第8話 2020年8月24日:ライバルの告白
若手の実力派女優との熱愛が報道された律。
美雨はその中で自分の気持ちに気付く。
「律くん。これってどういうことか説明してもらいましょうか?」
麻衣さんから美雨への想いを暴露されてしまった次の日、僕は朝から事務所に呼び出され、麻衣さん直々のきつーい尋問を受けていた。
僕は、麻衣さんから突き付けられた芸能スポーツ紙の1面を見て驚愕する。なんだこのセンセーショナルなタイトルは!
『スクープ! 国民的若手女優の熱愛!
冨山はるか、お忍びデート
お相手は、新進アーティストの高野律』
そして写真を見た時、僕は昨日のことを思い出し、一瞬で理解した。“冨山はるか”という人物の本気と厄介さを。
(冨山はるかさん、どこまで準備していたんだ!?)
『国民的若手女優』は正しい。でも『熱愛』は彼女の片思いだ。
『お忍びデート』は、まぁ、そう見えなくもない。
けれど僕自身は、彼女の話を聞いただけだ。だって、
『なぜ、ミュージカルに出演してくれないのか聞きたい』
という彼女の願いで、一緒にレストランに入っただけだ……。少なくとも、僕自身はそんな認識だった。
「どうなの律くん。早くあたしが納得できるような説明をして。
あなた、昨日は『美雨ちゃんは自分に恋愛感情を抱いている』って認めただけだけでなく、あなた自身も『美雨ちゃんに対して、兄という立場を遥かに超えた、美雨ちゃんを抱きしめたいくらいの重い感情を持っている』って認めたわよね?」
「いや、麻衣さん。僕はそこまでは言って……」
「だまらっしゃい、このスカポンタン飴!
あたしが、今何をすべきかを聞いた時、一足飛びに『美雨を抱きしめたい』って劣情に支配されたじゃない。
そのくせ、冨山はるかが美人だからって、ホイホイ誘いに乗って食事をして、マスコミの養分になるなんて、どこまで破れた金魚すくいのポイみたいな男なの。
さ、早く情事の事情を説明してちょうだい。でないと『DIAMOND☆彡DUST』のみんなを鎮静化できないわ」
麻衣さんはいつもより数倍、圧が強い。
でも、僕は『事の経緯を順序立てて説明すれば』分かってもらえると信じていた。結果的には甘かったわけだけれど。
昨日、麻衣さんが、東京コミュニティラジオのディレクター、神戸さんに、同社企画のミュージカルへの僕の参加について、
『律くんは役者としては素人。下手な演技で舞台を台無しにするより、音楽で作品を支えたいって言ってるわ。
だから、音楽監督としてだけなら、話を受けてもいいし、あたしも律くんを説得するけど?』
そんな答えをしてくれたので、僕はすっかり安心してしまった。
だから僕は、いつものようにギターを抱えて家路についた。
のんびり歩いていると、事務所から数百メートルほどの公園に差し掛かったところで、一人の女性から声をかけられた。
「すみません。高野律さんですよね?」
僕は、一瞬サインがほしいファンかと勘違いした。
デビューしてもう4年目を迎え、たまーにそう言うことも言われるようになっていたのだが、僕はそれをそう大きな迷惑だとは思っていなかった。
「はい、そうですが。何かご用事でしょうか?」
僕は立ち止まってそう答える。相手の女性は165センチほどの身長で、ローヒールの黒いパンプスを履いている。
ズボンは灰色の細身のスラックスで、白いブラウスに肩掛けカバンをぶら下げている。
そして、うねるような長くてきれいな栗色の髪、バラ色のくちびるに左あごにある小さなほくろ。鼻筋は通っているが、目はサングラスで見えない。
だが、その雰囲気には明らかに自信と僕への好奇心、そして何より清楚な気品があふれていた。
彼女は、周囲を気にしながらサングラスを外し、僕への好意をむき出しにした鳶色の瞳で見つめて言った。包み込むような、それでいて突き抜けるような綺麗な声だった。
「わたし、冨山はるかです。今度のミュージカルについて、あなたにわたしの恋人役を演じていただきたくて、直接お願いに参りました。
話を聞いてくださいますよね?」
★ ★ ★ ★ ★
「ふぅ~ん。それでお兄ちゃんは、はるかさんに押し切られたわけ?
