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『最初で最後の水戦争(ウォーターウォー) ~ブルーマーズ最後の一滴~』  作者:


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第18話 その一滴は、新しい海になった


【Blue Mars Rebirth Project】



【起動】



 光だった。



 眩しいほどの光。



 海洋再生プラント全体が輝き始める。



 巨大な塔。



 無数の配管。



 地下深くまで伸びる施設。



 全てが目覚めていく。



 まるで。



 惑星そのものが呼吸を始めるように。



「成功した……」



 アクアは呆然と呟く。



 本当に。



 起動した。



 ジョウ博士の夢。



 二十年越しの願い。



 ブルーマーズ再生計画。



 その瞬間だった。



 空が変わる。



 灰色だった空。



 何百年も雨が降らなかった空。



 そこに。



 雲が生まれる。



 誰もが見上げる。



 リアも。



 アクアも。



 グレイさえも。



 そして。



 一滴。



 雨が落ちた。



 静寂。



 誰も動かない。



 誰も喋らない。



 ただ。



 その雨粒を見つめる。



 やがて。



 二滴。



 三滴。



 十滴。



 百滴。



 雨になる。



 豪雨になる。



 何百年ぶりの雨。



 ブルーマーズの空が泣いていた。



 アクアの頬にも涙が流れる。



「お父さん……」



 リアが空を見上げる。



 濡れることも気にせず。



 ただ空を見ている。



「ジョウ」



 その声は震えていた。



「あなたの勝ちよ」



 だが。



 どこか嬉しそうだった。



 その時。



 プラント中央モニターが最後に起動する。



 ジョウ博士の映像。



 いや。



 違った。



 研究責任者情報。



 アクアは目を見開く。



【Blue Mars Rebirth Project】



【開発責任者】



 その下。



 刻まれていた名前。



【清水 浄】



 静寂。



 アクアの目から涙が溢れる。



 ジョウ。



 浄。



 浄化。



 浄水。



 父の人生そのものだった。



 リアが笑う。



「最後まであなただったわね」



 画面の向こうのジョウも。



 笑っている気がした。



 その時。



 地鳴りが響く。



 全員が振り返る。



 遠く。



 遥か遠く。



 地平線の先。



 何かが見えた。



 最初は誰も信じなかった。



 だが。



 確かに存在した。



 青。



 水。



 海。



 海だった。



 失われた海が戻ってくる。



 川が流れる。



 湖が生まれる。



 雲が広がる。



 雨が降る。



 世界が再び循環し始める。



 グレイは膝をついた。



 敗北だった。



 利益も。



 市場も。



 戦争も。



 全て。



 この瞬間に終わった。



 Water War。



 最初で最後の水戦争。



 その戦いは終わったのだ。



 そして。



 数年後。



 ブルーマーズは再び青い惑星と呼ばれるようになる。



 人々は自由に水を飲み。



 水を巡る争いは消えた。



 オアシスコーポレーションは解体され。



 その技術は全世界へ公開された。



 リアは研究者へ戻った。



 アクアはその隣で働いている。



 そして今日も。



 二人は海を見ている。



 青く輝く海を。



 アクアは空を見上げる。



 父が好きだった景色。



 ジョウが夢見た未来。



 その全てが。



 今ここにあった。



 アクアは静かに呟く。



「ありがとう」



 風が吹く。



 波が揺れる。



 どこかで。



 ジョウが笑った気がした。



 そして。



 世界を変えた始まりの一滴は。



 やがて川となり。



 湖となり。



 海となった。



 そう。



 その一滴は、新しい海になった。



 完

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