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TS銀髪ロリでフロアボスらしいけど自由に生きたっていいよな?  作者: 畑渚


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第32話 暴食の異能

「競技開始!」


 審判の掛け声の次に訪れたのは、静寂だった。

 俺はまずは様子見として、時間をとってみることにした。


 奇しくも、相手も同じ考えのようだった。

 両者一歩も動かず、ただ時間だけが過ぎていく。


 地味な大将戦だと野次が飛び始める。


 仕方ない。そろそろ動くか。


「よっ」


「そんな弱いパンチじゃ効かないよ〜」


 軽く打ったジャブを、手でいなされる。


「これでいいんだよっ!」


 返しのストレートは、いとも容易くもう片方の手に止められた。


 ん?なんか違和感があったな。


「能力の正体を探ろうって言うの?生意気」


「いいだろ。弱者なりの知恵ってやつさ」


「君が弱者?はん、戯言もほどほどにしなよ!」


 鋭い拳が迫ってくる。しかしこの程度であれば避けるのは容易い。


「見たところ君も拳が武器みたい。どう?まいったと言うまで勝負しない?」


「ハナからそのつもりだ!」


 もとよりそのつもりだったから、ロープなんてヤワなもんは持ち込んでいなかった。


「テンポを上げるよ」


 繰り出される拳の数に圧倒されそうになる。


 みたところ、異能を発動している形跡はない。これがランク5の素の戦闘能力なのだろう。


 拳が頬をかすめる。

 そういう風にギリギリで避けなければ、次の打撃を喰らってしまう。


「……っ!」


「甘い甘い。ドーナッツみたい」


「ちっ」


 やむを得ず手で拳を受け止める。

 全て躱してみせるつもりだったが、そう甘くはないらしい。


 それに本来、俺の戦い方はこっちだ。


「そのニヤケ面に叩き込んでやるぜ!」


 左右交互に、今度はこちらの番と言わんばかりに拳を放つ。


「はははっ!悪役みた~い!こわ~」


 躱され、受け止められ、反撃され。


 どっちつかずの勝負が長く続いた。


「全然当たんないよぉ」


「ウォーミングアップはこれくらいにしとくか」


「ええ~?まだ遊んでいたいのに」


 俺は一度距離を取る。


「これは受け止めきれるかな」


「へぇ、来なよ。躱さないであげる」


 俺はしっかりと拳を構え、地面を蹴る。

 加速分と自分の体重までをも乗せた、最速にして最強の一手。


 もちろん対人なので手加減は欠かさない。


「いっけぇぇぇ!」


「……っ!」


 片手でヒラヒラと構えていた相手が、急に両手で耐衝撃姿勢を取る。



 拳は当たった。



 しかし当たっただけだった。


「……は?」


「おやおや、お顔がお留守だよ!」


 理由もわからないまま、拳をくらい数メートル吹き飛ぶ。

 なんとか着地して衝撃を逃がし、致命傷は避けた。


「いったいなにが……」


 確かに拳は当たった。しかし当たった瞬間に、拳の勢いがなくなり、ポスンと相手の手のひらに吸い込まれた。


「そういや自己紹介がまだだったねぇ」


 相手は手のひらをニギニギしながら、こちらに笑いかける。


「あたしは樹梨。ランク5の暴食家。巷じゃあたしのこと最弱のランク5って言うけどね」


 俺を指差しながら言葉を続ける。


「ランク5が、どれほどの高みにいるのか、わからせてあげる」


「くっ……一筋縄じゃ行かねえか」


 ここで本気は使えない。しかし、本気で戦わなければ目の前のこいつには勝てない。


 そう思い込むには十分だった。



<=>



「始まったか……」


「牙門くん、この席に来るなんて珍しいね」


 この競技場で唯一安全な、ガラス張りの観覧席。


「ハクがこっちが良いって煩くてな」


「当たり前だろう我が主。なにより空調が行き届いてる!」


 少女の姿のハクは、そう言いながらこの席にいるもう1人、皇の方へと向かった。


「どうだい、セナちゃんは」


「私に意見を求めるのかい?」


「ランク5最強の視点が気になるんだよ」


「そうだね……。戦闘力で言えば、見たところ樹梨ちゃんが有利かな」


「どうしてだい?」


「樹梨ちゃんの攻撃は確実にセナちゃんを削ってる。セナちゃんもカウンターを狙ってはいるのだろうけれど……アレに気付けない限り、樹梨ちゃんに有効打を当てるのは不可能だからね」


「アレ……ね」


 牙門は、2人の戦いから目をそらさずにそう呟いた。


「忌まわしい異能だ」


「彼女らしい個性じゃないか」


 皇は腕を組みながら、2人の戦いを見つめる。


 その目に何が見えているのかを知る者は、ここには存在しなかった。



<=>



「くそっなんでだっ!」


「そろそろ降参したらどうだい?」


 拳と拳の応酬のはずが、一方的にダメージを受けてしまっている。

 今のところ戦闘本能が目覚めるような手痛い一撃は喰らってないものの、このままではジリ貧だ。


 なにより、体力差で女の子に勝利だなんてなんかカッコ悪いのでやりたくない。


「となると、やっぱりあれか」


「まだ奥の手があるの?」


「ああ、とっておきがな」


 そういって俺は後ろ向きに地を蹴って距離をとる。


「もうおしまい?」


「まだだ、まだ始まったばかりさ」


 俺は右の籠手を外し、しっかりと右手で籠手を掴む。


「これも避けずに受けてみろよ!」


 人が反応しきれるギリギリの速さで、俺は籠手をぶん投げた。


 籠手はとんでもないスピートで飛んでいき、樹梨が顔の前でクロスした手に触れた。



ポトン



 そして籠手は、急に地面に落ちた。


「……」


「なるほどな」


 先程までの疑念が、確信へと変わった。


「お前の異能。触れたものの勢いを喰らうってとこか」


「……それがどうしたの?わかったところで、結果は変わらないよ」


「いや、変えてみせるさ」


 俺は、緩衝材の巻かれたもう片方の籠手も、地面に投げ捨てた。


 さあ、反撃開始だ。


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