第14話 海のない海岸線
世界中が敵になった。
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その事実は重かった。
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テレビ。
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通信端末。
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ネットワーク。
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どこを見てもアクアの話題だった。
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【最後の一滴を保有する少女】
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【一億リットルの賞金首】
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【世界最大の危険人物】
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アクアは頭を抱えた。
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「なんでこうなるのよ!」
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リアが苦笑する。
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「有名人になったわね」
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「全然嬉しくない!」
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本当に嬉しくなかった。
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昨日まで普通の研究員だったのだ。
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それが今では世界中から追われている。
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だが。
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逃げているだけでは終わらない。
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リアは大型ホログラムを表示した。
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ブルーマーズ全体図。
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その中央。
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一点だけ光っている場所があった。
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「ここよ」
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「海洋再生プラント」
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アクアは息を呑む。
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ジョウ博士の夢。
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ブルーマーズ再生計画の中心。
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世界を変える場所。
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「どこにあるの?」
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リアは少し笑った。
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「昔の海岸線」
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アクアは目を瞬かせる。
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海岸線。
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だが。
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ブルーマーズには海がない。
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「だから誰も探さなかった」
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リアが言う。
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「ジョウらしいでしょう?」
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確かに。
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父らしかった。
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未来の海を作る施設を。
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昔の海岸線に建てるなんて。
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少しロマンチストすぎる。
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その時。
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リアの表情が変わった。
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「でも問題がある」
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「何?」
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「プラント起動には三時間必要」
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アクアは固まる。
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三時間。
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長い。
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長すぎる。
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「その間に攻撃されたら?」
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「終わりよ」
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リアは即答した。
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だからこそ。
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ジョウは起動前提ではなく。
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防衛前提で設計していた。
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その時。
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施設中央の大型モニターが起動した。
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見慣れた顔。
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ジョウ博士だった。
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『やあ』
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アクアが思わず笑う。
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「お父さん」
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ジョウは相変わらずだった。
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死んでいるのに。
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妙に明るい。
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『ここを見ているなら』
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『たぶん世界はかなりヤバい』
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「正解」
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アクアが即答する。
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リアも吹き出した。
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ジョウは続ける。
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『そして君達は海洋再生プラントへ向かうはずだ』
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アクアは驚く。
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本当に全部読んでいる。
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『だから一つだけ言っておく』
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ジョウの表情が少し真面目になる。
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『最後の一滴は大切だ』
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静寂。
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『でも』
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一拍。
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『本当に大切なのは人だ』
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アクアは目を見開く。
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『世界を救うために』
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『誰かを見捨てるな』
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『それをやった瞬間』
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『私は失敗になる』
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映像が終わる。
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リアはしばらく黙っていた。
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そして。
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「最後までジョウね」
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少しだけ笑った。
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アクアも笑う。
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だが。
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次の瞬間。
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警報が鳴った。
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【長距離索敵反応】
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【武装飛行艇多数接近】
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リアの顔色が変わる。
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「早い……!」
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モニターに映る無数の赤点。
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数十。
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いや。
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数百。
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空が埋まっている。
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アクアは息を呑む。
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「全部……?」
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「全部よ」
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リアは静かに答える。
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「世界中の賞金稼ぎ」
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「企業軍」
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「水商人連合」
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一拍。
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「みんな最後の一滴を狙ってる」
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アクアはペンダントを握った。
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小さな一滴。
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たった一滴。
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それなのに。
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世界中が奪い合っている。
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そして。
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リアが前を向く。
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「行くわよ」
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アクアも頷いた。
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逃げるためじゃない。
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戦うためでもない。
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世界を救うために。
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海のない海岸線へ。
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ジョウが夢見た未来へ。
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二人は歩き出した。
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その先で。
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ブルーマーズの運命が待っていた。