私との同居は頑なに拒否ったくせに、『国民的若手女優』には簡単に骨抜きにされるんだ。ふぅ~ん」
「わっ! 美雨!? なぜここに?」
突然美雨が社長室のドアを開けて乱入してきて、僕に絶対零度の視線を向ける。
「あたしが呼んだのよ。美雨ちゃんは三角関係の当事者だもの。
それとも『DIAMOND☆彡DUST』全員からつるし上げられたい?」
麻衣さんの容赦のない一撃が入る。僕は
「……いえ。どっちみち美雨には説明しなきゃいけないって思いましたから。
美雨、冷静に話を聞いてくれ」
そう言うと、美雨はムスッとしたまま僕の隣に座る。そして僕の腕に抱きついて、
「……話して、お兄ちゃん。どんな情事……事情だったのか」
……いかん、麻衣さんの言葉が強すぎて、美雨の中ではすっかり僕は『浮気男』認定されているようだ。
(……それでも、呼び名がまだ『お兄ちゃん』なのは、それだけ僕を信じたいってことかな)
僕はそう考えながら、続きを話した。
僕ははるかさんに連れられて、彼女がよく利用するというレストランにいた。
「このお店は、わたしのことを『芸能人』じゃなくて『普通のお客さん』として接してくれるし、プライバシーも守ってくれるの。
だから、ここにいる間は、変装も演技もいらない、素のわたしでいられるわ」
そう言うと彼女はサングラスを外して笑う。えくぼが出る笑顔は、意外に普通の女の子っぽくて、ちょっと彼女に親近感が持てた。
だが、話が本題に入ると、彼女は火のような激しさをぶつけて来た。
「率直にお願いします。
わたしは今度の舞台、相手役はあなたしかないって決めています。
特にキスシーンがあるって知ったからには、たとえ役の上でだとしても、あなた以外のひとにキスされるのは嫌です。
だって、わたしにとって初めてのキスだから」
鬼気迫る表情だった。相手が『国民的美女』でもあり、それは一種耽美で、破滅的な美しささえ感じさせた。
僕は戸惑いながらも、やっとのことで答える。
「……僕は演劇は素人ですよ。それに歌も上手くはありません。
作曲なら、自信を持って請合えますが、素人の音痴があなたのような女優の舞台を台無しにしていいわけありません」
すると、はるかさんはうっすらと笑って僕に過去を突き付けた。
「冗談はヨッシーですよ?
りっくんは高校時代、『アルカディア』で3年連続軽音コンクール全国制覇して、複数の芸能事務所から“歌手として”スカウトされていますよね?」
……え?『冗談はヨッシー』『りっくん』?
僕が呆然とすると、はるかさんはにこりと笑って言った。
「りっくん、覚えてない? わたしだよ、戸田佐紀。中学の時に助けてもらった」
「ええっ!? 委員長!? ぜんぜん分からなかった。だってあのころはもっと太……。
ぽっちゃりしていたからさ」
危ない、はるかさんの目に一瞬殺気がこもった。すぐに言い換えたので、『国民的美女の傷害事件』にならなかったのは幸いだった。
「うん。あの頃のわたしは最低だったな。暗いし、臆病だし、見た目も良くはなかった。薬の影響でちょっと太ってたわたしを、みんな陰で笑ってたじゃない?
