第3話 2020年1月23日『DIAMOND-DUST』
将来が見えない美雨。そんな彼女に、バンドサークルの誘いがかかる。
いったんは断った美雨だったが、律の後押しもあり夢を追いかける道を選ぶのだった。
『星の子園』で、お兄ちゃんの『やさしい雨音』を演奏してから、私は少し変わったような気がする。
私は、お兄ちゃんとの約束を忘れたわけではなかったが、どちらかというと自分の世界にいたほうが落ち着く質だったので、高校生になっても、あまり友だち付き合いが得意な方ではなかった。
私が『聖ハシリウス学園』に入ったのも、単にお兄ちゃんの思い出が残っている学校に行きたかっただけだった。そうすれば、お兄ちゃんの思い出が私を守ってくれるような気がしていたのだ。
実際、お兄ちゃんは3年連続で全国の軽音コンクールで優勝し、しかも3年連続でベスト・ギタリストに選ばれるなど結構有名人になり、学校のあっちこっちで『高野律』の名前が聞かれた。その度に、私は少しの誇らしさと、言いようのない寂しさを感じていた。
私も、ホントは軽音サークルに入って、お兄ちゃんと同じ夢を追いかけたかった。
けれど、高校生になると、『星の子園』を出ていかなければならない日のことが、急に現実味を帯びてきた。私は、住み慣れた『星の子園』やたくさんの人たちと別れて、また別の……今度は私自身のために、私自身で……世界を探さなければならないのだ。
「どうしよう……」
私は、それまで自分自身にあんまり自信が持てなかった。勉強も運動も人並みで、特別目立った才能はなく、得意なものもなかった私は、その現実にぶつかってはたと当惑したのだ。
そんな時、私は学校の裏手にある音楽喫茶『チェリー』を見つけた。というより、店のスピーカーから流れる『やさしい雨音』に足を止めた。
思わず私は喫茶店に入り、席に座ってゆっくりとお兄ちゃんとの思い出の曲である『やさしい雨音』に聴き入っていた。
やがて、曲が終わると、
「……ご注文、もうよろしいですか?」
きれいな漆黒の髪を持つ女性が、笑って私に問いかけてきた。それがこの店のオーナーであるさくらさんだった。
「あ、す、すいません……」
私が慌てて言うと、さくらさんは優しい顔で
「いいのよ、ここに来るお客はみんな音楽が好きな方が多いから、お気に入りの曲が終わるまでじっと聴いていることなんて珍しくないわ……。
あなた、高野律のファン?」
そう聞いてきた。私がうなずくと、さくらさんは笑って言う。
「それも初期からの、コアなファンね? ふふ、びっくりしなくていいわ。
『やさしい雨音』は高野律のデビュー曲ではあるけど、あんまり注目された曲じゃないわ。ファーストアルバムに入ってはいるけど、どちらかというと2年目に発表された『アスタリスク』の方が有名だし、好きな人も多いから、『やさしい雨音』が好きなら本当に彼のことが根っから好きなファンって事よ。
かく言う私も、『やさしい雨音』は彼の曲の中でも一二を争うほどの隠れた名曲って思っているわ。この曲って、本当は歌詞があるんじゃないかって思ってるのよ」
私はびっくりした。そうなのだ。本当は『やさしい雨音』には歌詞がある。私が8年位前にお兄ちゃんに作ってあげた歌詞が……。
そんなことまで感じ取ることができるこの女性に、私はとても興味を覚えた。
「あのう、他にはどんな曲がお好きですか?」
「高野律の曲? そうねえ、『知らない街へ』とか、『プレヴィティ』とか好きだわ。あなたはどうかしら?」
「え、も、もちろん『知らない街へ』も好きですし、『昔のアルバム』とか『女神』、それに『黎明の空に』も好きです」
「ふふっ、本当に優しくて、切ない曲が好きなのね。まあ、彼の曲の中では珍しい方じゃあるけど……」
私たちは、そんなことを延々と話していた。ちょうどお客さんが途切れていたせいもあるだろうが、30分近くも話していたと思う。
そのうちにどちらからともなく自己紹介をして、私が『星の子園』に入っていることを聞くと、さくらさんは
「じゃあ、うちでバイトしてみない?
