第11話 ジョウの残した答え
爆発音が響いた。
⸻
研究施設全体が揺れる。
⸻
天井から砂が落ちる。
⸻
【外壁損傷】
⸻
【侵入者確認】
⸻
警報が鳴り続ける。
⸻
アクアは反射的にペンダントを握った。
⸻
最後の一滴。
⸻
ジョウ博士が残した希望。
⸻
世界に一つしか存在しない天然飲料水。
⸻
失うわけにはいかない。
⸻
「リアさん!」
⸻
リアは冷静だった。
⸻
まるで慣れているように。
⸻
「地下へ行くわ」
⸻
「地下?」
⸻
「ジョウが作った避難経路よ」
⸻
アクアは驚く。
⸻
ジョウはそこまで考えていたのか。
⸻
リアは非常扉を開いた。
⸻
長い地下通路。
⸻
古びた壁。
⸻
非常灯だけが道を照らしている。
⸻
二人は走った。
⸻
背後では爆発が続く。
⸻
Water War。
⸻
その戦火はここまで来ていた。
⸻
「どうして狙われるんですか!」
⸻
アクアが叫ぶ。
⸻
リアは振り返らない。
⸻
「天然飲料水があるからよ」
⸻
「でも浄水システムを作れば世界は救われる!」
⸻
「だから狙われるの」
⸻
リアの声は重かった。
⸻
アクアは言葉を失う。
⸻
「今の世界は水不足で成り立っている」
⸻
「え?」
⸻
「オアシスコーポレーションも」
⸻
「水商人連合も」
⸻
「各水圏政府も」
⸻
一拍。
⸻
「全員が水不足で利益を得ている」
⸻
アクアは立ち止まりそうになる。
⸻
そんな馬鹿な。
⸻
人類は苦しんでいる。
⸻
戦争まで起きている。
⸻
なのに。
⸻
それで儲けている人間がいる。
⸻
「だからジョウは嫌われた」
⸻
リアは静かに言う。
⸻
「海を飲めるようにしたら」
⸻
「全部終わるから」
⸻
通路の先に巨大な扉が見えた。
⸻
リアが認証コードを入力する。
⸻
重い扉が開く。
⸻
そこは。
⸻
巨大な地下格納庫だった。
⸻
アクアは息を呑む。
⸻
研究設備。
⸻
スーパーコンピューター。
⸻
大型解析装置。
⸻
そして。
⸻
中央に置かれた巨大なホログラム。
⸻
青い惑星。
⸻
ブルーマーズ。
⸻
「これ……」
⸻
「ジョウの最後の研究室よ」
⸻
リアの声が少し震えていた。
⸻
「事故の後も」
⸻
「私はここだけは消せなかった」
⸻
アクアはホログラムへ近付く。
⸻
そこには無数のメモが残されていた。
⸻
父の文字。
⸻
父の計算式。
⸻
父の夢。
⸻
そして中央。
⸻
大きく表示されている。
⸻
【Blue Mars Rebirth Project】
⸻
その下。
⸻
【進捗率】
⸻
アクアは息を呑んだ。
⸻
数字が表示されている。
⸻
【99.999999%】
⸻
「え……?」
⸻
アクアは固まった。
⸻
リアも微笑む。
⸻
「そう」
⸻
「ジョウは完成させていた」
⸻
静寂。
⸻
アクアの頭が真っ白になる。
⸻
「完成……?」
⸻
「理論も」
⸻
「設計図も」
⸻
「浄化方式も」
⸻
一拍。
⸻
「全部完成していた」
⸻
リアはホログラムを見上げた。
⸻
「足りなかったのは」
⸻
その視線が。
⸻
アクアの胸元へ向く。
⸻
ペンダント。
⸻
最後の一滴。
⸻
「たった一つだけだった」
⸻
アクアはペンダントを握る。
⸻
父が残した希望。
⸻
世界を救う鍵。
⸻
そして。
⸻
世界中が欲しがる宝。
⸻
その時。
⸻
地下格納庫全体が揺れた。
⸻
警報。
⸻
赤い光。
⸻
【侵入者接近】
⸻
【防衛ライン突破】
⸻
リアの顔色が変わる。
⸻
「早すぎる……」
⸻
次の瞬間。
⸻
大型モニターに映像が映る。
⸻
黒い軍服。
⸻
無数の兵士。
⸻
その先頭に立つ男。
⸻
アクアは見たことがない。
⸻
だが。
⸻
リアだけは知っていた。
⸻
その表情が凍り付く。
⸻
「まさか……」
⸻
男は笑った。
⸻
そしてモニター越しに言う。
⸻
「久しぶりだな、リア」
⸻
低い声。
⸻
冷たい瞳。
⸻
Water Warの黒幕。
⸻
水商人連合総帥。
⸻
ついに姿を現した。