でも、りっくんだけだった。優しくしてくれて、本当は美人だろうって言ってくれたのは」
僕への感謝の念を込めた視線を向けるはるかさん。だけど僕は、特別なことをしたつもりはない。
だって彼女は、誰も見ていなくても花壇の整備をしていたし、笑われてもそれで卑屈にはならなかった。
少し他人に壁を作る性格ではあったが、それも当時の彼女が置かれた境遇なら仕方ない。
「……いや、君は心が綺麗だったし、顔だちだって君を悪く言う女子生徒よりもずっと整っていたと思うよ?」
僕が言うと、はるかさんは頬を染めてうつむき、
「クラスで堂々とそう言って、女子全員を敵に回して、おまけにわたしとの仲を冷やかされて……。あの時は本当にすまないって思っていたわ。
だから、あなたを恋人役に指名したのは、その頃のわたしも含めて、私の気持ちを受け取ってほしいからなの」
そうはっきりと言った。
……僕は、正直、なんて答えたらいいか分からなかった。
「いやそこは、私がいるから無理って答えなさいよ!」
不意に耳元で美雨が怒鳴る。余りに大きい声だったんで、なんて言ったかよく分からなかった。
「まあまあ、美雨ちゃん、落ち着いて。私はちょっと気になることもあるから、先を聞きましょう? 律くん、情事の続きを話して」
……いや、だから情事じゃないんですって。
僕が固まっているのを見て、はるかさんは不意に笑って言ってくれた。
「……まぁ、急に告白されて、すぐに返事をちょうだいって言っても無理よね?
台本読み合わせはまだ先だし、少なくとも音楽監督はりっくんに任せるつもりだから、返事はゆっくりでいいわ。
今はりっくんにも、『DIAMOND☆彡DUST』の東雲さんっていう大事な妹さんがいるみたいだし……」
そうして、僕たちは中学時代の想い出をなつかしく話し合った。
その時、不意にはるかさんが窓の外を指差し、
「ねえ、りっくん。今の時間ここからはタワーのライトアップがよく見えるの。
ちょっとこっちに来てごらんなさいよ」
僕は彼女に誘われるまま、彼女の隣に移動して外を見る。赤や青、黄色に彩られたタワーは、幻想的な美しさだった。
「本当だね。凄くきれいだ」
「それって、わたしのこと?」
不意を衝かれた僕は、相手が中学の同級生だという気安さも手伝って、思わず本音をこぼしてしまった。
「うん。それは否定しないよ」
「麻衣さん、お兄ちゃんを私の部屋で永久に養ってあげていいですか?」
「痛い痛い痛い! 美雨、そんなに腕を握りしめるな。爪を立てるな」
美雨が平板な声で麻衣さんに言うが、麻衣さんは優しい顔で美雨に注意する。
「美雨ちゃん、気持ちは分かるけど、いつも美雨ちゃんが言ってることと行動が逆になってるわよ?
話を聞く限り、律くんは嵌められた可能性が高いわね。
もちろん、はるかさんの想いは本物かもしれないけれど、記事になったのは明らかにわざとリークしているわね」
そう言うと、麻衣さんは机の引き出しから鍵と地図を取り出して、僕に手渡しながら言った。
「ジャンクションの戸田社長に謝罪かたがた今回の件の公式見解を相談しようと思ったけど、どうも臭いわね。
律くんは、ほとぼりが冷めるまでそこに隠れていて。レポーター対策はあたしが考えるから、律くんは何もしゃべらないでね。
それと美雨ちゃん、あなたたちは通常どおり仕事よ。大丈夫、あなたの旦那さんの冤罪は晴らしてあげるわ」
「お願いします!」
美雨の返事を聞いた麻衣さんは立ち上がり、動揺している僕に言った。
「律くん、隠れ家に案内するわ。その後あたしはちょっと調べ物をする」
……ちょ、え? 美雨? 僕はいつお前の旦那さんに? なぜ否定しない?
戸惑う僕の顔を見て、美雨はそれはそれは可愛い笑顔を浮かべていた。怖い。
★ ★ ★ ★ ★
その頃、冨山はるかが所属する事務所では、社長の戸田雅一郎が苦笑していた。
「……まったく、お前はデビュー前から変わっていないな。
手に入れたいものは実力で、強引に手に入れる。しかも手段を択ばない」
すると、目の前に立っているはるかは、薄く笑って答える。
「もちろんよ。だってわたしは、高野律って言う男性を手に入れるためにこの世界に入って、自分を高め続けたんだもの」
「だからと言って、記者にわざと居場所と撮影スポットまでリークするのはやり過ぎだぞ? それでお前の人気が落ちたらどうするつもりだ?
