第15話 海洋再生プラント
海のない海岸線。
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その言葉の意味を。
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アクアは初めて理解した。
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地平線の彼方まで続く白い大地。
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かつて海だった場所。
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今は塩だけが残っている。
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風が吹くたび。
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白い砂のように舞い上がる。
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「ここが……」
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アクアは呆然と立ち尽くした。
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ジョウ博士が夢見た場所。
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ブルーマーズ再生計画の中心。
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そして。
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世界の未来が懸かった場所。
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その時だった。
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大地が揺れる。
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低い振動。
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まるで巨大な生き物が目覚めるような音。
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リアが微笑んだ。
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「起動したわ」
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次の瞬間。
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大地が割れた。
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轟音。
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砂煙。
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そして。
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地中から現れた。
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巨大な塔。
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一本ではない。
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十本。
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二十本。
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三十本。
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無数の塔が天へ伸びる。
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その全てが。
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海洋再生プラントの一部だった。
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「すごい……」
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アクアは言葉を失う。
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都市より大きい。
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山より高い。
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研究施設という規模ではない。
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惑星改造装置。
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その言葉が最も近かった。
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リアが端末を接続する。
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【Blue Mars Rebirth Project】
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【起動準備完了】
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【進捗率 99.999999%】
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残り一つ。
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本当に。
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最後の一つだった。
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「アクア」
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リアが振り返る。
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「ここから先は戻れない」
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アクアは頷いた。
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迷いはない。
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父の夢。
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ジョウの願い。
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そして。
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Water Warを終わらせるために。
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「やろう」
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その時だった。
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空が暗くなる。
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影。
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無数の影。
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アクアは空を見上げた。
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飛行艇。
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数百。
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いや。
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千を超えている。
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世界中から集まった武装勢力。
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賞金稼ぎ。
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企業軍。
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傭兵。
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水商人連合。
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全てが。
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ここへ来た。
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最後の一滴を奪うために。
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そして。
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最大の飛行艇の甲板。
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そこに立っている男。
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グレイ・マーチャント。
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水商人連合総帥。
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彼は笑っていた。
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「壮観だな」
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拡声器越しの声が響く。
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「ジョウの夢の墓場としては」
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アクアは拳を握る。
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「まだ言うか!」
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グレイは笑う。
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「夢は現実に勝てない」
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「歴史が証明している」
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リアが前へ出た。
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「違う」
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グレイの笑みが止まる。
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「ジョウは負けてない」
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一拍。
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「私達が諦めただけ」
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静寂。
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アクアは驚いた。
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二十年間。
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リアはずっと背負っていたのだ。
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ジョウを救えなかったことを。
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夢を途中で諦めたことを。
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その全てを。
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グレイは鼻で笑う。
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「なら見せてみろ」
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「理想の力を」
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その瞬間。
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全ての飛行艇が砲門を開いた。
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数千。
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数万。
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無数の砲口。
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海洋再生プラントへ向く。
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アクアは息を呑む。
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リアも顔色を変えた。
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グレイは宣言する。
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「最後の一滴を渡せ」
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「さもなくば全て破壊する」
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静寂。
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風だけが吹く。
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アクアは胸元のペンダントを握る。
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ジョウが残した希望。
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最後の一滴。
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世界を救う鍵。
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その時。
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耳元で。
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父の声が聞こえた気がした。
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『本当に大切なのは人だ』
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アクアは目を閉じる。
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そして。
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ゆっくり前へ出た。
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世界中の銃口を前にして。
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恐れずに。
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真っ直ぐに。
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「私は渡さない」
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その声は震えていなかった。
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グレイの目が細くなる。
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そして。
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Water War最後の戦いが始まった。




