澱んだ光
暗くて、静かで、寒くて、寂しい。
こんこんとたまに聞こえてくる音は、眠たい私の目を覚まして、また遠くへ消えていく。
いっそこのまま眠れてしまえれば、そう考えると同時に、私はそれを拒絶する。
一度寝てしまえば、きっとまたとても嫌な夢を見るから。
私はもう何も見たいくないから、出来るだけたくさん起きている。
そんな薄暗い檻の中で、私は与えられた食事に貪りつく。
質素で小さなパンが一つと、コップ一杯のお水。
美味しくないし、多くもない。
けど、食べなきゃ死んじゃうから、我慢して無理矢理お腹に入れる。
乾いたパンを喉に詰め込んで、お水で流し込む。
「⋯⋯お腹空いたな。」
すぐになくなったパン、私の手には、一口分のお水だけが残る。
水面に映る私の目が黄色っぽく光る。
それを眺めて、私は小さくため息をつく。
こんな眼があるから、私はこんな事になってるのかな?
それとも、こんな眼があるから、私は生きていられるのかな?
こんな状態で生きてて、私は幸せなのかな?
そんな思いと一緒に、残った水を飲み干して檻の外へと器を返す。
「囚人番号502番、出ろ。」
心臓が、少し跳ねた。
久しぶりに人の声を聞いた気がする。
「⋯⋯⋯⋯。」
牢屋の鍵が開けられて、扉が開かれる。
これは、出ていいのかな?
私が動けずにいると、看守の人は小さく舌打ちをして首を動かす。
「お前の眼を見たい奴がいるそうだ。」
面倒くさそうに言うその人の言葉に、私は首を縦に振って外に出る。
「⋯⋯はい。」
冷たい手錠がかけられて、それを紐で引っ張られる。
ここに来て何度も繰り返された面会。
乱暴に引っ張られるのももう慣れたけど、あざになった手にそれが当たるとすごく痛い。
「全く、能力すら宿ってないこんなガキの眼に、何の価値があるんだか。」
意味もなく私の背中を蹴る男の人の声が、少しだけ大きくなる。
「⋯⋯⋯⋯。」
私は怒らせないようにじっと我慢して歩き始める。
「⋯⋯誰か、助けてくれないかな。」
そんな言葉を、私は、私を助けてくれなかった神様以外の誰かに呟く。