元も子もなくすじゃないか」
社長は一応、苦言らしきものを口にするが、目は笑っている。はるかはそんな社長に甘えるように言った。
「あら、そこを何とかするのが社長の手腕じゃない? そうでしょ、お兄ちゃん?」
すると社長は、くすくす笑いながら答えた。
「まったく、わが妹ながら腹黒い奴だ。
分かっているよ。一時、お前の人気が下がっても、お前の実力は本物だ。
お前と高野君を結び付けて、高野君もぼくの事務所に入れる。
お前もぼくも、高野君もそれで幸せってことだな」
それを聞いて、はるかは満足げに笑って言う。
「ありがとうお兄ちゃん。
じゃ、わたしは仕事に行ってくるわね?」
すると、戸田社長は皮肉そうな笑いを浮かべて言う。
「そうだ、今日のお前の収録には『DIAMOND☆彡DUST』も来る。
せっかくだから、うんとお前の格を見せつけて来るといい。
それと、レポーターに対してどう答えるかは任せるよ。
どうせ、『誤解です』なんてことは一切言わないんだろうからな」
はるかは、クスリと笑って答えた。
「さすがはお兄ちゃん❤
じゃあ、『わたしたち、本気です。社長も認めています』って答えるわね」
その日の『DIAMOND☆彡DUST』メンバーは、全員がピリピリしていた。
早朝から呼び出された美雨は別だが、事務所に来て初めて律の『熱愛報道』を知った理央、嘉穂、有紀、エリカは、一斉に美雨を見る。美雨はぼーっとした表情で、窓の外を見つめては、時折ため息をついている。
(……美雨ちん、ショックだろうなぁ。高野先輩も何だってこんな不用意な写真を取られちゃったんだろ?)
(浮気は男の性なのだよ。美雨ちゃんも、もっと早くに先輩に告ってればよかったのに。先輩は鈍いけど誠実だから、美雨ちゃんを受け入れれば絶対によその女に目移りする人じゃないのに……)
玉森嘉穂と児島有紀は、小声でそう話している。
全員、痛々しい表情で、なんと声をかけたものかと思案しているようだ。ただ一名を除いては。
「美雨さん、元気出すです。
芸能記事なんて、どうせ針小棒大に書きたてる修羅場製造機ですよ。
何より、律先輩が美雨さんのことを大切に思っていることは、ファンも含めてみんなが知っているです。
この写真だって、きっと相手方のリークですよ。わたしの勘がそう言ってるです」
芦原エリカがそう言うと、
「そ、そうだよ。冨山はるかがなんぼのもんじゃい!
美雨ちゃんだって、うちでダントツに清楚で綺麗なんだよ?
高野先輩だって、このところずぅーっと美雨ちゃんに見とれていたんだから、ぽっと出の女に持って行かれるわけがないよ!」
お調子者の有紀も、エリカに合わせて美雨を励ます。
「……でもさ、今日の収録、その冨山はるかさんも出演者なんだよね。どんな顔して会えばいいんだろう? 嘉穂分かんないよう」
「……あたしたちはいつもどおりでいいよ。相手はあたしたちよりずっと格上で、先輩で、人気もある。だから、変に敵対心を出すんじゃないわよ?
それと、美雨ちゃんをできるだけはるかさんから遠ざけること。
芸能レポーターには一切反応しないこと、良いわね?」
八木沢理央は、リーダーらしくみんなにそう言い聞かせると、美雨の側に行って、隣に腰かけながらささやいた。
(はるかさんからどんなことを言われても、あたしたちが美雨は守るよ。
早く、ファンのみんなに歌声を届けに行こう?)