大丈夫よ、来栖園長先生には話しておくから」
そう言って、あっという間に私のバイト先を決めてしまった。
「じゃ、平日は午後5時から午後7時まで。学校がない日は午前10時から午後6時まで、休みは午後1時から2時まで。必要があるときは遅出勤務で午後1時から午後9時までで、休みは午後4時から5時まで……。それでいいかしら?」
私はうなずいた。するとさくらさんは笑って言う。
「大事なことを言い忘れていたわ。学業がある時は、それを優先してちょうだい。
それと、お休みは毎週火曜日で、時給は千円。労働保険はありよ。
それから遅出勤務の場合は、1時間分は時給が千2百50円になるの。ところであなた、ピアノとか楽器は弾けるかしら?」
「キーボードをやってました。ピアノなら弾けると思います」
「じゃあ、私がお願いするときは、弾いてくれるかしら? もちろん演奏料付きで」
「そんな、演奏料だなんて……」
「じゃあ決まりね。早速明日にでも園長先生にはお話ししておくから、あなたは学校の方に手続きをお願いね。学校の許可が出次第、入ってもらうわ。
そうねえ、今日が4月25日だから、5月から来てくれれば助かるわ」
そう言ったいきさつで、私は『チェリー』のウエイトレス兼ピアノ奏者としてのバイトを始めることになったのだ。高校2年のことだった。
そして、私がバイトを始めて1カ月ほどたったある日、
「東雲さん、少しお話があるけど、付き合ってくれない?」
私が、バイトがないので帰ろうとしていた時、同じクラスの女子が話しかけてきた。それが、軽音サークルに所属して、1年生の時に軽音コンクール全国大会2位になったバンドのリーダー・八木沢理央さんだった。
彼女は、スポーツ万能で、美人で、何かと目立つ存在だったけれど、今まで私は彼女とは面と向かって話をしたことなどなかった。その彼女が何の用だろう? 私はそう思って聞いた。
「何の用でしょうか? 私、ちょっとこれから……」
「今日は、バイトは入っていない日よね? ちょっとでいいから、あたしたちに付き合ってほしいんだ」
有無を言わせぬ八木沢さんの言葉に、私は仕方なく、カバンを持って彼女の後について行った。行先は彼女たちが練習しているサークルボックスだった。
「遠慮せずに入って」
彼女は分厚いドアを開けると、私にそう言って笑った。そして、私をミーティング室に案内する。そこにはすでに、彼女のバンドメンバーである玉森嘉穂さん、児島有紀さん、そして芦原エリカさんが待っていた。
「東雲さん、あなた、音楽喫茶でバイトしているそうね?」
私がソファーに座ると、八木沢さんがそう聞いてきた。私は黙ってうなずいた。
「私の調べによると、たまにピアノを弾いているそうですよ。それが結構上手で、お客さんからも好評ということです」
芦原さんがポケットからメモを取り出して、そう言った。
「嘉穂たち、『DIAMOND-DUST』っていうバンドを組んでいるんだけど、美雨ちんにも仲間に入ってほしいなあ~って思ったの」
玉森さんが、可愛らしくそう言ってきたので、私は不思議に思ったことを聞いてみた。
「あなたたちは、八木沢さんがベース、玉森さんがギター、児島さんがドラムス、そして芦原さんがキーボードで、バンドの編成としては出来上がっているんじゃないの? それにヴォーカルは玉森さんと八木沢さんだし。私に何ができるかしら?」
私がそう言うと、玉森さんがニコニコしながら言った。
「美雨ちんにはキーボードをしてもらって、エリカちんはシンセ専任にすればどうかって思うんだ。もちろん、美雨ちんがギター弾けたら最高だけど」
そのとき私は、とっても心が揺れた。これでお兄ちゃんと同じ夢を追いかけられるかもって思ったから。
でも、私には、『一人で暮らさなければならない日が来る』という、どうしようもない現実があった。
「残念だけど、私、バイトが忙しいの。声をかけてくれたのはとっても嬉しいけど、時間がないわ」
私がそういうと、八木沢さんは残念そうに言ってくれた。
「分かったわ。でも、時間が取れそうなら、ぜひうちのバンドに入ってね。いつでも大歓迎するから」
私がそんなことを思い出しながら『チェリー』の更衣室で着替えをしていると、突然ドアがノックされた。
「美雨ちゃん、もう着替えた?」
私はあたふたとしながら、さくらさんに答える。
「は、は~い、もう着替え終わります」
そして着替えが済むと、ドアを開けた。そこには驚いたことに、さくらさんと一緒に、お兄ちゃんの音楽事務所の社長である小田切麻衣という女の人が立っていた。
「あ、こんにちは」
私があいさつすると、小田切さんはにこやかに笑って言った。
「こんにちは。今日はあなたにお願いがあってやって来たの」
「律くんと一緒に、今日の舞台で歌ってほしいそうよ」
さくらさんがうれしそうに言う。私は突然の話でびっくりした。
「え、お兄ちゃんと、ですか?」
「そうよ。律から聞いたけど、あなた、作詩の才能といい歌声を持っているそうじゃない?
