない。
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そして。
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その中に。
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透明な液体。
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一滴。
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たった一滴だけ。
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「これ……」
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アクアは固まった。
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父の言葉が蘇る。
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『困った時に開けなさい』
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『中には希望が入っている』
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心臓が高鳴る。
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だが。
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何なのか分からない。
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ただの水かもしれない。
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記念品かもしれない。
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研究とは関係ないかもしれない。
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それでも。
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何故か。
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捨ててはいけない気がした。
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その時。
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通信端末が鳴る。
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【緊急ニュース】
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まただ。
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アクアは画面を見る。
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そして言葉を失った。
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【オアシスコーポレーション】
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【天然飲料水保管施設の一斉調査開始】
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「天然飲料水……?」
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さらに続く。
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【全世界の天然飲料水関連資料を回収】
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【違法保有者は処罰対象】
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アクアの背筋が冷たくなる。
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なぜ今になって。
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天然飲料水を探している?
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なぜリアが?
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そして。
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机の上。
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開かれたペンダント。
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そこに眠る一滴。
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アクアはまだ気付かない。
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世界中が探しているものが。
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今まさに。
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自分の目の前にあることを。
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窓の外でサイレンが鳴る。
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Water Warは激化している。
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だが。
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世界の運命を変える希望は。
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静かに。
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アクアの掌の中で輝いていた。