それを聞いて、美雨はそっと涙を拭いて笑って答えた。
「……そう、だったね。うん、早く行かなくちゃね?」
私(美雨)が芸能界に入ってすぐ、この世界って面白いなぁって思ったものの一つがあいさつだ。
もちろん、あいさつは人間関係の基本だけど、この業界では朝昼晩、そして深夜であろうと、
『おはようございます』
って言うのに、最初はぜんぜん慣れなかった。
夜に楽屋入りして、先輩方にあいさつに行った時、普通に、
「こんばんは、お疲れ様です。『DIAMOND☆彡DUST』ですっ!」
と元気よく挨拶して、苦笑されたこともある。
でも今日は、その挨拶がとても億劫だった。
私たちは、お兄ちゃんと同じ事務所『FAIRWAY』に所属している。
だから、お兄ちゃんとはるかさんの『熱愛報道』を受けて、他の出演者たちは微妙な距離を置いているのが雰囲気で分かる。
それに、はるかさんが現場に来ている以上、私たちが挨拶に行かないという選択肢はない。気が重いが、それでも人間としての礼儀は尽くさなきゃ……そう思って、私たちははるかさんの楽屋に向かった。
「……うわ、すごい……」
有紀ちゃんが、レポーターでごった返している楽屋前の通路を見て、思わず引く。私たちだって事務所が同じである以上、あのレポーターたちに囲まれて、容赦のない質問を浴びせられるのは分かり切っていた。
しかし、固まっている私たちを見て、はるかさんはレポーターたちに毅然として言い放った。
「もう、十分お答えしましたよね?
わたしと高野さんは、真剣に愛し合っているんです。それはジャンクションの社長も交際を認めたうえでの行動だと。
これ以上の取材は、正式に事務所を通して行ってください。
警備員さん、私は個人的に十分説明責任を果たしましたから、この場をよろしくお願いします」
そう言うと、私たちに向かって笑いかけた。
「お待ちしていました。わたしに話があるんでしょう?
ここは騒がしいので、わたしの楽屋に参りましょう」
そう言うと、私たちをVIPルームである自分の楽屋に案内してくれた。
「さて、これで騒音対策はばっちりです。ここなら、かなり踏み込んだ話もできますし、わたしは何も隠すつもりはございません。
高野律さんは、わたしの運命の相手です。先にそれだけを言っておきます」
いきなりの宣言だった。私は、『お兄ちゃんを真剣に愛しているのか』と聞こうとして、先手を取られた形になった。
はるかさんは、私たちを順に見つめた後、私に目を止めて聞いて来た。
「あなたが、りっくんとペアを組んで曲を作っている妹さんね?
なるほど、りっくんが気に入るはずだわ。
りっくんの大事な家族なら、わたしも義妹として大事に致します。仲良くしましょうね?」
「……あ、あの。なぜお兄ちゃんなんですか?」
私が聞くと、はるかさんはにこっと笑って答えた。
「彼は、本当のわたしを見つけてくれました。そして守ってくれました。
彼がいたから、わたしは今、ここまでになったんです。優しくて、不器用だけど誠実で、才能にあふれる彼の隣に立つに相応しい女になりたいと思っていますから」
それを聞いて、私は正直、
……負けた。私はお兄ちゃんが大事ってだけで、お兄ちゃんと同じ夢を追いかけたいってだけで、お兄ちゃんに相応しい自分なんて考えたこともなかった。
そう思ってしまった。
でも、心のどこかでは、
(……絶対負けない。私もお兄ちゃんを支えられるだけの女になって見せる!)
そんな気持ちが燃え上がっていたのは確かだ。
私の気持ちを見抜いたのか、はるかさんはちょっとびっくりした顔をしたが、すぐに鮮やかな笑顔になり、私にこう言った。
「……ふぅーん。ただの“妹”で納まる気はないみたいね?
いいわ、あなたの気持ちは受け取った。
でも、わたしは高野律という男性を手に入れるために、ずっと努力して来たの。
“妹”に甘んじているひとに、負けるつもりはないわ」
私はその言葉を聞いて、うなずいて言った。
「分かりました。先輩、これからもご指導をよろしくお願いいたします!」
【A beautiful rainy Day:8】
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
美雨、前回に続き可愛い嫉妬が漏れています。
だが、今回ははるかとの対面で、自分の愛し方を変え始めました。
まだ告白はできない美雨ですが、どうなるのでしょう?
では、次回までごきげんよう(美雨の真似)。