あたしは前から律をただのギタリストで終わらせたくなかったのよ。あなたが構わないなら、あなたも律と一緒にあたしのプロダクションに入ってもらおうと思うの。いい話でしょ?」
「美雨ちゃん、これはチャンスよ。麻衣の見立ては確かだし、プロモーションの腕も一流よ。何より、美雨ちゃんは律くんのこと、好きなんでしょう? 一緒に活動できるなんて、これ以上良いチャンスはないわ」
さくらさんも、そう言って勧めてくれる。私はさくらさんの好意に甘えさせてもらうことにした。
「やあ、美雨。今日はお世話になるよ」
楽屋に行くと、お兄ちゃんがギターのチューニングをしながら、私に笑いかけてきた。
「お兄ちゃん、ずるい! 一回だけって言ったじゃない!」
私がわざとむくれて言うと、お兄ちゃんはその人懐っこい笑顔で私に言う。
「ごめんごめん、でも、『星の子園』でのことを考えたら、もっと多くの人に聞いてほしくて。
麻衣さんに相談したら、一緒にここで歌ってみたらどうかってさ。皆さんから受け入れられるようなら、麻衣さんが『FAIRWAY』に君を雇っていいって言ってくれているんだ。
僕さ、美雨が少しでも楽になったらなって思っていたし、お前と一緒に音楽ができたらなって思っているから、この話を進めたんだ」
お兄ちゃんからそうまで言われると、私としてもむくれてばかりはいられない。それに、お兄ちゃんは私のことを本当に心配してくれているし、何より嬉しかったのは、『お前と一緒に音楽ができたらなって思ってるんだ』の一言だった。
「……分かったわ、ありがとう、お兄ちゃん」
私はそう言うと、お兄ちゃんに笑いかけた。
………………
「本当に、美雨ちんが歌うっての?」
「私の調査に、間違いはないですよ。『チェリー』にバイトで入ってる私の友達が、今日、高野律と美雨さんがデュエットするっていう話をしていたです」
「その友達は、なんでそんな情報を知っているの?」
「なんでも、高野律の所属事務所の社長と『チェリー』のオーナーが話していたのを、偶然聞いたそうですよ。私はかなり確度が高い情報と思うです」
「ひゃあ~、あの東雲さんって、ただのクール系ツンデレ女子じゃなかったんだねえ~。いっつの間に高野先輩とそんな関係になっちゃってたんだろ?」
『チェリー』の隅っこに、『DIAMOND-DUST』のメンバーが陣取って、そんな話をしていた。芦原エリカが、高野律と東雲美雨が同じステージで歌うらしいという情報を仕入れてきたため、全員でここに来たのだ。
「あたしは、東雲さんを『DIAMOND‐DUST』に入れたい気持ちは、変わってないわ。みんなはどう?」
八木沢理央がそういうと、
「嘉穂は理央ちんがそう思うなら、理央ちんに任せるよ」
玉森嘉穂が真っ先にそう答える。
「東雲さんって、ちょっとネクラな感じがするけど、あたしは理央に賛成するな~。うちには清楚系のビジュアルがいないし」
児島有紀が満面の笑顔でそういうと、最後に芦原エリカは一言言った。
「私はどうでもいいです。シンセがさわれれば」
「じゃあ決まりね? 今日のステージを聞いてみて、東雲さんが私たちの音楽と合いそうなら、彼女には何が何でも『DIAMOND-DUST』に入ってもらうわよ」
やがて、『チェリー』恒例の『金曜の夕べコンサート』が始まった。今回も高野律が、しかも新曲を引っ提げてやってくるというので、お客は超満員だった。
「高野先輩の新曲、すごいなあ。また抒情性が増してる……」
理央は、律の『アンドロイド』や『幾光年の彼方に』という新曲を聞いて、そうつぶやいた。特に『幾光年の彼方に』では、エリカや嘉穂は感極まって泣き出したほどだった。
