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ゆず  作者: にく
春 - 主人公
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3/6

三.

 翌朝。


 教室に入ると、自分の机の上に小さな紙袋が置かれていた。


 名前はない。


 中を開けてみる。


 一枚の写真。


 去年の文化祭で撮られたものだった。


 教室で準備をしている俺が、小さく写っている。


 写真を裏返す。


 青いペンで、一言。


 『今年は、もっと近くにいようね』


「……なんだこれ」


 顔を上げる。


 ちょうどそのとき、教室のドアが開いた。


「おはよー」


 宮野が入ってくる。


 俺の机を見る。


 一瞬だけ、目を見開く。


 そして、何事もなかったように目を逸らした。


 やっぱり。


 俺は写真を紙袋に戻し、机の中へしまった。


「おはよう」


「……おはよ」


 宮野は少しだけ驚いた顔をした。


 それから、いつものように笑った。


「眠そう」


「昨日ちょっと遅かったから」


「何してたの?」


「ゲーム」


「高校二年生にもなって?」


「高校二年生だからだろ」


「意味わかんない」


 宮野が笑う。


 俺も笑う。


 写真のことは、聞かなかった。


 宮野も何も言わなかった。


 でも、その日一日。


 何度か視線を感じた。


 顔を上げると、宮野は別の方向を見ている。


 気のせいかと思えば、また視線を感じる。


 そして目が合う。


 そのたびに宮野は、少しだけ笑った。


 何なのかは、分からない。


 ただ。


 嫌な感じはしなかった。

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