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秋の夜話  作者: ふりまじん
短編

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3/18

見えない友達 2

 自分のPVに友情を感じる私は、自分が買った古本にもさまざまな物語を想像する。

 私のよく行く古本屋は、地集地買とでもいうのだろうか、地域ごとで集まった古本が、その地域で売られるパターンだった。現在は色々だとは思う。ネットなどでの売買もできるし、他にも業者の取引もあるだろうから。

 でも、若い頃、私は旅行に行くと古本屋を訪ねる様にしていた。

 地方の古本屋には、その地方の少し前のトレンドが、その地方の息遣いが聞こえてくるからだ。

 値段についても、一定ではない。同じグループで、同じ本であっても価格が違うのが古本の世界である。


 私は特に100円古本が好きである。安価ということもあるけれど、ここから先は再生紙になるという、ギリギリの棚なので、一期一会の緊迫感があるのだ。明日、その本がその棚にあるのかはわからないし、そこから先、もう、本当に出会えなくなる、そんな本もたまにあるからつい、買ってしまうのである。


 そして、100円古本は、もう、売れないとその店が判断した、トレンド落ちした本、という意味合いもあって、古本の中でも少し前のトレンドを知れる面白い棚でもある。

 最近、同じ本がある時期ズラリと並んだりしなくなったのが、何だか寂しい気もする。

 

 そうやって、たまった本を見ながら、その本の前の持ち主を想像するのは楽しい。

 百円古本というと、すごく、貧相なイメージなんだろうけれど、自分で捨てられずにわざわざ古本屋に持ってゆく、それだけの価値があると思われていた、そんな大事な本とも言えるのである。


 特に、ノストラダムス関連の本は、見つけると手にとってしまう。

 昭和の時代から、現在の古本の棚に、数十年単位の長い時を経てやってきた、タイムカプセルのような気がするからだ。

 本の裏の出版日を確認し、それが30年以上前だと、考古学者か骨董でも扱うような、ありがたい気持ちになる。

 30年も経つと物に魂が宿るとか言われたのを思い出した。付喪神は99年とか言われるけれど、刃物のあるような仕事道具などは30年とか私は聞いた事がある。とりつくのは基本魔物の類である。

 多分、古くなって危険になるから買い換えろ、と、そんな意味で使われたんだと思う。


 まあ、それくらい、長い時間を誰かに保管された本。

 それを思うと、本に物語りを考えてしまうのだ。

 出版日を足がかりに時代を考え、現在の持ち主の年齢を考える。

 20年前なら大学生とか、30年前なら、今は60歳にはなっているのかもしれない。と、いうふうに。


 そんな風に考えて本を見てると、本が話し始める。

 

 久しぶりに調べ物があってノストラダムスの予言詩の本を取り出した。

 ノストラダムスの本はたくさん出版された。とにかく、世紀末はノストラダムスを出しておけば本が売れる時代だった。きっと、現在の異世界転生よりもこのワードは凄かったと思う。


 とはいえ、予言詩がほぼ全部載っている本はそれほど出版されていない。

 解説がないと面白くないというのもあるし、他の本を売るためにあえて出さなかったのかもしれない。

 私がこの本と出会ったのは2000年のことである。

 昭和50年代に購入されただろうこの本は、とても綺麗に保存されていた。

 私のところに来てボロボロになってしまったのが本当に申し訳ないが、この本を見ると何か、この本で書かないといけないな、と、そう思う。


 西暦に直すと1970年代から80年代。決して安い金額でもないこの本は、結構、考えて購入された本だと思う。

 多分、当時学生で、正月とかのまとまった小遣いで買ったものかもしれない。


 彼がいつ、この本を売ったのかはわからない。

 もしかしたら、世紀末結婚をして、少年時代と一緒にこの本を手放したのかもしれない。

 それとも、新世紀を迎えて、この本の価値を見つけられなかったのかもしれない。

 人類は滅亡しなかった。ノストラダムスは嘘だった。そんな失望の声を聞いた気がした。


 だから、私は100円にまで下がったこの本の嘆きを聞いた気がした。

 『私はまだ、面白い話をする事ができるんですよ。連れて行ってください。そして、一緒に物語を考えましょう。世界の行く末を示すようなそんなすごい話を、一緒に世界に!』

そして、元の持ち主に伝えたい。と、言っている気がした。


 20年近く、苦楽をともした主人に売られた本は、それでも、その主人に夢を伝えたがっている、そんな気がした。


 私はその本を買って、現在。そんなものに構う時間もない。

 知らないうちにみかんが増えつづけるんだもん。


 私のところでも長い時を経たったこの本は、もう、保存状況を考えても、私のところで生涯を終えることになるんだと思う。

 最後に、なんとか、出番を、と、考えているけれど、今は、こうして、小さな短編で我慢してもらうしかない。

 

 長い間、苦楽を共にすると、人外の物に友情のような気持ちを持つことがある。

 物神というのもが本当にいるのかは知らないが、私はそんな気持ちでこの本を思っている。

 本の方は迷惑だと思っているかもしれないが。

 

 あー、何か書かないとなぁ。

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