「ところで、いつ東雲さんが歌うの? もうステージも終盤よ」
理央が言うと、エリカはポケットから手帳を取り出して確認していたが、
「ガセじゃないと思うですよ」
そう言ったきり黙り込む。その時、ステージの上で律が静かに言い出した。
「皆さん、本日は最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました」
「何よ、エリカ、あんたの情報、ガセだったじゃない」
有紀がエリカに突っかかる。それを嘉穂が制した。
「しっ! まだ何かあるよ」
「最後に、皆さんに特別な曲をお届けします。僕のデビュー曲の『やさしい雨音』ですけれど、この曲は、本来、ギター曲として作ったものではなく、歌詞もある曲として作ったものでした。
でも、今まで、この曲を歌ってほしいと思うヴォーカルが見つからなかったんです」
律の言葉に、客席は少しざわめいた。
「でも、この曲に詩をつけてくれた子と、本当に偶然再会しました。その子にお願いして、今日はその子にキーボードとヴォーカルをお願いしています。
僕の本当の『やさしい雨音』を皆さんにお聞かせするチャンスができたことを、本当にうれしく思っています。
では、ヴォーカルとキーボードを、このお店に勤めている東雲美雨さんにお願いします」
律がそういうと、美雨がゆっくりとステージに上がる。美雨は今まで『チェリー』でピアノ奏者を務めていたし、結構お客にも知られていて、人気もあったので、ステージに上がる時には拍手が起こった。
二人がスタンバイすると、お客はみんな静かになった。今まで、高野律は作曲家兼ギター奏者という活動をしてきていたのが、急に素人の女の子にヴォーカルをさせるというので、びっくりしていた人もいるだろう。
しかし、律のイントロが始まり、キーボードの音がそれに重なり、やがて美雨の歌声が流れ出した時、お客たちはみんな納得した。
「……東雲さん……すごい……」
「嘉穂、こんな心に迫るヴォーカル、聞いたことない」
「……ここにも天才がいたとは……」
「……決まりですね、理央」
『DIAMOND-DUST』のメンバー全員も、美雨の詩と歌にしびれてしまったのだ。
やがて歌が終わると、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。拍手の渦の中で、美雨は顔を紅潮させながらもしっかりと前を見つめ、お客さんにお礼をすると、律を見つめてにっこりと幸せそうに笑った。
「ふん、あたしの思った通りだわ。あの子は律と組ませることで輝くし、律の曲もあの子の詩によって新しい世界へと踏み出せる。いいコンビね」
舞台を見つめながら小田切麻衣が言うと、桜井さくらも笑って言った。
「美雨ちゃんは私の妹みたいなものよ。あの子が将来、幸せになれるように頼むわ」
「分かってるわよ」
二人は、舞台で手を振る律と美雨を優しい目で見つめていた。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
ステージが終了した後、律と美雨は楽屋で麻衣と話をしていた。
「美雨ちゃん、私、今日のステージを見させてもらって、あなたには天性の才能があると思ったわ」
麻衣が言うと、美雨は恥ずかしそうに笑う。その顔を見て、律は『いい笑顔だな』と思っていた。そんな律に、麻衣が言う。
「律くん、見とれている場合じゃないわよ。私が思うに、あなたたちには一つ、欠点があるの」
「欠点?」
律が聞くと、麻衣はうなずいて言う。
「そう。あなたたちは、歌っているときには、お客さんを自分たちの世界に引き込むだけの魅力があるわ。でも、どちらがMCをするの?」
「……そりゃあ、美雨はMCには向かないでしょうね」
美雨も黙ってうなずく。
「ステージは、途中で現実に戻っちゃいけないのよ。お客さんたちのことを第一にしながら、自分たちの世界を保持する……。
残念だけど、今日の二人を見ていると、律は美雨ちゃんを意識し過ぎていたわ。あれじゃあ、あなたたちが恋人同士だってすぐにばれちゃうじゃない」
「え、麻衣さん、僕はそんなつもりじゃ……」
律が言うと、麻衣は人差し指を顔の前に立てて振って見せた。
「律くん、たとえ恋人同士じゃないって言っても、あなたが美雨ちゃんに対して気を遣っていることは、傍から見たらすぐに分かるものなのよ?
少なくとも、あなたは美雨ちゃんを大事に思っているわよね?」
「……それは否定しません……」
その言葉を聞いて、美雨はパッと顔を輝かせる。そんな美雨を見て、麻衣は笑って言った。
「だから、美雨ちゃんには最高の仲間が必要なの」
「仲間……ですか?」
美雨が首をかしげて言う。麻衣はドアに向かって声をかけた。
「もう入ってきていいわよ。ずっとそこで待ってたんでしょ?」
すると、ドアが開き、ばつが悪そうに八木沢理央たちが現れた。
「君たちは……」
律が言うのに、理央は頭を下げて言う。
「先輩、ごめんなさい! あたしたち、どうしても東雲さんにバンドに入ってもらいたいんです」
「嘉穂たちに欠けているものは、きっと美雨ちんが補ってくれると思うんです」
「東雲さんに入ってもらえたら、あたしたちきっと、何でもできる気がします」
「……美雨さん、私たちを助けてくださいですよ。お願いするです」
「みんな……」
美雨は、自分が必要だと言ってくれる理央たちを、うるんだ目で見つめていた。麻衣はそんな五人を優しい目で見つめながら言う。
「あたしも、八木沢さんたちの判断に賛成するわ。『DIAMOND-DUST』には、美雨さんの才能が必要よ。
美雨さんが加入するなら、『DIAMOND-DUST』として五人をあたしの事務所で引き受けてもいいわ」
「私……自分の夢を追いかけても、いいのでしょうか?」
美雨がポツリと言うのに、麻衣は美雨の肩を叩きながら言う。
「美雨ちゃん、誰でも、幸せになろうと願う権利を持っているわ。あなただって例外じゃないのよ?」
「私……みんなの邪魔にはならないのでしょうか? 私は何にもできないのに……」
「そんなことないです! 今日のステージを聞いて、私は美雨さんの才能にびっくりしているです」
「あんな歌を聞かされて、感動しない方が嘘だよ。東雲さんには、悔しいけどあたしたち以上に歌を伝える才能があるし、詩の才能もあるって思ったよ? だから、あたしたちのバンドに入ってよ」
エリカや理央がそういうと、美雨はゆっくりと律を見て言った。
「お兄ちゃん、私、お兄ちゃんと同じ夢を追いかけたい」
その言葉に、律もうなずいて言った。
「がんばれよ。約束どおり、君たちの歌の作曲は、僕が引き受ける。一緒にみんなを感動させられる歌を作っていこう」
律の言葉に、五人がうなずいた。
この瞬間、のちに伝説となるバンド『DIAMOND-DUST』のメジャーデビューが決定した。
(A Beautiful rainy day3)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
美雨が自分の夢に許可を与えた日です。
この後、五人は夢に向かって疾走することになります。
では、次回までごきげんよう(美雨の真似)。




